【フレデリック】歌詞とメロディーの
中毒性を高めた踊れる音楽
L→R kaz.(Dr)、三原康司(Ba&Cho)、三原健司(Vo&Gu)、赤頭隆児(Gu)
フレデリックのミニアルバム『OWARASE NIGHT』はメジャーデビューを果たした前作『oddloop』のダンスミュージックを踏襲しつつ、新境地にダイブした意欲作にして大傑作に仕上がった。そんな今作についてメンバー4人に話を訊いた。
取材:荒金良介
今作は素晴らしいですね。特に「セーターを脱がさないで」が大好きで、不思議ポップないい曲ですね。
康司
今回は“終わりと始まり”がテーマで、その中でできた曲だったんですよ。これはセーターと恋愛をかけていて。セーターって暑くなると脱ぐと思うんです。恋愛も暑苦しくなると邪魔だなと思うけど、それより大事なこともあるじゃないですか。そういうふうに聴くとまた違う聴こえ方をするかなと。
カッコ良いことをサラッと言いますね。
康司
ははは。普通に恋愛のことを歌うより、違うかたちで歌ったほうが逆にストレートに伝わるのかなって。音のテーマは前作の延長線上ではあるけど、俺もこの曲は超好きですね。
健司
曲名から只者じゃないと思ったし、深い意味があるのかなと。歌詞を何回も読むうちに、ひとりだけで歌うことに違和感を感じたので、この曲は康司とデュエットで歌ったんですよ。そういうことができるバンドにもなりたくて。
康司
そこもフレデリックの新境地を見せられたし、アレンジを含めて幅広く遊べた曲だと思います。
赤頭
曲名だけ見るとアダルト感があるけど、セーラー服よりはマイルドですよね(笑)。ライヴでオラオラな感じではないけど、渋いというか…こういう曲も広めたいです。 康司:音源でも以前から古さは出していたけど、ライヴでもそういう側面を見せていきたくて。
というのは?
健司
聴きながら、自然と体が揺れる感じですね。
kaz.
僕もこの曲のメロディーが一番好きで、レコーディングも楽しんでやれましたね。テンポはゆっくりだけど、何度も聴いてもらえる曲かなと。
前作『oddloop』以降、意識の上で変化した点はどんなところですか?
康司
自分は妄想を歌詞にすることが多かったけど、今は現実感が強くなってきました。それはライヴでお客さんとコミュニケーションを取る中で気付いたことですね。だから、お客さんの近くで提示してる感じというか…今は近付いている段階です。まだまだ人の内面を知れてないし、そこにどう近付いていくかがテーマになってます。
それは前作以降に気付けたこと?
康司
うん、気持ちで踊る曲もあるんじゃないかと。
健司
前々作『うちゅうにむちゅう』は自分たちのやりたいことを濃縮した作品で、ライヴでも世界観を提示するような感じだったんですよ。でも、メジャーに行く上で、より多くの人たちと音楽をやることの大切さをライヴでも学べたので。前作以降は地に足を着けてライヴをやれた感覚があったし。ほんとお客さんに気付かされることが多くて、その人たちと前作の次に行くために今回は取り組みました。朝から始まって夜で1日が終わるように、物事には終着点がある。ひとつのループに捉われず、次の新しいループを作りたくて。前向きに何かを終わらせないと始められないと。
フレデリックとして終わらせなかったものは?
康司
終わりには“ゼロ”というイメージがあると思うけど、想像を掻き立てるものがあると思うんですよ。ビョークの映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とかバッドエンドじゃないですか。悲しみのどん底に落とされたけど、観終えた後に小さな幸せに敏感になれる自分もいて。前作から次に行くために、音楽や生活全般を含めて“終わらせないと”というイメージだったんですよ。その感覚は一生自分の中に持ち続けなければいけない気持ちだなと。
今回はその気持ちを歌詞、楽曲に落とし込もうと?
康司
「オワラセナイト」は朝と夜の感じ、「DNAです」は昔の音楽を聴いて新しい音楽を鳴らす、繰り返しという意味合いが歌詞や音にも出てると思います。「どうにもこうにも」には、たくさん泣いてる人がいたらそれは全員が同じ気持ちという意味だから、そこから先に進めるんじゃないかなという気持ちを込めました。「愛の迷惑」は迷惑すぎる愛にありがとうという曲。迷惑をちゃんと愛と思えることは大事なんじゃないかと思って。なので、何かしら“終わらせないと”という意味とつながってるんですよ。それは改めて気付きました。
今作はサウンドも明るくて、抜けが良くなりましたね。
康司
そうですね。歌詞も現実的になったと言いましたが、伝えたいことが明確になったことが大きいですね。今のベストは出せたと思います。作り終えた時も新鮮でしたね。
それは新しいことにトライできたから?
康司
はい。また新しい自分たちが見えたし、絶対これはいいものになるなと。音も変わったし、知らないことをやるのは面白いですからね。
健司
歌に関してはメロディーが立つ曲が多いなと。そうなると、歌が重要になるんですよね。言葉をちゃんと伝えないとダメだし、熱く歌おうと意識した曲もありました。
康司
歌を聴いても、ひとつ殻を破った印象を受けますね。リズムもより深く話し合えた作品です。「セーターを脱がさないで」もそうですが、引き算も考えるようになりました。
赤頭
出るところと引くところが明確になりましたね。
康司
歌を大事にしたいからそうなったんやろうな。バックはカッコ良くないとダメだし、歌もちゃんと音に乗せないといけない。それは難しかったですね。そこで一番気持ち良いポイントを探そうと。
kaz.
全曲にいい歌詞といいメロディーがあって、それを聴きやすくするために、特にベースとドラムはシンプルにして、機械と生演奏の融合にも挑戦したんですよ。80年代前半のニューウェイブと80年代後半のクラブミュージックの間の音をイメージしました。結果的に歌もメロディーもイキイキしてるし、全7曲とも楽曲に色や艶が出たと思いますね。
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