【沢井美空】私、1年で360日くらい“
憂鬱”なんです
前作から約2年振りとなるアルバム『憂鬱日和。』。現役女子高生シンガーソングライターとして衝撃のデビューを飾ってから4年、アーティストとしても、女性としても大人になった彼女が描くリアルな“憂鬱”とは?
取材:清水素子
“憂鬱日和。”というタイトルに納得してしまうくらい、あまりにもディープな物語が満載のアルバムなのですが…最近、そんなに辛いことばかりだったのですか?
まぁ、全てがリアルとは言いませんが、シンガーソングライターである以上、歌詞を実体験だと捉えられるのは覚悟してますし、21歳になった今、恥ずかしがらずにもっと正直なところを発信していこうとは思ってました。だから、歌詞もサウンドアプローチも、“沢井美空がここまでやるんだ!”っていう域まで振り切りたかったんですよね。
それでびっくりするくらい赤裸々な言葉が綴られているのですね。「⌘Q」の《アプリで無料で聴けたんだ~とか よく堂々と言えるよね》とか、シンガーならではの実感が書かれていて、よくぞここまで言い切ったなぁと感心しましたよ。
CDだってそれなりの値段がしますし、無料で聴けるならそっちを選ぶ人がいるのも分かるんです。でも“新曲いいね。アプリで聴いたよ”とかって、ミュージシャンが言ったりするんですよ。音楽業界を盛り上げていかなきゃいけない立場の人間が、そんなことを言ってしまう今の時代に対して怒っているというのもあって、そうやって生きていてムカつくことをズラッと並べてみた曲なんですよね。で、もう世界ごと終わってしまえばいいのに!っていう気持ちから、Macのショートカットキーで終了を意味する“⌘Q”をタイトルに付けたんです。
上手い! しかし“世界が終わればいい”とは、わりと普段から思考も極端に振り切れやすいのでしょうか?
はい。私、喜怒哀楽が激しくて、精神的な波の振れ幅がすごく大きいんですけど、それを人に対して表す方法を知らないんですね。曲でしか表現できないから、とりあえず感情が高ぶった時は曲を書くことで消化して、なんとか生きているんです。だから、他人に誤解されることも多くて、自分は本気で笑っているのに“それ、笑ってるの?”って言われたり。ちょうど1年前に『Woman On The Planet』というTV番組の企画でニューヨークに2カ月半住んでた時も、自己主張の激しいアメリカ人に囲まれて、最初は自分の殻に閉じこもってたんですね。でも、ちょっと外に出てみると良い人にもたくさん出会えるってことに気付いて、帰国してからはよく喋るようになったって言われたんですよ。その経験もあって、もっとYES/NOがはっきりと言える人間になりたいと思うようになったんです。特にソングライティングでは、もっとこだわっていこうと、今回はアレンジでも躊躇なく自分の意見を言いましたね。
つまり、今までははっきりとYES/NOを言えなかった?
言えないというか、子供すぎて分からなかったんですよ。白でもなく黒でもなく、ずっと灰色な感じ。でも、1年前くらいにPCでの打ち込みを始めたことで、デモの段階から曲の最終形が見えるようになったんです。ヴォーカル面でも細かいニュアンスまで分析してからレコーディングに臨めるようになったり、最近ようやく自分の“やりたいこと”が分かるようになって。それを叶えたいな、今こそ白黒はっきり付ける時なんじゃないかなっていう想いで書いたのが、1曲目の「浮遊旋律」なんです。おかげで昭和歌謡な「ごめんね、いいコじゃいられない。」、ロックバラードの「こんな世界、知りたくなかった。」などのシングルから始まって、今回はサウンド面でもいろんな挑戦ができましたね。同期色の強い「I know」に昭和っぽさも入れつつロックをやり切った「Lost Generation」など、新曲も理想通りに仕上げられました。
17歳でのデビューから4年経って、キャリアを積んだ分、やはりいろいろな成長があったんですね。
そうですね。当時は日記のように、自分の好きなものを好きな時に書いていたけれど、アニメのタイアップも何作かやらせていただいて、テーマに寄り添って書くことの楽しさも知りましたし。音楽を勉強すればするほど、より自由に音楽が作れることも実感したんです。やっぱりある程度の基礎がないと、自分のできる範囲も限られてきちゃいますから。
自分自身から沸き出る想いだけじゃなく、外から与えられるものから曲を作る楽しさも知ったと。
そうそう。今回の収録曲でも「Happy Day ~ありがとう、あなたで良かった。~」は“小さな結婚式”のCMソングとして書き下ろした曲で、実在するカップルがモデルになっています。3年前に「指輪~あたし、今日、結婚します。~」を出した時、曲にちなんで結婚式に歌いに行きますっていう企画をやって、30カ所近くの結婚式会場を回ったんですけど、その時はさすがの私でも幸せな気分になったんですね。そういった感覚を踏まえた上で大人になった今、改めて結婚式ソングを書きたかったんです。
他人の感情を取り込んで曲に落とし込めるのも、キャリアを積んだ今だからこそですよね。ちなみに“さすがの私でも”というのはどういう意味?
私、1年のうち360日くらい憂鬱なんです(笑)。何かと抱えていて、歌うにしても幸せな曲より憂鬱な曲のほうが感情移入しやすい。でも、それって悪いことじゃないと思うんです。その憂鬱から創作意欲が沸きますし、憂鬱があるから楽しい時も“あ、楽しいな”って分かる。たぶん、みんなそうなんじゃないかな。
つまり“憂鬱日和。”とは、イコール“音楽日和。”でもある?
私にとってはそうですね。人によっては音楽を聴く日かもしれないし、その憂鬱を認めていこうっていう想いから生まれた言葉ではあって。要するに、このアルバムで言いたいのは、憂鬱を吹き飛ばそうってことじゃなく、憂鬱を認めて負けずに進んでいこう!ってことなんですよ。
アーティスト
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