【Brian the Sun】
明朗さと穏やかさの裏に秘めた
Brian the Sunの人生哲学
L→R 白山治輝(Ba&Cho)、田中駿汰(Dr&Cho)、森 良太(Vo&Gu)、小川真司(Gu&Cho)
10月に大阪と東京で結成10周年を記念する主催フェスの開催が決定したBrian the Sun。アルバムのリリースツアーを終えたばかりだが、早くもミニアルバム『SUNNY SIDE UP』をリリースする。その全5曲に込めた想いを森 良太(Vo&Gu)が語る!
今回のミニアルバムですが、アップテンポの曲を中心に演奏した5月27日のツアーファイナルとは、逆の方向に向かったような作品になったところが興味深いです。
僕らの根底にあることだと思うんですけど、ありふれた日々の中でふとした瞬間に感じる“あれって幸せだったよな”みたいな、その時は気付かずにあとから分かってくるような、普通のことって超ありがたいんだぜって想いがどの曲にもあって。日々生きるってことを、みんな一生懸命やるじゃないですか。でも、生きるってことを頑張りすぎると、結果が目標になったり、目標が結果になったりしてしまって、人生を細切れに感じてしまう気がするんですよ。人には全員、平等に死が訪れるにもかかわらず、普段は死を遠ざけて、人生がいつか終わることを意識せずに生きていると、今は過程なんだということを見失いがちになるというか。とてもゆるやかな波の中でみんな生きていて、一点に固執せずに人生を一本の線として考えてみたら、今あなたはすごく幸せなところにいるんですよ…ってことを歌いたかったんです。特に「隼」とか「天国」とかは。表に出ている字面とか印象とかって、わりと開けていたり、明るい感じになっていると思うんですけど、実は言いたいことは尖っている。意外と尊い日々を送っているということや、そこに当たり前のようにあることって、簡単になくなっちゃうって分かっておいてほしい。だからって、頑張らないわけではないというか、頑張る理由は別にあるでしょ?っていう。分かりやすい理由がないと踏ん張れない人って多いじゃないですか。それは“目標”とか“結果”とかって考え方で生きているからで、さっき言ったように全部が過程だと思えれば、良かれ悪しかれ、結果を愛することはできるんじゃないか…みたいなことを最近考えていて、それが曲になっているのかなとは思いますね。
明朗で穏やかさを印象付ける作品ではあるけれど、それだけじゃないところも聴きとってほしいと?
それはあります。「隼」の“隼”が実は何なのかはここでは言いませんけど、「隼」で始めて、最後は「天国」で締めたかったんです。「ねこの居る風景」(テレビアニメ『ねこねこ日本史』のエンディングテーマ)を入れることになって、収まりのいい曲順を考えた結果、「天国」は4曲目になりましたけど、そういう明るい作品と思わせ…だから、普段の生活と一緒ですよ。平然と生活していても生と死は表裏一体という。でも、聴いたまま聴いてもらっても全然構わない。「隼」のMVをこれから作るんですけど、監督とどこまでメッセージを打ち出すかって話になった時、そんなにやらんでいいってなりましたし。ポジティブなメッセージもネガティブなメッセージも伝えたくない。そこまで伝えるなら、朝まで飲まないと(笑)。白なんですか? 黒なんですか? 灰色です、どっちもあるんです…って、そこが僕らの難しいところです、ずっと。最近、分かりやすくしてあげるみたいな発想にすぐなるじゃないですか。昔の人も言っている。本を書く時は目線を落として、猿に書くつもりで書かないと売れないよって。でも、人のことを馬鹿にしたようなことを僕はしたくない。この表現は難しいから使わないってことはないです。そういう意味では、今回の曲は自分の中でどういうふうにしたいか見えている状態でとんとんとんと書けました。
それぞれに趣きの違う5曲が揃い、聴き応えあるものになっていますね。
サウンドの個性が全曲違うものになるように決めてから録ったんです。「隼」はシュッとしているというか、迫力よりも味。「光」はもうパンチパンチ。「天国」は雰囲気のある感じで。そういう分け方はしましたけど、その辺も今回は見えていましたね。だから、音もすんなりと決まりました。
バラードの「天国」は、ストリングスも聴きどころですね。
ライヴでストリングスを鳴らしたかったんですよ。それも同期を使わずに生音で鳴らしたかったので、ストリングスの音色をギターで再現できるエフェクターを使ったんです。一応、後ろに打ち込みのストリングスとオーケストラが薄く入っているんですけど、主役はあくまでもギター。壮大にしすぎるとライヴで再現するのが難しい。でも、音源だからいいか、ライヴでやることにとらわれすぎてもな…っていう絶妙なバランスを聴いてほしいです。
絶妙のバランスと言えば、ガレージロックの荒々しさと洗練されたポップ感覚が入り混じる「Sunny side up」もまさにそうですね。
ドラムのキックのドンって抜ける感じがポップさを出しているんですよ。この曲はずっとサビが付けられなくて。AメロとBメロが強すぎて、どういうサビをはめても取って付けたようになってしまう。それならいっそのこと、めちゃめちゃ取って付けたようにしてやろうと思ってやってみたら結構きれいにはまりました(笑)。歌詞にある“銘々”(メイメイ)と“good good”(グーグー)は中国語の妹と兄貴。兄貴と妹が主人公の中国のテレビアニメ(『兄に付ける薬はない!』)に書いた主題歌だから、そういう仕掛けを入れたんですけど、それには誰も気付いていないですね(笑)。もちろん漢字は違うんですけど、中国で流れる時、そういうふうに聴こえたらいいなと思っていたら、中国で流れたのはオフヴォーカルバージョンっていうね(苦笑)。
あ、それで“good good”なんて…。
歌うかぁみたいな?(笑) どこまでくだけられるのかっていう質問というか、問題提起というか、そういう歌詞ではありますよね。“こいつらグーグー言うとるぞ”ってなるのか、“いいね!”ってなるのか。でも、歌っていて気持ち良いから、ま、いいんじゃないかなって思いました(笑)。
取材:山口智男
アーティスト
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