【12012】本当の闘いはここから始ま
る
L→R 須賀勇介(Gu)、塩谷朋之(Ba)、宮脇 渉(Vo)、川内 享(Dr)、酒井洋明(Gu)
まさに堰を切ったかのような怒濤の勢いで迫る2010年の12012。最新シングル「THE PAIN OF CATASTROPHE」が放つハードな音塊は、その生きかたを体現したものだ。あえて真正面から“痛み”と向き合った彼らの真意とは?
取材:土屋京輔
前作「TATTOO」やライヴでも匂わせてはいましたが、今回の「THE PAIN OF CATASTROPHE」は、予想以上に攻撃的に迫ってきた印象がありました。この曲をシングルに選んだ理由は?
宮脇
音源で初めて12012を知った場合、実際にライヴを観た時に、“こんなに激しいの!?”とか、ちょっと違和感を覚える人もいると思うんですよ。そこはもう一度、ちゃんと立ち返ってみたかったし、だからこそ、今、この曲を僕らが出すことにすごく意味があるんですよ。CDとライヴのピントを合わせたいというか、一貫させたかったんです。まずはCDを作ってからライヴという順番も、そもそも違うんじゃないかなと思い始めてましたし。
須賀
結果的にも、目論見通りにはなってるように思うんですけどね。今までいろんな顔をしすぎていたんですよ、12012って。でも、そこはやっぱりひとつでいいんじゃないかなって。
川内
今までは結構、“その時その時の心境で”というスタンスだったんですよ。でも、今回は今の自分たちを表現できたのはもちろんですけど、これからの自分たちもかたちにできた手応えがあって。“俺たちはこんな感じでいきます!”みたいな一本道がスッとできたような新鮮さで…何かすっきりした気分(笑)。
塩谷
ここ最近、僕も音源とライヴの在りかたに違和感を覚えてたんですね。あれだけエネルギーを使うライヴをしているのに、何かCDだとラクに聴けちゃうなみたいなところがあったんで。その意味ではライヴ感というか、聴くのに消耗する音源というか、魂がこもったシングルができたんじゃないかなって。
それは音にも表れていますよね。例えば、ギターの激しいサウンドが前面に出てくる分、ベースとドラムが強固に下支えをしないと、この攻撃的な空気感は出てこないと思いますし。
塩谷
今まで以上の強い土台が必要でしたからね。基本的にはリフをユニゾンしていく感じなんですけど、その中でリズム隊で音の波を生み出す…そんなうねりを作れたらなというのは意識してました。歌詞的なところでも、“取り返しのつかない痛み”といったタイトルのように、刺さるような尖った感じ、痛い部分なんかも、ピッキングや音作りで意識したところでしたね。
川内
激しい曲なんでガーッといきがちなんですけど、全員がそうなっちゃうとバランスが取れない気がするんですよ。僕の中では、激しい曲ほど支えたいという考えかたがあるんで、そんなグルーブを表現することを大前提にプレイしてましたね。
酒井
最近のライヴでもそうですけど、結局、やりたいのはこういうことなのかなって、いろいろ経験して分かったんですよね。実際に2月25日(東京・渋谷WOMB)のライヴからは、“これだ!”って思う曲しかセットリストには入れてないんですよ。ちゃんと明確なものを提示したいなって。
そういった考えが自分の中でも確信に至る上で、重要な曲にはなっているわけですね。
酒井
うん。でも、その意気込みは意気込みであって、僕のプレイ自体は変わらないといったらあれですけど、曲が求めているものを模索するのではなくて、バンドがこうありたいという明確なものがありましたし、レコーディングはスムーズでしたね。
須賀くんのギターはそのまま曲の特徴にもなるほどですね。リフはもちろんですが、ピッキング・ハーモニクスを効かせたパートでは、よりメタリックな感触が強められてもいますし。
須賀
あそこは右と左で同じことをやっているように聴こえるんですけど、実はまったく違うんですよ。ヘッドフォンで聴くとよく分かるんですけど、ユニゾンしているふうに聴かせて、途中でいきなりステレオになったり、交互で鳴ってたり、いろいろと細かいことを…若干、音符の数的に弾きすぎたかなって思ったりもするんですけど(笑)、そこは意気込みととらえてもらえれば。
歌詞についても考えるところはあったでしょう?
宮脇
素直に言うと、曲に縛られたくないんですよ。自分が思っているものを代役してくれる言葉だったら何でもいいというか、みんなが言ってるように、曲が求めているものを引っ張り出してきていたのが今までだとすれば、そうじゃないんじゃないかって。ただ、今、自分が思っているものを全て叩き込みたい。そういう単純なスタイルになってきてるんですよ。何でもいいとは言いながら、実はめっちゃ凝ってたりもするんですけど、それは後作業の話でね。まずは何かに取り憑かれたような自分が、やりたいことを一発目の衝動として叩き込んで、そこで書かれた“何やねん、これは!?”っていうのを、あとからもうひとりの冷静な自分が丁寧に仕上げていく感じなんですよ。なんか、“この曲ならこうなるだろうな”みたいな予想が付くレベルでは満足できない。結局は自分を全て解放したいんですよ。でも、それは自分でも怖さを感じたりするんですね。受け止めてくれる人がどこにいるんやろうとも思うし、聴いた人がどうとらえるのかも分からない。
“解放”と言えば聞こえはいいですが、場合によっては、それは単なる暴発とも受け取られかねないわけですからね。
宮脇
かもしれない。でも、自分でちゃんと鍵も持ってるんですよ。だからこそ、その解放を人に任せておいてはダメなんです。もちろん、始末も自分でしなきゃいけない。だから、振り返ってみると「THE PAIN OF CATASTROPHE」で書いた歌詞も、僕の中では闘いなんですね。もともとは戦争というテーマがあったんですよ。たくさんの命が簡単に、すぐになくなってしまうような瞬間がいっぱい浮かんできて、それを間近で見ている人みたいなイメージ。ただ、実際の戦場の光景というよりも、戦地に赴く人を送り出しているような立場ですね。それが自分にとっては、こういう方向に進んでいこうとする12012を自ら見送っている、そんな場面を表わした曲になったのかなとも思うんですよ。本当の闘いはここから始まるんです。
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