【忘れらんねえよ】やっと一人前にな
れた気がして、その成長記が今作にあ
る
デビュー5周年を迎えた忘れらんねえよが、メンバー脱退を経験して生まれた新曲「別れの歌」で始まる、新曲含む全22曲収録の初のベスト盤を完成させた。“この5年間で自信や覚悟が付いた”と語る柴田隆浩(Vo&Gu)。自信にあふれた新曲たち、そこに至るまでの過去の名曲たちに震えろ!
取材:フジジュン
デビュー5年目にして、初のベスト盤リリースですね!
はい。今回はレコード会社の方から話をいただいて、新曲も出したかったんで、“じゃあ、出しましょう”という感じで。バンドにとって大きな節目だぜ!みたいな感じではないんですよ。
結果として、大きな節目にはなってますけどね。
そうですね。第二章の幕開けでもあるから1曲目は新曲にしたくて、もっと言えば“別れの歌”にしたくて。今まで僕らを応援してくれた人に絶対聴かせたかったし、いつまでも残る普遍的な曲を作りたくて…この曲を作りました。
けじめとしてね。ひとつの青春との決別も告げてますし。
だから、エモいですよね。創作ゼロですから! バンドに本気で人生突っ込んで、後戻りできなくなったバンドマンじゃないと書けない歌詞になったと思います。
ベスト盤を聴いても、追い詰められて本音がポロッと出た曲にグッとくるし、それがバンドの歴史を作っているなと。
ははは。でも、そうですね、「別れの歌」も今まで作ってきた曲があったからこそだと思うので。とにかくいろんなことをやってきたし、そのたびに追い詰められてたし。それでやっと一人前になれた気がして、その成長記がベスト盤にあると思うんです。青い頃には青い頃の良さがあって、昔の曲は歌も演奏も今より劣ってるから、聴くのが恥ずかしかったんですけど、遡って聴いてみたら普通に面白いし、“このバンドいいじゃん!”と思えた。だから、作業はすごく面白かったですね。
新曲3曲は今までと異なるスケール感もあって、忘れらんねえよのこれからを明るく指し示していると思いました。
今は自信があるというか、自分を信じるしかねぇなと思うようになってきたんです。それまでは人気のあるバンドが羨ましいし、妬ましいと思ったけど、“もうどうでもいいや!”って。今後の人生、どうせ死ぬまで音楽に支配されると思った時、“周りのバンドがどうとか関係ねぇ! それより自分の音楽人生をいかにカッコ良く、幸せに送るかだ! ”と思ったんです。売れた売れない以外の軸で音楽と向き合わないと、キツイだけだって。そこでいい音楽を作ることだけを考えようと思ったし、俺が死んだ後も残る音楽を作ることができるのなら、人生賭ける意味があるだろうし。
実際、今回このアルバムを聴いて改めて思ったのですが、世の中にはこのバンドを必要としている人が多くいると思うんですよ。
そこはうぬぼれじゃなくて、絶対にいると思ってるし、自分の作った楽曲への信頼がある。「犬にしてくれ」ができた時、俺にしか書けない曲が書けてるという手応えもあったし。ファンタジーじゃなくて、リアルなドキュメントを書けばいいんだと分かったんです。「別れの歌」は酒田(2015年に脱退した元ドラマーの酒田耕慈)っぽい人に書いたんじゃなくて、酒田に向けて手紙を書いた曲なんですけど、出来上がった瞬間に普遍にタッチした気がしたんです。「バレーコードは握れない」はウチの母ちゃんに書いてるし、「世界であんたはいちばん綺麗だ」はTwitterで見つけた不器用で迷ってる女の子に書いた曲だし。ということは、今までの人生で人に対して思った気持ちを丁寧に紐解いて書けばいい歌詞が書けるんだ!って。
そういうふうに書きたいことが明確だからか、サウンドもすごいシンプルに説得力が生まれていますよね。
サウンドはね、単純にスキルが上がってます。あと、いいバランスが分かってきて。サポートのマシータさんのお陰もあるんですけど、妥協せずに誠実に音楽を作れているんです。もちろん、酒田が一生懸命叩いていたエモーションも最高で、それもこうしてベストとしてかたちに残せたし、良かったなって思います。
ベスト盤の選曲の基準は?
新しいお客さんのことも意識した代表曲ですね。これ以外ないと言えるベストだと思います。この5年間で自信や覚悟が付いたなというのも改めて思ったし。
忘れらんねえよのこれからは、すごく明るそうですね。
はい。このスタイルで笑える感じのこともやりたいし、やりたいこともいろいろ増えそうな気がしますね。今、『ツレ伝』ツアーの真っ最中なんですけど、ライヴもすごくいいし、これがずっと続けばいいなと思ってて。音楽とすごい気持ち良く向き合えてるし、お客さんともいい関係が作れてるし、規模もどんどん大きくなっているので。今、バンド人生の中でもかなり幸せな時期なのかもしれない。
ベスト盤収録の過去楽曲の中で、自分の中でのターニングポイントとなった曲はありますか?
やっぱり、「この高鳴りをなんと呼ぶ」ですね。この曲がバンドの状況も変えたし、その後の苦しみも生みました(笑)。そこからは「この高鳴りをなんと呼ぶ」を超える曲を作り続ける今までだったと思っていて、「別れの歌」でやっと超えられたと思ってます。
今になったら、あの曲ができた理由、超えられなかった理由って自分で分析できますか?
まぐれだったと思います。狙って作ったわけじゃなくて、たまたま会心の一撃が出た曲がお客さんの心の奥にタッチしたんだと思います。みんなが好きな曲がいい曲なんだと思うし、ベスト盤ではそういう曲を自然と選んでいました。
5年目を迎えてベスト盤が出る今、柴田くんの気持ちもバンドの状態や状況も、示し合わせたかのようにいい状況に向かっているし、ここから何かが変わるような予感がしますね。
変わりつつあるし、変わればいいですね。もうキツい思いしたくないし、自らキツいほうに突っ込んでいく傾向があるから。ここからは素直に泣いたり笑ったり怒ったりして、今みたいに幸せに音楽できる状況が続くといいなぁ(笑)。
アーティスト
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