【荒川ケンタウロス】何度聴いても新
しい発見がある深い作品を目指して
L→R 場前(Key)、楠本(Gu)、一戸(Vo)、土田(Ba)、尾越(Dr)
心に染みるメロディーに加え、大胆なバンドサウンドをアピールするメジャー1stフルアルバム『時をかける少年』。どこか懐かしくて、切なくて、でも胸が熱くなる曲の魅力はさらに磨きがかけられている。
取材:山口智男
前回お話を聞いた時、“100回聴いても飽きがこない、どの世代の人が聴いても心に残るメロディーを追求している”とおっしゃっていましたけど、今作ではそこに “心に染みる”という要素が加わったと思いました。
一戸
メロウな曲が多いせいか、自分の歌も今までで一番良いと思えるんですよ。とても良い作品になったという手応えはあります。声量なのか、肺活量なのかは分からないですけど、昔だったら歌えなかったかもしれないって曲が何曲かあって、今回、歌がカラフルになったんですよ。「重力列車」なんて1番は丸々ピアノだけ。しかも、難しいと思っていた8分の6拍子の歌を、ピアノと歌だけで聴かせたのはひとつ挑戦だったと思うし、それができたのは成長したところだと思います。
楠本
バンドに曲を作る人間が3人いるから、テーマは特に設けなかったんですけど、今回はストックに頼らず、新しい曲を出し合おうと決めて、締め切りを作って、みんなで持ち寄ったんです。それは今回、初めてやりました。
一戸
みんな頑張ったよね(笑)。
楠本
一戸が3曲、場前が5曲、僕が6曲作ったのかな。
そこから曲を選ぶにあたっては、どんなふうに?
一戸
核になる曲をまず決めて、そこから全体のバランスを考えながらでした。リード曲になった「dancedance or die」と「ティーティーウー」は最初から決まってたのかな。メジャーからの1stフルアルバムというタイミングで、変に勝負をかけるみたいに流行りに乗っかったサウンドにせずにメロウになったところがいいと思うんですよ。メジャー1stフルアルバムだからこそ、ちゃんと自分たちらしい作品を出すことに意味がある。そういうのは意識にあったかもしれないです。
今回、なぜこんなに心に染みるのかを考えてみたのですが、みなさんが心に大事にしているものがちゃんとあって、それを愛する気持ちや、前に進むためにはどこかに置いていかなきゃいけないという惜別の思いを、このアルバムでいろいろなかたちで表現しているからなんじゃないかって。
楠本
僕ら、そんなに若くないですからね(笑)。
一戸
この歳になると、別れとか悲しみとかってどうしても内包しているものだから。
楠本
だから、若者にはうけないんですよ(笑)。でも、そこを僕らは目指しているんですけど。
一戸
いや、若いファンもいるよ。そこは大丈夫だよ。
若い子たちにも背伸びして聴いてほしいですよね。
楠本
ちょっと難しすぎるのかもしれないですね(笑)。
一戸
そうかな。今回は以前よりももっとポップになったと思うけどね。歌詞に関しては。
歌詞もそうなんですけど、今回、バンドアンサンブルも前回より大胆になりましたね?
一戸
さっき言った「重力列車」は最初、作者の場前くんとメンバーの中のイメージが違ったんですよ。彼の中ではアコギをかき鳴らす感じだったんですけど、僕らはもっと聴かせる感じだと思ったんですよ。それでいろいろ試した結果、その食い違いがああいうダイナミックなアレンジになりました。
楠本
バンドならではの着地点ですよね。
一戸
「アーケード」もすごく面白くなったよね。ドラムが途中、消えちゃうところがあるんですけど、あれは(プロデューサーの)高野(勲)さんと(柏井)日向さんのアイデアでした。
楠本
場前くんが持ってきたデモが酷かったんですよ(笑)。1回聴いただけではどんな曲なのか分からない。
一戸
声が小さすぎてメロディーも分からないし(笑)。
楠本
“だって、恥ずかしいから”って(笑)。根本的に間違ってるんです。それでメンバー全員で彼の気持ちを汲みとって。
一戸
その結果、面白い曲になりましたね。
全体的に、より饒舌になったギターも印象的でした。歌の裏でもかなり弾いていますね。
楠本
弾きすぎる癖があるんで、歌の邪魔をしていると思って、これまでは逆に削ってきたんですよ。僕自身は全部の音が主役になり得ると思っているんですけど、聴く人はやっぱり歌をまず聴くじゃないですか。でも、バンドである以上、ただコード弾きしているだけではない、面白いギミックを加えて、何度聴いても新しい発見があるような深いものにしたい。だからこそ弾きすぎちゃうんですけど、今回、それがうまいところに落ち着いたんじゃないかな。
「セカンドステージ」はアルバムの最後を締め括るに相応しい壮大なアレンジになりましたね。
楠本
ダビーな感じにしたかったんですよ。最後、若干変えられそうになりましたけど、死守しました。大好きな曲になりました(笑)。いろいろなパートが出たり入ったりするダビーなアレンジが曲の世界観に見事マッチしたと思います。出来上がりを聴いた時は感動しました。
静かに流れるようなゆったりした曲なんですけど、実はバンドの演奏はめちゃめちゃ熱い。
楠本
そこがいいんですよ(笑)。僕のギターソロの裏で一戸が弾いているサイドギターもかなりカッコ良い。何回も聴いていると、そういういろいろな音が聴こえてくるんです。“この曲はこんな感じだったんだ!?”って聴いている人を驚かせたいんですよ。
アルバムを聴くかぎり、リリースツアーは熱いライヴになりそうで、今から楽しみです。
楠本
そうですね。その他、発売記念のインストアライヴもやります。
一戸
ライヴではこのアルバムを再現する以上の演奏をしなきゃと思ってます。
楠本
それはもう絶対ですよね。
アーティスト
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