【殻】かなりいいジャンプ台ができた

手前より時計回り 七瀬珠樹(Vo)、渡辺清美(Gu)、増原克彦(Ba)、永野良祐(Gu)

狂気と儚さが交錯するドラマチックでディープなサウンドが、ライヴ感を伴ってパッケージされたミニアルバム『分裂後』。そんな渾身の作品についてメンバーが語る!
取材:土内 昇

『分裂後』は映画を観終わったような、胸に何かが残る作品でした。それだけドラマ性を秘めているということだと思うのですが、何かコンセプトみたいなものはあったのですか?

渡辺

大変申し訳ないですけど、何もないです(笑)。今までにあった曲で、ライヴでやってた曲をひとつにまとめた途端に意味を持ったという感じなんですよ。

七瀬

『五月蝿(サバエ)』というフルアルバムを出しているんですけど、そこにイメージ的な理由で入れられなかったものとか、封印してたけど人気のあったものが入っているんですね。次に行くためにも既存曲を全部出してしまいたいって思っていて、それをまとめたものが今回のミニアルバムなんですよ。

音源化するにあたり、さらに煮詰めたりして?

渡辺

煮詰めに煮詰めたものをライヴでやってたので、特にリアレンジをしたっていうのもなく。でも、ドラムが脱退して、今回はササブチヒロシさん(元Plastic Tree)に叩いてもらったんで、そこでの変化はデカいですね。

永野

レコーディングの前からライヴのサポートで入ってもらっているんですけど、自分のバンドなのに自分のバンドじゃないぐらいの変化がありましたね(笑)。それは気持ちというか、音楽に向う姿勢…言葉で何かを言われたわけじゃないんですけど、そういう姿勢にいろいろ気付かされて、この『分裂後』のレコーディングでも自分の甘いところが分かったんで、そういう自分を分裂させることができました(笑)。

なるほど(笑)。レコーディングもライヴのように?

渡辺

ドラムとベースに関してはほぼ一発録りですね。歌以外は、一日で5曲を録る予定だったんですよ。だから、そういう緊張感も入っていると思いますね。

インスト曲の「分裂後」もライヴでやっていたのですか?

渡辺

やってないです。最初「wormhole」は入れるつもりじゃなかったので、4曲だと少ないと思って作ったんです。イメージとしては「sink」という曲の世界観を使っていて…まあ、分裂していくっていう感じですね。

この曲が最後に入っているから、映画を観終わったような気持ちになったのはありますね。

増原

それ、すごく分かります。激しいところから最後に静かになるところで、すごく情景が見えるし。レコーディングしながらできていった曲だったんで、タイトルもなかったんですけど、アルバムタイトルが決まった時に“この曲も同じでいいんじゃない”ってなったんですね。そしたら、アルバムとして一本筋が通ったんで、この曲にまとめられたというか。

そんな本作は、どんなものが作れた実感がありますか?

増原

溜めていた曲を全部入れたから、もう曲がないんですよ。全部出して何もなくなったっていうのが、「分裂後」の最後の静かなところとダブるんですよね(笑)。出し尽くしたっていう。

永野

全て出し尽くしたから、いい意味でもう逃げ場がないんですっきりしましたね。だからこそ、バンドとして今できる最高傑作なものになったと思います。

七瀬

でも、次に行くための曲ネタはいっぱいあるんで、“さぁ、これで次に行けるね”って感じなんですよね。

渡辺

そうなんですよ。気分的にはもう次のステップに行ってます。挑戦したいこととかも見えてきたので、このミニアルバムが次に行くための中間地点になるのかなって。そういう意味では、かなりいいジャンプ台ができたと思います。

カラ:2004年1月に結成された、東京を中心に活動する4人組女性ヴォーカルバンド。オルタナティブロック、ニューウェイブ、プログレッシヴロック、シューゲーザー…等を吸収し、独自の音世界を構築している。

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