【∞Z】強い意志、光、希望を感じら
れる一枚
L→R Kenji Sato(Ba)、ERIKA(Vo&Gu)、Shingo Katagiri(Dr)
東北を中心に活動中のフュージョンポップパワートリオバンド・∞Z(ゼロゼロゼット)が3枚目のミニアルバム『music γ』をリリースする。揺るがない自信で新しい道を切り開いていく、可能性に満ちた今作についてERIKA(Vo&Gu)に訊いた。
∞Zは東日本大震災後、地元である福島・仙台といった東北を中心に、ライヴをはじめボランティア活動まで幅広く行なっていますね。
震災前から自分たちの故郷である東北を盛り上げていきたい想いはありましたが、実際に自分たちも震災を体験して、地元で作る音楽で、東北の人に活力を与えたいという想いが強くなりました。自分たちの音楽が全国的に認められたらもっとみんなが東北に来てくれるんじゃないか…∞Zの活動を通してそうなったらいいなと思ってます。ボランティアに対してはボランティアと思っていなくて…でも、確実に福島や東北のために全国各地からさまざまなフィールドで活躍してる方々が毎月来てくれていますね。特に参加させてもらってる『LOVE FOR NIPPON』の活動や想いを福島の人にもっと知ってほしいし、関心を持ってほしい。私は音楽で参加させてもらって、その輪を広げられたらと思っています。活動を続けるごとにいろんな境遇の方に出会います。辛いことがあっても笑顔の人が多くて、人って強いなと思いました。だけど、そういう人たちを支えたいなと。音楽を拠り所にしてほしいという想いが強くなりました。
∞Zは“フュージョンポップパワートリオバンド”と例えられていますが、もともとバンドとしてやりたかったことは何だったのでしょうか?
始めは女性ギターヴォーカルの歌モノバンドだけど、みんなと同じことをしてたら面白くないなって。リズム隊のふたりが技術も音楽性もたくさんの引き出しがあるから、ただスタジオミュージシャンに徹してもらうというより、ふたりの個性ともちろん私の個性、3つの個性を最大限引き出せるバンドにしたかった。そうしたら自然にこうなりました(笑)。でも、なかなか今のスタイルに結び付けられなくて。前例がないので、そもそも“このバンドみたいになりたい!”っていう参考になり得るバンドがいないくて、本当にイチから手探りな感じでした。ただ、ライヴでインプロヴィゼーションを取り入れて、3人のソロを設けてからお客さんも喜んでくれて。毎回ライヴの演奏が違うところも楽しんでいますね。
3作目となる『music γ』の“γ”(ガンマ)はギリシャ語アルファベットで3番目を示す数字で、過去2枚にも“α”(アルファ)“β”(ベータ)と付けていますが、最初にこのような名前を名付けようと思った理由は何だったのでしょうか?
なぜかはまだお話できませんが…∞Zの作品は、ギリシャ文字でタイトルを付けると決まっているんです。
∞Zの楽曲はインストゥルメンタルでも楽しめるような幅広いサウンドにERIKAさんの歌が乗ることで、さらにキャッチーで耳に残りやすい楽曲になっていますね。
感じ取っていただいてありがとうございます! アレンジにはこだわってます。特に、ベース、ドラムが面白いことをしてくれるので、ふたりのアイデアを聞きながら曲のインスピレーションに合わせてギターも入れますね。いつも新しいことや、“このアレンジはなかなかないなぁ〜”“斬新でウケる!”みたいな、演奏は難しいけど“こりゃ楽しいわ!”っていうのを探しています。アレンジが難解に聴こえてもメロディーがポップでキャッチーなのがミソなんですよ。私がメロディアス好きなので。一緒に歌ってほしいし。
楽曲の制作はメンバー3人それぞれが行なっていますが、バンドでのすり合わせやアレンジの際はどのように進行しているのですか?
プチ遠距離バンド(ベースが仙台在住)なのでデモをデータであらかじめ送り、リハで合わせて、スタジオに入るよりもライヴが多い時は車で移動中に話し合ったり、合わせられる時間に合わせる感じです。
3作目となるミニアルバムは、どのような一枚にしようと考えていましたか?
