【the band apart】
最終的にシンプルにしようと思ってこ
うなった
L→R 川崎亘一(Gu)、原 昌和(Ba)、荒井岳史(Vo&Gu)、木暮栄一(Dr)
爽快で明るさもありつつトリッキーなスパイスの効いたサウンドと、混沌と前進感が詰まった歌詞が、絶妙なバランスで成り立つ約2年半ぶりのオリジナルアルバム『Memories to Go』。そんなバンアパの強さが存分に発揮された作品について、木暮栄一(Dr)が語ってくれた。
ニューアルバム『Memories to Go』はどんな作品を目指したのですか?
曲を作り始めた頃はコズミック感のある実験的なアルバムにしようと俺が勝手に思ってて、そうメンバーにも言ってたんですよ。サンダーキャットを聴いて、久しぶりにチック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー」とかジャズロックをDJでかけたりしてたんです。次はこういう感じかなと思ったけど、そうはならなかったですね(笑)。
それはなぜですか?
今回、今までで制作に一番時間かかって試行錯誤したんです。ああいうジャズロックの感じって、セッションで作り上げていかないとできない。それに心に余裕がなくて、“ここを変拍子にしよう”とかできなくて(笑)。
(笑)。アルバムのサウンドは全体的に明るめで、曲もタイトにまとまっていて聴きやすさがありますね。
今考えると、各々が最初の目論見でちょっと凝った曲展開とかリフの変拍子の曲を作ってたけど、すげー数をボツにしたと思うんですよ。たぶん開き直って、最終的にシンプルにしようと思ってこうなったのかなと。
では、曲に触れながら話を進めましょう。「ZION TOWN」は爽快な夏感があって、荒井さんが今までにない高い抜けのある歌い方をしてるのが新鮮でした。
これは、原の曲で、かなり頑張ってシンプルにまとめましたね。荒井はここ数年、歌い方で悩んでたけど、ようやく開けつつあるみたいです。今回はいつになくニュアンスの付け方で、歌のテイクを選ぶことが多かった。
歌詞は迷いもありつつ前向にいきたいという想いが表れていますが、それは他の曲にも言えますね。
そうですね。30代も後半になると、友達とか親類が死ぬじゃないですか。自分の中で、より“死ぬ”ってことと対峙しなきゃいけなくなるというか。そういうのを考えてたら、大丈夫じゃないけど“大丈夫だよ”って言いながら前に行くしかないのかなって。歌詞はそんなニュアンスが全体にあるかも。でも、それは悲観してるわけじゃなく、“まだまだやっていきますよ”って感覚ですね。
グルーブ感が前面に出た「Find a Way」に《銀の鍵》というフレーズがあって、他の曲にも同じフレーズが出てくるのですが、これは何かのメタファーなのですか?
自分でもよく分からなくて(笑)。でも、デヴィッド・リンチの映画で毎回出てくる謎の人とかいるじゃないですか。アルバムの曲がバリエーションに富んでたから、歌詞に共通項があると同じ物語の中の一曲なんだって思ってくれるかなって、“銀の鍵”って言葉を入れたんです。
あと、今回は日本語、英語と、曲ごとに分け隔てなくやってますが。
メロディーに合う語感でやろうって書いていったんです。前のアルバムは日本語でやろうという気持ちがすごくあったけど、あんまりこだわりがなくなりましたね。「KIDS」って曲が入ったシングル『Daniels e.p. 2』が、アメリカのバンドのモック・オレンジとのスプリット盤で、英語の歌詞をまた書いてみたら面白かったんです。聴こえ方も少し変わるし、これはありだなって。いい意味で、こだわりがなくなりました。
「Castaway」はリズムがドラムンベースだったり、ギターは数少なかったりしてサウンド面が面白いですね。
もともと4つぐらい展開があった曲だったけど全然まとまらず、1パートだけを曲にしたんです。コード進行は少ないけど、いろんな場面を作るにはどうやったらいいんだ?ってずっと考えてて。で、音数を引けばいいって気付いたんです。俺らって音を足して派手にしてサビに向かうものが多かったけど、この曲のAメロって荒井はギターを弾いてないし、間奏はドラムと歌と手拍子とかなんですよ。で、最初にすごい付けてた展開の残り香でアウトロにギターの速弾きが一瞬出てきてフェードアウトするっていう(笑)。
これも歌詞は“行くしかない”っていう想いが出てますね。
不利な状況だけど、そこで腹決めて闘おうとしてる姿にグッとくるみたいですね。で、踏み出して始めてみても、自分の経験上、次々と問題が起きる。そんな甘いもんじゃない!っていうのがアウトロのギターです。やっぱり、始めるより続けるほうが厳しいなと思いますね。
それはリアルなバンド活動からの反映ですか?
そうっすね。自分たちでマネージメントから何からやってるので。続けるのは忍耐力や細やかな目線もないとできないし。俺ら、昔はリリースペースとかプランとかまったく考えてなかったんです。でも、それだとリアルに運営していけない。なので、年に1枚は作品を出してツアーをやるとか、ここ数年でようやく活動計画を立て始めました(笑)。そしたら、やればやるだけいろいろ身になっていくなって。今、ギターの川崎が経理を頑張ってくれてて(笑)。
なんとなく似合いますね(笑)。
それも含めて、なんとか面白く音楽にプラスに転化しようとはしてるんです。事務所兼スタジオでライヴをやるとか、今までだったらやらなかったアイドルとの対バンをやったり。俺ら的には楽しんでやれてますね。
現実を見てやっていくのが真のインディペンデントだなと。
自分たちでレーベルやるなら、お金の面も含めて自分たちでちゃんとやっていかなきゃってすごく思います。
さて、9月から全国ツアーが始まるともう一気に年末です。来年は結成20周年だそうですが、何か考えてますか?
それは結構考えてます。まだ仮の予定ですけど、記念盤を出したり、20周年記念ツアーをしたり、とにかく20周年にかこつけて面白いことをやろうと思ってますね。
取材:土屋恵介
アーティスト
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