【HOWL BE QUIET】飛び立つという選
択をするもしないも自分自身
L→R 黒木健志(Gu)、橋本佳紀(Ba)、竹縄航太(Vo&Gu&Piano)、岩野 亨(Dr)
ピアノを中心とした鮮烈なバンドサウンドと、心の琴線にそっと触れるナイーブで美しいメロディーと歌で、一気に大注目。最新作『BIRDCAGE.EP』に刻んだ成長の軌跡と未来への誓いを、竹縄航太(Vo&Gu&Piano)が語る。
取材:宮本英夫
すごくきれいなジャケット。ここに描かれてるのは鳥?
そうです。今回ジャケットをこうしたいというより、作品を作っていくうちにひとつのキーワードとして“虹”という構想がなんとなく頭に描けて。その構想をジャケットに反映させた感じですね。
1stアルバム『DECEMBER』から1年が経って、音もだいぶ変わった気がしますよ。前はライヴ感あるバンドサウンドだったけど、今回は音作りがとても緻密になった印象があって。
それはあると思います。前作はいい意味で、せーのでやる感覚があって。今回も軸にあるのはスタジオでのセッションで、「A.I.」や「救難戦争」ができたんですけど、自分らの中で1回かたちになってから、スタジオワークでもっと詰めていく作業を繰り返したので。紆余曲折、右往左往しながらできたアルバムだなとは思いますね。
一気に進化したと思います。バンドサウンドにエレクトロニカ、ポストロック的な要素も加わったような。
この感じどっかにあるよな、というのが嫌で。新しいものを追求していきたいという気持ちがすごくあるんですよ。今の音楽シーンをあんまり意識しないで、自分らがやりたい、一番ベストだと思う音楽を追求するのが俺らだよね、と思いながら作ってるんで。
リードトラックの「ライブオアライブ」は、漫画『テンプリズム』(作・曽田正人)とコラボしたミュージックビデオが話題になっていますが、あれ面白いですね。
小さい頃から映画、マンガ、小説、絵、音楽とか、芸術的なものに触れるのが好きだったんです。だから、今回のコラボはすごく刺激になったし、楽しかったですね。
曲としても、これは本当にいい歌詞で。
どこかで見た“DEAD or ALIVE”という言葉がパッと引っかかって、その言葉と自分を対峙させてみた時に、今の俺には生きるか死ぬかという選択はねぇなと思って。辛いことや悩みは生きてれば誰しもあるけど、そこに対しては“生きる”という選択肢しかないし、選ぶとすれば“生きるという中でどんな生き方をするか?”という選択しかねぇなと。そこが地盤となって歌詞がバーッとできた感じです。
あと、すごい曲だなと思ったのはラストの「救難戦争」。これはもう“俺は何があっても歌い続ける”という決意表明でしょう。ここにも“選ぶ”という言葉が出てくるけれど。
「救難戦争」は歌詞を書いた後、自分で聴けなくなっちゃったんですよ。自分で歌詞を書いておいて、おかしな話なんですけど。自分が自分にすげぇ向き合って書いた曲だったから、客観的に聴いた時に苦しかったんですけど、でも自分の発信したひとつひとつの言葉を咀嚼して、自分の中に還元していく作業があったんですよ。そのうちやっと自分の言葉として歌えるようになって、この曲は自立できたなと思います。
すごい! そこまで突き詰める。
曲によっては。面倒臭いんですよね、俺(笑)。
だからこそ、説得力も生まれるわけで。“頑張れ!”とはひと言も言ってないけど、これは聴く人を勇気付ける歌だと思います。そういうメッセージ、あったりします?
いや、勇気付けたいとか、そういうのはないかもしれない。というよりも、“俺ってこういう人間だから”っていうほうが強いかもしれない。だから、誰かに対して“大丈夫だよ”っていうよりは、“分かるよ、お前。俺もそんなんばっかだよ。でも、まぁ頑張って一緒に生きようぜ”っていう感じのほうが強いかもしれないですね。
“BIRDCAGE(鳥かご)”というワードはどこから?
冒頭にも言いましたけど、アルバムの中でまず「ライブオアライブ」ができた時に、自分の中では虹のイメージと、虹色の鳥がわーっと飛び立っていくイメージがあるんだという話をしたんですけど、家に帰ってもう一度考えた時に、たくさんの鳥が飛び立っていくということは、ひとつの場所に閉じ込められてたんだなと思って。“そうか、俺は飛び立ちたかったんだな”と。自分自身が。そこから“鳥かご”というワードが出てきて、1曲目の「From Birdcage」という曲ができました。ただ、今回の『BIRDCAGE.EP』全体を通して言えるのは、まだ飛び立ててはいないんですよ。
というと?
鳥かごの鍵をやっと開けられて、扉に足をかけた状態ですね。そこから飛び立つという選択をするもしないも自分自身で、飛び立たなければ日常は変わらない。飛び立てば日常は変わるだろうけど、不安や絶望が待ってるかもしれない。それが僕の中での、5曲全部を通したイメージです。
その、竹縄くんが飛び出したかった“鳥かご”というのは、具体的には何を指すのでしょうか?
それは…自分では意識してるつもりはなかったけど、前作の『DECEMBER』を聴き直すと、言葉が自分の内に向いてるんですよ。そう思った時に、聴いてくれる人ともっと深くつながりたいという気持ちがすごくあったと思って。言葉が内に向いてる分、聴いてる人がそこに反応してくれたのが『DECEMBER』だと思うんですけど、それを経て、いろいろとライヴをやっていくうちに…そう、ライヴは外なんですよ。ライヴというものは絶対に外に向かっていて、目と目を合わせてキャッチボールするものだから、内に向かうだけじゃなくて、自分から扉を開けて外に向くことをしないと、つながれないものもあるんだってすごく思ったんです。そこから“飛び立つ”というイメージが出てきたんじゃないかなと思います。今回は全部そのイメージですね。
重要なターニングポイントになる作品だと思います。そして、11月22日には渋谷クラブクアトロのワンマンライヴが控えていますが、めちゃめちゃ期待してます。
楽しみでしかないですね。そこで初めて、飛び立てたらいいなと思います。みんなと一緒に。
アーティスト
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