【Any】もっと日常に寄り添っていた
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L→R 大森慎也(Ba)、高橋 武(Dr)、工藤成永(Vo&Gu)
20~21歳の大学生である3ピースバンド・Anyが、シングル「優しい人」でメジャーデビュー! 高校時代には前身バンドも含めてコンテストで二度もグランプリを獲得した輝かしい経歴も頷ける、珠玉のメロディーは必聴 !
取材:高橋美穂
「優しい人」はAnyにとってどんな曲なんでしょう?
高橋
この曲を初めて聴いたのは、まだ僕がこのバンドに入ってない時だったんです。
工藤
僕が高校三年生の時に作ったので。
高橋
僕らの出会いはコンテストだったんですけど、そこで聴いて、すごくいい曲だから自分で叩きたいと思ってたので、すごく幸せです。
大森
当時この曲はライヴでやってて、すごく好きだったんですけど、自然とやらなくなってしまって。工藤くんの意思で。でも、こういう形で作品として出すことができて、うれしく思います。
工藤くんは、なぜ当時やろうと思わなくなったんですか?
工藤
自分の感性や伝えてることと違うなって思ってきたんですよね。高校生の時に書いた歌詞だったんで、ちょっとこっぱずかしくなった部分もあって。でも、周りの評価がよくて、自分も懐かしくて、ある時にレコーディングしてみないかって話があって。それで、サビは一緒なんですけど、頭の歌詞は変えたんですね。それは今の自分と昔の自分をつなげるためだったんですけど。
繋げてみて、改めてこの楽曲をどう思います?
工藤
高校生の時にしては、ずいぶん大したこと言ってるなと(笑)。あなたがたったひとりいれば生きていける、そういうメッセージをなぜ歌ったんだろうって、自分自身もびっくりして。逆に言うと、今の僕にないものがあったんですよね、この曲には。それで、自分はストレートなことを言っても伝わるんじゃないかって自信が持てたんですよ、この曲を聴いて。これまで、もっと伝わらないかなって考えて、表現をぼやかしたり、文学的に書いたりしたんですけど、僕には無理だったんですよね。そこで、僕にできることは何だろうって考えたら、こういうふうにストレートな言葉を乗せることで、ありふれた言葉かもしれないけど、その言葉が想像力を膨らませるということに、ようやく気付いたんです。
あと、この曲の“あなた”とか、他の曲でも“君”とか、相手がいる歌詞が、Anyには多いですよね。
工藤
その時は、深く考えてなかったんですけど、メジャーを意識するとするなら、身近にいる人にも届けたいというか、近くに感じてほしいっていうメッセージになると思います。
曲自体のアレンジは、変えました?
工藤
そんなに変わってないですけど、少しドラムのアレンジを変えてみたりはしましたね。歌や歌詞が伝わればいいっていう、まっすぐなところで勝負しようっていうのがいつもの僕らなんで、あまり凝ったことはしてないんです。
また、Anyの中では珍しく、アップテンポな曲ですよね。
工藤
ミドルテンポからスローテンポの曲って、気持ちを乗せて、ひとつひとつの意味を考えながら歌えるんですよね。アップテンポな曲も、ライヴでお客さんを楽しませて、火付け役になる意味はありますけど、じゃあ何を伝えたいんだってなってくるじゃないですか。だから、無理してアップテンポな曲を書こうとは思わないですけど、この曲はあなたがいれば大丈夫ってことを強く歌うのに、ゆっくりなテンポにすると違うと思っちゃったんですよね。疾走感があって、自分でも呼吸が辛くなってても、その部分が切なく聴こえたりとか、そういうふうにしたかったんですよ。
続いて2曲目の「雨のパレード」は、Anyらしいミドルテンポな楽曲ですけど、どのように作っていったんですか?
工藤
それは、帰り道に小雨が降ってて思い付いたんですけど、それでそのまま「雨のパレード」っていう(笑)。パレードっていうのは、雨が落ちてくる時に、いろんな音に聞こえてきて。太鼓のリズムだったり、パンって花火が打ち上がってる様子だったり、そういうインスピレーションが浮かんだんで、付けたんです。
ひとつのことからたくさんのものを想像したんですね。
工藤
雨からインスピレーションを受けることって多いんですよ。気分が沈むだけじゃなくて、沈んだところから出てくる幸福感とかを、雨は与えてくれるんですよね。でも、僕はそんなに想像力が豊かじゃないんですよ。すっごく普通の人間だと思うんです。他のふたりは、僕らじゃ想像できないとか言ってくれるんですけど。
高橋
考えてることは変わらないんですけど、表現の仕方が工藤くんならではっていうことに、本人は気付いてないっていうか(笑)。
だからこそ純粋に聴こえてくるのかもしれないですね。で、3曲目の「アネモネ」は、どこか可愛らしさがあると思って。
工藤
この曲は最初からアコースティックでやりたいと思ってて。花って自分に活力も与えてくれるけど、嫌なことを吸い取ってくれるとも言うじゃないですか。華やかなイメージもあるけど、素朴で日常に寄り添ってくれている、そういうところからイメージを膨らませて。地味だけど「アネモネ」が僕は一番好きですね。
バランスがいい3曲ですよね。
工藤
2曲だったら物足りないと思ったんですよね。3曲でも、もっと他にもこういうところがあるよ、ってところもあるんですけど、そこは小出しにしてやろうかなって(笑)。
(笑)。これでメジャーデビューで、学生生活と並行してバンド活動もより忙しくなっていくとは思いますが。
工藤
これはこれでいいんじゃないかな。もちろん自分たちに自信があるから、バンドだけやっていってもいいのかもしれないですけど、学校とか行くからこそ、書けることもあると思うんですよ。
部屋にこもるような夜型の生活では書けない世界観というか。
工藤
曲を書くのは絶対真夜中なんですけどね。明るいといろんなものが見えちゃうじゃないですか。でも、だからこそ普通に生活を送ってないとダメなんですよ。突拍子もない世界に行こうと思ったらもっと想像力が必要だと思うんですけど、僕は想像力が少ないって自覚してるので。もっと日常に寄り添っていたいですね。
アーティスト
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