【スピッツ】
『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR
“THIRTY30FIFTY50”』
2017年8月23日 at 横浜アリーナ

撮影:内藤順司

※写真は8月24日公演のもの。

 “今日がスピッツ1,000回目のライヴらしいんですよ。本当かどうかわかんないけど、その噂に身を委ねます。ありがとう!”(草野マサムネ/Vo&Gu)、“まぁ、1,000回はやっただろ!?”(三輪テツヤ/Gu)、“ここから、また頑張ろうぜ!”(草野)…なんてやり取りも軽快に飛び出した、結成30周年ツアー神奈川編の初日。

 さらに、この日は彼ら初の横浜アリーナ単独公演で、お祝いムードに拍車がかかる。もちろん、アニバーサリーならではの名曲ずくめ。時にギターを弾かずに身体を揺らしながら、キラキラした眼差しで、それらを大切に慈しむように草野は歌う。デビューシングル曲「ヒバリのこころ」も披露。不変の凄みというか、風みたいに駆ける草野の歌とアコギ、しなやかに唸る三輪のエレキ、ゴリッと弾む田村明浩(Ba)のベース、全体をシャープに締める﨑山龍男(Dr)のドラムが圧倒的に瑞々しく、例えば新曲「ヘビーメロウ」と遜色ないフレッシュさで聴ける。

 「ヒバリのこころ」「ヘビーメロウ」だと、歌詞のシンクロぶりもゾクッときた。《涙がこぼれそうさ》と《泣いてもいいかい?》、《僕らこれから強く生きていこう》と《確かな未来 いらないって言える幸せ》が、時を超えてこんなにも美しくつながるのだから。“なんで売れたかわかんない”という草野のはにかみで名曲「ロビンソン」が始まるなど、その後も鳥肌は止まらず! 以下、リーダー田村の最高なMCです。“不思議でいびつで変わってるのがロックだと思う。30周年は単なる通過点。長くやるのが目的じゃなく、やりたいことを今後もやっていきたいです”。

撮影:内藤順司、石橋俊治/取材:田山雄士

スピッツ

日本のロック・シーンで最も清涼感のある声をもつ男、草野マサムネ(vo&g)を筆頭に、三輪テツヤ(g)、田村明浩(b)、崎山龍男(dr)から成るスピッツは、91年にシングル「ヒバリのこころ」でデビューを果たした。その後、95年に発表したシングル「ロビンソン」(もはやロック・スタンダード!)が大ブレイク。コアなファンのみならず、一般リスナーからの支持もがっちり獲得した。———数々のヒット曲を鑑みると、わりとフォーキーで清潔なギター・ポップ・バンドという印象が強いが、マンチェ・ブーム以降のブリット・ロックを彷彿とさせるナンバーから、アグレッシヴにギターが疾駆するパワー・ポップ・チューンまでを幅広く展開する、懐の深さをもっている。また、滑らかなメロディを隠れみのにしながら、実は男の「身もふたもない理想(男根主義的妄想?)」を主軸にしている草野の歌詞は、スピッツ最大の妙といえるだろう。外では優等生で通っているけど、実はものすごい妄想癖を抱えるパンクロッカー………そんな二面性に着目すると、彼らの世界がよりいっそう見えてくるのではないだろうか。

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