【LOVE PSYCHEDELICO】
“How is your Love? ”
というコミュニケーション
L→R KUMI(Vo&Gu)、NAOKI(Gu&Ba)
約4年振りのオリジナルアルバム『LOVE YOUR LOVE』が完成! あくまで自然体のまま良質な音楽を追求し続けるふたりだが、今作には一枚を通して浮かび上がってくるテーマもある。愛について、今の時代について、想いを巡らせながら聴きたい。
この4年を振り返って、アルバムへの取っかかりはどこにあると思いますか?
KUMI
「Good Times, Bad Times」(2014年7月発表の配信シングル)以降に新しい扉が開いた気はするんだよね。この曲と出会えて良かったというか、“ああ、こういう曲を作れるようになったんだ”みたいな。自分たちが頑張って付いていかなきゃいけないくらいのパワーがあるの。
NAOKI
リフと歌が呼応するもの、音のダイナミズムで感情を揺さぶるもの、いろんなロックがあるじゃないですか。でも、それとはまったく別の味わいで、メロディーとコード+色気みたいなもので表現したロックと言うのかな。例えば、ジョン・レノンの「スターティング・オーヴァー」はジョンが好きだったロイ・オービソンの空気を一緒に届けてくれるんです。僕らはそういう音楽が大好きでいっぱい聴いてるんだけど、なかなか辿り着けなかった境地で。そんな中でやっと出会えた曲ですね。
“出会えた”という感触がデリコらしいですね。
NAOKI
もちろん作家さんに頼んだとかじゃなく、自分たちで作ったんですけどね(笑)。
KUMI
あはははは! でも、作る時はそういう感じだよね。まず曲がやって来て、それを私たちがかたちにする。その具現化は上手くなったのかもしれない。
NAOKI
この感覚を忘れちゃいけないとはどこかで思ってたね。そのあとに「Love Is All Around」「This Moment」が呼ばれるように出てきたので、今話したみたいなムードは存在してるのが自分たちでも分かったから。
KUMI
それでアルバムが楽しみになってきた。
今年4月には、EX THEATER ROPPONGIでアルバムのプレビューライヴ『How is your Love?』もありました。
KUMI
ツアーまで待つんじゃなくて、先にやるのも面白いんじゃないかなって。制作期間はライヴをほぼやってなかったし、みんなとコミュニケーションが取りたかったんだよね。
NAOKI
“久しぶり! 調子はどうだい?”って感じで。
KUMI
言葉が強すぎるのは苦手でね。意味が限定されちゃうから。“愛”“Love”なら、一番伝えたいことが伝わりやすい気がして。
NAOKI
悩むのをやめたら“Love”に戻ってくるものだしね。例えば“Life”に置き換えられるかもしれないけど、やっぱり限定されちゃう。自分の愛する人を思い浮かべたり、自分が大切にしてる感情を指したり、いろんな人にいろんなかたちで届くから“Love”はいいんです。今の時代を考えてもそう思う。“LOVE YOUR LOVE”もアルバムタイトル的じゃないんだよね。
どういうことですか?
NAOKI
商品名として付けたんじゃなくて、プレビューライヴのタイトル“How is your Love?”みたいに呼びかける言葉を入れたんです。
KUMI
アルバムを集約した感じではないんだよね。頑張って考えようともしたんだけれども、思い浮かばなくて(笑)。“愛はどう?”っていうことでいいんだなと。
「Beautiful Lie」は特にですけど、必要以上に不安を感じてしまう現代っぽさが見えるというか。その状況を踏まえて、“不安に思うことなんてないんだよ”と歌ってくれてる気がしました。
KUMI
そうそうそう! きっとそういうことを歌いたかったんだね。全部言ってもらっちゃった(笑)。世の中めちゃくちゃで大変なことがたくさんあるけどさ、実際はそんなに複雑じゃない。幻の世界と本当の世界みたいに、私の中では感じるんです。そこでどっちサイドに行くか。“恐ろしく見えることにとらわれてバッドトリップしてもしょうがないよ、Loveだよ”ってのは、今作でよく出てくるなぁ。
NAOKI
この曲は最後にできたんですよ。どうしても入れたかったんだろうな。ギリギリ間に合って良かった。僕らはただ楽しく作ってただけなんですけどね。「Might Fall In Love」なんかはレニー・カストロが2年前くらいに日本へ来たんで、“せっかくだから、何かレコーディングしようよ”と言ったのがきっかけだし。ちょうどラテン調のリフがあったので、リズムやアコギをパパッと入れて、レニーにパーカッション叩いてもらって。その状態でしばらく眠ってたんだけど、アルバム制作に入る時に“そう言えば、あの曲あったよね”って思い出して(笑)。
ラテン要素がありながらクールな「Might Fall In Love」、今度はリフが大胆なストリングスになる「Feel My Desire」、また一転して穏やかなカントリー調の「Birdie」という前半の流れだけでも独特で、聴き応えがありますね。
NAOKI
確かにね。いきなり歌で入るアルバムも初めてだし。「Feel My Desire」はブルース・スプリングスティーンみたいなシンプルな8ビートの曲を作ろうとしてたら、たまたまあのストリングスに発展した感じなんです。
KUMI
そうなんだよね。バンドの中にどう弦を存在させるかは難しかったけど、面白い曲になったと思う。
「Place Of Love」では、低音の効いたストリングスになるのも新鮮で。
NAOKI
チェロが中心ですね。これも最初はもっとシンプルな作りだったんだけど、ストリングスパートを付けて曲が化けた感じ。映画『昼顔』の主題歌に映える不穏さが表現できたと思います。
KUMI
うん。で、ラストの「No Wonder」につなぎたかったよね。憂うことだってもちろんあるし、あっていいと思ってる。でも、みんなと歌えるようなハッピーな曲で締めたかった。
NAOKI
逞しさというか、揺るぎないものは内側にある一枚になったのかも。
KUMI
ミックスを自分たちだけでやったのも大きいよね。
NAOKI
今ってミックス段階でレコーディング済みのものをもっと良くしようと張り切りがちだけど、作った時の初期衝動を模様替えしちゃうみたいなブラッシュアップはやめたかった。だから、今回はスタジオで録った音がそのまま鳴ってる感じなんです。
取材:田山雄士
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