【広沢タダシ】広沢タダシ 赤坂BLIT
Z 2008年12月22日

イルミネーションが彩る赤坂の街並を抜けて会場に入ると、そこでもBGMにクリスマスソングが流れていた。やがて客席に設置された席が徐々に埋まっていき、雨と寒波だった外の世界のことを忘れた頃、客電が落とされる。幾本ものスポットライトの中でアコギを爪弾きながら「シロイケムリ」を歌い始める広沢タダシ。しっとりとしたメロディーをやさしく歌いながらも、その歌声が持つ説得力でセンチメンタルなフレーズのひとつひとつが胸に響き、切ない気分にさせられた。これが“共鳴”なのだろう。その後も、アコースティックスタイルで届けられる歌に、ゆったり&どっぷりと浸っている自分がいた。そして、計8曲を演奏したところで約10分の休憩が入り、今度はバンドスタイルで2部がスタート。アコギをかき鳴らす広沢の伸びやかな歌声をベース、ドラム、ピアノ、バイオリンがサポートするという編成で、ファンキーな「愛を探す旅」、バイオリンの音色が悲しさを倍増させた「さよならなんて」、客席に笑顔が咲いたアッパーチューン「くちづけ」などを届け、1部とは違った温もりのあるサウンドを場内にふり撒いていく。アンコールでは“今年の僕の中のテーマソング”と言って「夢色バス」を弾き語ると、再びバンドメンバーと「サフランの花火」をプレイ。じっと聴き入っていた客席も、最後は“夢を叶えるため流したその涙 みんな思い出に変わればいい”というフレーズで大合唱となり、アットホームなムードが会場いっぱいに広がる中、終演を迎えたのだった。アコースティックとバンドという2部構成で、ハートウォームな時間を過ごしたライヴ。会場を出た後もまだ、雨上がりの冷たい空気が心地ち良かった。

広沢タダシ

01年、マキシ・シングル「手のなるほうへ」でメジャー・デビューを飾った大阪出身のシンガー・ソングライター。レニー・クラヴィッツやブライアン・アダムス、シェリル・クロウあたりをフェイヴァリットに挙げていることからも分かるとおり、メインストリームよりの洋楽ロックと近い雰囲気の音を鳴らす。カチッと作りこまれた骨太サウンドをバックに放たれる力強いメロディ/言葉。奇抜さや実験性には欠けるが、ストロング・スタイルな魅力をもった音世界を構築している。

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