【ASIAN KUNG-FU GENERATION】ロック
ど真ん中を“気持ち良く”撃ち抜く意
志
L→R 山田貴洋(Ba&Vo)、後藤正文(Vo&Gu)、伊地知 潔(Dr)、喜多建介(Gu&Vo)
「今を生きて」以来約2年振りとなるニューシングル「Easter」がついにリリース。フー・ファイターズのプライベートスタジオでレコーディングを敢行し、すでに新作アルバムも完成させた4人がロック王道邁進モード真っ只中の“今”を語る!
取材:高橋智樹
今回の一連の制作はいつ頃から始まったのですか?
喜多
去年の2月の、大雪が降ったあたりかな?
山田
「スタンダード」(『NANO-MUGEN COMPILATION 2014』に収録)があの時できた曲だね。
喜多
そこから何回かのタームにわたって曲作りセッションがあって…
後藤
夏ぐらいには、どうやって次のアルバムを作っていくかっていうだいたいの狙いは付けていて。レコード会社とかマネジメントには“アメリカで録りたい”みたいな話を…っていうか、“(フー・ファイターズの)デイヴ・グロールと仕事がしたいんだけど”っていう話を最初に振って。実現するかは分からないけど、“一応ダメ元でメールしてみてください”っていうところからスタートしましたね。“ラウドなものを作ったほうがいいんじゃない?”っていう話をしたら、キヨシ(伊地知)が“いいね!”って言ってて…まぁ、彼はだいたいいつでも“いいね!”って言うんだけど。
伊地知
そんなことないよ!(笑)
後藤
今回はいつもより語気強めの“いいね!”だった気がして(笑)。“ハードロック好きだったら、その良さも入れていこうぜ”って。ここ何年か僕はそういうことを一切言ってこなかったので、キヨシはニヤッとしてましたね(笑)。そのあたりから、みんなそれぞれのハードロック趣味を解放しながら制作していった感じでした。あと、bloodthirsty butchersのトリビュート盤に「banging the drum」で参加したりして、“エモいのっていいね”みたいな気持ちも取り戻しつつ、プリミティブなロックの開放感みたいなものを再確認しながら、わりとポップめに新しいアルバムの制作が始まりましたね。4人で長く一緒にやってきたなりの共通言語があるので、それに従って…“ヘヴィ”“ラウド”“エモ”っていうキーワードはあるけど、細部は空気で分かってる、っていうか。
タイトル曲の「Easter / 復活祭」はロックど真ん中をぶち抜くような、王道感のある曲ですよね。
喜多
「Easter / 復活祭」が一番ニューアルバムの感じを出してる曲のような気がしますね。
後藤
俺が一番ピンと来てないんですけど(笑)。
伊地知
そうだよね(笑)。
後藤
ピンと来てないっていうか、そんなに深く考えて作ったわけじゃなくて。リフを思い付いちゃって、“あぁ、いいな”って展開を考えて…みたいな感じだったんですよ。まさかアルバムのメインのところに据え置かれるとは思ってなくて、あれよあれよと周りが盛り上がっていくのを見て…ありとあらゆる卵料理ができるのに“目玉焼きに醤油かけて食うのが一番美味い”って言われてるみたいな気持ち(笑)。“すごくシンプルにできたものなのに、いいのかな?”って。
伊地知
逆に新鮮だったっていうのはありますよね。今まで凝ったものを結構作ってきたのに…
後藤
“逆に”って言う?(笑)
山田
でも、個人的にはそこまで“凝ってない”とか“シンプルすぎ”とかいう印象ではなかったし。
後藤
王道っていうよりオーセンティック、正統派なロックっていう感じはすごくするよね。自分たちでも“王道”とかって言うわりには、“じゃあ、王道って何ですか?”って言われたら“……”ってなっちゃうところはあるけどね。シンプルでストレートで、精神が解放されるような音楽である、っていうのはあると思うんですけど。
伊地知
でも、ビートで言うと“シンプルな8ビートで”っていうのはあったよね。
後藤
あ、それは言ってたね。あと、フー・ファイターズのスタジオで録ったからっていうのもあるんだけど…みんなで『Wasting Light』(2011年4月発表のフー・ファイターズのアルバム)とか聴いてると、デイヴ・グロールが“なんで?”っていうところで“あ”ーっ!!”とか言ったりするんですよ、曲の善し悪しとは関係ないところで(笑)。この“あ”ーっ!!”がロックだよねっていう話はしてましたね。“そのフレーズってあの“あ”ーっ!!”に勝ってんの?”みたいな。言語化するのは難しいけど、“ある”としか言えないんだよ!っていう。そういうものがあるんですよね、ロックには。
実際、2010年代のシーンって“音の情報量を上げる”とか“エッジ感を高める”という方向性が一般化する一方で、こういうストレートで王道感のあるロックって、ずっと空席状態のままだった気がするんですよね。そういう状況に対してのアジカンからの回答という側面はあります?
後藤
世の中のことは気にしなかったよね、あんまり。
山田
でも、“空いてるね”みたいなことは言ってたよね。
後藤
席が? まぁ、フー・ファイターズみたいなバンドは日本にいないですからね。アメリカとかを見て羨ましいと思うのはそういうところで。ロックバンドが全力でガツーンと職責をまっとうして売れたりすると、日本ではダサい扱いにされちゃう感じがあるけど、それが海外だと本当にリスペクトされたりするから…物を作る上で“人と違うことをやりたい”っていう気持ちはありますけど、だからと言って“あ、そこの席が空いてるから”ってやっていくと、何がしたいのか分からなくなっちゃう。ただ、自分たちがやってみて思うのは、シンプルなほうが難しいし、やり甲斐がある。自分たちも音をすごく詰め込んだ時代もあるし、展開の多いプログレッシブなものを作るのが音楽的にすごいことだって思った時期もあるし、またこの先“シンプルなものはやっぱりちょっとね”とか思う時期が来るかもしれない。でも、今の気分としては、どうやって音を抜いていくのか、足すなら足すでどういう理由があるのか、それでいて身体的な気持ち良さを裏切らないやり方は…っていうことは考えてますね。
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