【横道坊主】横道坊主 Shibuya O-Cr
est 2007年5月4日

text:石田博嗣

春の対バンツアーをスタートさせたばかりの横道坊主。この日は『MUSIC DAY 2007』に出演し、個性あふれる2バンドと一戦を交えた。トッブバッターは関西アンダーグランドの新星、ミドリ。トリッキーでアバンギャルなサウンドを客席に叩き付けると、続くTHE GROOVERSがソリッドなロックンロールをぶちまける。新進気鋭の若手バンドと百戦錬磨のライヴバンド。どちらも強烈なインパクトを観客の脳裏に焼け付けた。そして、いよいよ横道坊主が登場! 1曲目からスリリングな「THROW THE DICE」をぶっ放すと、それに観客は拳を突き上げて応戦する。矢継ぎ早に繰り出されるエッジの立ったサウンドとハートフルな言葉を全身で受け止め、カケアガルようにヒートアップしていく客席。また、3コードでテンション一発のパンクではなく、己の生き様を刻んだ横道のパンクロックは、確実に聴く者の中に何かを残す。その“何か”とは聴く者の人生とリンクしたものであり、人それぞれである。ただ、言えるのは、現在を一生懸命に生きているからこそ、リアルに心が呼応しているということ。「欲望の花」の中でヴォーカルの中村義人が叫んだ“たとえ辛いことがあっても、たとえ悲しいことがあっても、絶対に諦めるんじゃねぇ! 自分だけの花を咲かせよう”という言葉に熱いものを感じた観客たちが高らかに拳を上げていたのが印象的だった。イベントということで短い時間だったが、ハートウォームな横道らしいライヴが繰り広げられたことは言うまでもない。

横道坊主

バンド名は長崎弁で"悪ガキ"の意。84年結成。89年にアルバム『DIRTY MARKET』でメジャー・デビューを果たした。
UKの匂いのするパンキッシュなビートとストレートなR&Rサウンドをベースに、初期の頃は世間への憤りをぶちまけるかのような攻撃性を抱えた詞・曲を聴かせていたが、年を経てバンドが熟していくにつれ、姿勢はそのままに懐の深いバンドへと成長。客観性を持ち始めた詞の説得力とリアリティも増し、サウンドの幅も拡がったことで、より幅広いファン層を獲得した。
しかし、つくづく純で不器用なバンドである。93年から94年にかけて「I WANT…」〜「夏の日の少年」という5枚のシングルを短いインターバルで立て続けにリリースし、いわゆる"売り出し体勢"に入った時期に自由な活動の場を求めレコード会社/事務所との契約を自ら解消し、プライベート・オフィスを設立。その後、メンバー・チェンジを経てデビュー10年目の99年には初期衝動を思わせるエネルギッシュなアルバム『Happy!』をリリースするなど、自分たちのペースで現在も精力的に音源制作とライヴ活動に取り組んでいる。

アーティスト