【GALNERYUS】
メンバーチェンジを経て見えた新たな
る地平線
L→R FUMIYA(Dr)、SYU(Gu)、Masatoshi “SHO” Ono(Vo)、TAKA(Ba)、YUHKI(Key)
今やその人気と影響力は海外にまで及ぶ、国産メロディックメタルのトップランナー、GALNERYUS。コンセプトアルバム第二弾『ULTIMATE SACRIFICE』は、哀しみと怒りが渦巻く壮大なドラマが描かれた一枚。リーダーのSYU(Gu)に話を訊いた。
今作は昨年ドラマーのJun-ichiさんが脱退して、後任のFUMIYAさんを迎えて初の作品となりますね。
Jun-ichiさんは10年以上ずっと一緒にやってきて、もう“あうんの呼吸”どころの関係じゃないですからね。本当に大きな変化ですよ。ただ、脱退理由は音楽活動に対する考え方の違いで、仲違いなどではありません。FUMIYAとは5年ほど前から友達で、ふたりでスタジオに入ってドリーム・シアターのコピーをするような仲で。ライヴの演奏も何度も観ていて信頼できるドラマーであることは分かっていたので、後任は彼しかいないだろうと。彼自身もGALNERYUSのファンでもあったので、楽曲が体に染み込んでいたのも心強かった。
新作を聴くとドラマーの個性がサウンド全体に与える影響が大きいということがよく分かります。
FUMIYAは金物(シンバルなど)を多用するタイプで、かなり個性が強いドラマーで。Jun-ichiさんが屋台骨としてしっかりと土台を支えてくれるドラマーであったのに対して、FUMIYAはドラムをメロディー楽器のように打面で感情を表現するタイプ。パフォーマンスも大きくて華もありますね。
『ULTIMATE SACRIFICE』は、前作『UNDER THE FORCE OF COURAGE』(2015年12月発表)に続くコンセプトアルバム第二弾となりますが、ブックレットに描かれているストーリーが前作を越える綿密さで驚きました。ここまでディテールにこだわった理由とは?
音と挿し絵という限られた環境下で、どれだけ世界観、風景を広げられるかというのは意識しました。あと、バンド内で世界観を統一させることが大切なので、それをメンバーに伝えるために必要以上に綿密さにこだわったというのはありますね。今回ストーリーを書き始めるにあたって、前作とまったく異なったファンタジーの世界…それこそドラゴンが登場するようなところまで振り切ってしまってもいいかなとも思ったりしたんです。ただ、絵がないと説明しづらいので、最終的に現実世界に近い世界観のストーリーになりました。あくまでも主旨は人間模様を描くことなので。
現存する分断国家や、そこにまつわる人物を想起させるのも面白かったです。
特定の人物をイメージしたわけではないのに、書いていくうちに確かに実在の人物に重なった部分はありました。我々は政治的な主張を訴えるようなバンドではないのですが、現実の世界と重なるようなものだと読む人は入り込みやすいかなとは思いましたね。
前作同様、登場人物に具体的な固有名詞が付いていませんよね。これは意図的に?
前作の時からプロデューサーと相談していたんですが、具体的な名前があるとイメージが固まってしまうのではないかと。僕自身としては名前を付けるほうが好みなんですけど、そこはディスカッションした上でこのような結論になったんです。今後もこういう作品を作っていくと思うんで、ゆくゆくは各キャラに名前が付くようなものもあるかも。
コンセプトアルバムということで通常のアルバムとは曲の書き方も違ったと思うのですが。まずはストーリーを描くところから始まったのですか?
まず大枠のストーリーを作った上で“この曲はこの場面”というのを箇条書きで書いていき、それに合わせてベーシックな曲を作っていきましたね。曲を煮詰めていくのと並行してストーリーにも肉付けしていくんです。おどろおどろしい曲だけど希望が見える曲になったから、ストーリーもそういう感じにしよう…という感じで。曲を聴きながら文章を直していくような作業もありましたし。トラック単位で分かれてはいるけど、前作から全部で1曲というニュアンスですからね。
各メンバーの演奏も前作以上に熱量が高く、楽曲に生命力を与えているように感じました。
これまでアルバムを10枚ぐらい出しているわけで、言ってみたらネタを出し尽くしてる中で(笑)、どんだけ絞り出すか?みたいなところがありましたからね。難易度の高いプレイを練習する時間的な余裕もなかったので、“弾けた! よし、今のうちに録ってしまえ!”って(笑)。毎日、次の日に死にそうな勢いで作業していたので、“あぁしておけば良かった”という後悔はまったくないですね。
ハイトーンが特徴的なSHOさんのヴォーカルには、どこか突き抜けたような感覚を受けました。
ラストの組曲の作業中にSHOの声を単体で聴いていた時、それだけで泣けてきて。それほど感情のこもった、説得力のあるヴォーカルを聴かせてくれています。あと、ドラムのトーンが変化したことで歌の聴こえ方が変わったというのもあると思います。
TAKAさんは新たなリズム隊パートナーのFUMIYAさんとのコンビが見どころですね。
今回のレコーディングを経て、このふたりならではのノリの出し方がさらに分かってきたので、10月からのツアーでさらに詰めていってくれると思います。ベースプレイはもちろんですが、英詞や発音指導の面でもバンドに不可欠な存在です。
YUHKIさんは2曲の作曲を担当していますが、それについては?
まず抽象的なイメージを伝えて、彼ならではの解釈で曲を作ってもらいました。「WITH SYMPATHY」はバトルメタル寄りの“洗練された臭さ”が堪能できる曲。「RISING INFURIATION」は、ひと筋縄ではいかないサビのメロディーが最高です。
そして、10月27日からは全国ツアーが始まりますね。
ラインナップの変更でみんなに与えた不安を払拭できるツアーになればと思っています。個人的には新たなシグネチャーモデルギターSYUNAPPERを弾くので、これが大きなチャレンジ。ストラトタイプなので、これまで弾いていた変形ギターとは持った時の感覚がまったく違うんですよ。
取材:金澤隆志
アーティスト
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