正直なところ、1stも2ndも音楽的に不完全燃焼というか…もっとできるんじゃないかと思いました。もちろん、出来上がった当時は達成感やいいものができたとは思っていましたが、長い目で見た時にまだまだスタートラインに立てていないんじゃないかなって。3rdは、3人とも“これだ!”って思えるものが作りたかったくて、今年の春くらいから制作に取り掛かりました。真剣に3人で何度も話し合って、“こういうのが作りたいよね”っていうのが固まってきて、内容はポップだけど、アレンジが複雑だったりシンプルだったり。いろんなルーツ音楽の要素が感じられる、ジャンルレスというか、とにかく聴いていて飽きない作品にしようと思いました。
選曲はどのように?
他にも候補曲はありましたが、もともとライヴでインプロを取り入れていて、ファンから音源化を熱望されていた「MD」をスタジオ盤で収録しました。「Star Geo」「boat」はもともとあって、「γ」と「フィルター」は書き下ろしです。「くちびるにこの歌を」はリアレンジしました。
1曲目の「γ」はロックテイストな曲ですね。
タイトル曲が欲しかったので、今の自分たちの想いが鮮明に込められた一曲を作ろうと思いました。この作品で勢い付けていきたいという気持ちもあり、疾走感のあるロックになりました。間奏もなかなかユニークな展開で、スタジオ盤はドラムソロからの弦楽器のユニゾン、ライヴバージョンはどうなるのかも聴きどころです。
リード曲の「フィルター」は“雨”という単語が出てきますが、歌詞のイメージと反してさわやかで軽やかな一曲でした。
この曲では憂鬱な想いを雨に例えてます。心情を天気に置き換えて、辛いことはずっとは続かない、必ず気持ちが晴れる時、報われる時が来るから、強い心を持ってほしいという歌です。歌がないところで出てくる7拍子のリフとフュージョン系アレンジも聴きどころですね。
「MD」は唯一の全編英語詞ですが、その理由は?
世界に向けて、東北発の∞Zのダンスチューンを聴いてほしいと思ったので英詞にしました。流行りの4つ打ちではなく、∞Zだからこそできる、うねりがあるディスコビートの効いたアレンジで。音楽の力、魔力みたいに人を惹きつける力を感じられる楽曲にしたくて作りました。ベースのリフがキャッチーでグルービーなので注目です。
「Star Geo」はそれぞれのソロパートがあったりとサウンド面でも楽しめる一曲でした。
歌詞が切ない曲なので、その対比で情熱的なソロパートを入れたり、星のきらめきを連想させるようなギターやベースのフレーズを取り入れました。何度も繰り返し聴いて、歌詞の意味やメッセージ、アレンジも楽しめるような曲になりました。
他にも、どこか哀愁漂う「boat」、歌が際立った「くちびるにこの歌を」など、ミディアムなテンポで聴かせる楽曲もあったりと多彩な楽曲が収録された一枚になりましたね。
強い意志、光、希望を感じられる一枚になりました。これからもっと想いをかたちにして、その勢いや姿勢をファンやリスナーに感じてもらいたい…そんな想いが込められてます。すごく面白いものになりました。近年こういうポップスはなかったんじゃないかなとも思います。万人受けするアレンジではないですが、3人の個性が凝縮されています。この作品をきっかけに、よりステップアップして、挑戦を続けて、新しいものを開拓していきたいです。
今作の中で特に思い入れのある曲を教えてください。
1曲目の「γ」ですね。3人で一緒にセッションしながら作り上げていきました。メッセージも強いものになったし、幻想的なイントロに、2番のBメロの4ビートから間奏にいって大サビ…とにかく展開がドラマチックですごく画期的な4分です。ライヴではスタジオ盤とは違ったアレンジも楽しみにしてほしいです。
リリース後はどのような活動を予定していますか?
リリース後には全国ツアーが始まります。ぜひ会いに来てライヴも観てほしいですし、たくさんの人に会える機会ができて嬉しいですね。これからも自分たちの個性や無限の可能性を信じてやりたいように音楽をやって、日本の音楽シーンに刺激を与えるバンドになりたいです。流行りと逆行する我が道を行くバンドですが(笑)、“∞Z”という新しいジャンルの音楽を確立させていきたいです。
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