【Halo at 四畳半】寸分の狂いもない
バランスで立ち上がることができた作
品
L→R 齋木孝平(Gu&Cho)、渡井翔汰(Vo&Gu)、白井將人(Ba)、片山 僚(Dr&Cho)
3月9日にリリースされる2ndミニアルバム『innocentpia』は“前作よりも深化した作品に”という想いから、それぞれ違った物語性を持った全8曲を収録。現在のバンドを等身大に示し、バンドの今後への期待をさらに高めた今作について訊いた。
取材:高良美咲
2015年7月に初の全国流通盤ミニアルバム『APOGEE』をリリースしましたが、聴いた方からの反響やライヴでの反応はどうでしたか?
渡井
初めての全国流通ということもあり、たくさんの反響がありました。多くの出会いがあって、僕ら自身もその反響やライヴ会場で会うたくさんの人たちと一緒に成長できた気がしています。
白井
初めての全国流通盤ということもあって、昔から知ってくれてる人は喜んでくれました。間口の広いアルバムだったので、『APOGEE』で僕らを聴いてくれるようになった人もとても増えましたし。いろんな曲が入っているので、ライヴでどの曲をやってもフロアーに見える景色が違うのでとても楽しいです。
改めて振り返ると、どのような一枚になったと思いますか?
渡井
まだ1年も経たないのにはるか昔に感じます。これまで見てきてくれた人たちには共に前へ進む意志を伝え、新たな出会いもたくさん生んでくれた作品になったと思います。
白井
時間のない中で必死に作ったので、作った当初は全然分からなかったのですが、歌も演奏も、全体を通してバランスのとれてるとてもいい作品だなって思います。あと、音が迫力もあって、でも聴き疲れしない、絶妙な音像になってると思います。胸を張って“Halo at 四畳半入門”にオススメできる作品です。
斎木
Halo at 四畳半がどういうバンドなのかを分かりやすく提示できたアルバムで、さらに次の作品を期待してもらえるようなアルバムになったと思います。
そして、今回ミニアルバム『innocentpia』がリリースされますが、今作の1曲目「ep」は《ここに大切な私の旅を記す》と始まりを告げるプロローグのような曲ですね。アルバムを作る上で、何か構想があったのですか?
渡井
アルバムを作ることを決めた段階では“前作よりも深化した作品にしたい”という想いだけが漠然とありましたね。結果として、“Halo at 四畳半らしさ”というものをさらに深めることができたと思っています。数曲揃ってきた段階で楽曲群を振り返ると、“旅”のイメージが浮かび上がり、「ep」に関してはレコーディング中に歌詞を書き、収録しました。抜粋していただいた歌詞が肝になっており、1曲目にプロローグとして聴くと“旅をしながら記していく”ようにとれる歌詞なんですが、実は8曲目「怪獣とまぼろしの国」の最後に書き加えるようなかたちで歌詞を書いたので、“旅を終えて、回想しながら記している”作品なんです。なので、エピローグの頭2文字を取り“ep”というタイトルを付けました。
「春が終わる前に」は奥行きを感じるサウンドで、キャッチーなメロディーと哲学的な歌詞が耳に残りますね。
渡井
バンド名に込めた意味としても掲げているのですが、“現実と空想の隙間”を描く楽曲、空想のストーリーの中にひとつ明確なメッセージをはらんだ楽曲を書き続けたいと思っているんですね。「春が終わる前に」は抱えた苦悩や心の葛藤をどこかに逃がしてやりたい、しかしその実、やり場なんてどこにもない気もしていて、八方塞がりになる。それでも愚直に探し続けた青春の日々を歌っています。
「ペイパームーン」はソリッドだったりメロディアスだったりいろんな表情を魅せるギターが聴きどころですね。
斎木
斎この曲は僕が大元となるものを作ってバンドに持って行った曲なんですが、Aメロのギターのアルペジオの絡みを作って、そこからだんだんと広げていきました。僕自身そういう曲が好きなのもあって、静と動のバランスであったり、複雑なリズムのせめぎ合いであったりをバンドで産み出すような曲に挑戦したいと思ったのがきっかけで作りました。複雑な箇所がありつつも、サビは突き抜けていくところがうまく組み立てられたと思います。
最後を締め括る「怪獣とまぼろしの国」は「ep」とリンクした歌詞になっていますね。
渡井
完成したのは終盤だったので、軸とは違うかもしれませんが、「怪獣とまぼろしの国」が完成したことによってアルバムの全貌がようやく明確に見えた気がしました。この作品を象徴する楽曲になったと思います。この曲は前作『APOGEE』の制作期間からすでに原形があり、今作でようやくかたちになったんです。もともとは東京に出て変わってしまった仲間のことを歌った曲だったのですが、今作の制作中にこの曲の存在を思い出して歌詞を読み返したところ、もっと大きなスケールを持った曲になるような気がして、歌詞を書き直しました。結果として“時間”を問う歌詞、楽曲に生まれ変わり、あの時の勘は間違ってなかったなぁと思っています。
制作の上で変化を遂げた曲はありますか?
白井
「アストレイ」は初めてメロディーを何パターンか出してもらったり、曲も何回も壊しながら作ったので、当初とは全然違うものになってますね。
斎木
実はこの曲が一番最後に完成した曲で、苦労も1、2を争う曲でした。構想の段階からアルバムの他の曲とのバランスを考慮したりして…でも、それを考えすぎて曲に求められていない方向に進んでしまってもいけない、と試行錯誤をしましたね。最初はシンプルでいまいち厚みに欠けていましたが、メロディーを変えたりギターソロを入れてみたりして、曲を厚くする作業を加えていきました。特にギターソロのフレーズなどはレコーディング前日まで悩み倒しましたね。最終的にはとてもお気に入りの曲になりました。歌詞がとても泣けます。
渡井
あと、「春が終わる前に」が当初からもっとも紆余曲折を経て完成した楽曲だと思います。“やりたいこと”と“できること”、そして“この曲が求めるもの”を模索して何度も構成を組み替え、メンバーと話し合いながら今のかたちへと変わっていきました。
それぞれ違った物語性を持った全8曲が収録されましたね。
渡井
今作は自身の内面や葛藤をテーマに書いた楽曲が多かったのですが、完成してみると外を向いた広がりのある楽曲たちに仕上がったと思っています。それぞれの生活に馴染んで、それぞれのテーマソングになってくれたら嬉しいです。
斎木
それぞれの曲が個性を持っていて一見バラバラに感じますが、聴き終わって1曲目に戻ってきた時に完成するというか、すっと理解できるようなアルバムだと思います。
中でも思い入れのある楽曲は?
白井
「春が終わる前に」は一番制作で時間がかかったので、苦しい思い出も込みで、出来上がった時の達成感がすごかったのでとても思い入れの強い曲です。
斎木
先にも挙げてしまいましたが、同じ理由で「アストレイ」です(笑)。
渡井
本来、8曲収録のアルバムであれば10数曲を用意して、そこから選考して収録するのが一般的に望ましいと思いますが、それに対して今作のために僕らが書き上げたのは8曲。つまり、制作した全てを収録しました。しかし、このアルバムはこの8曲それぞれが呼応し合って成り立っているような、寸分の狂いもないバランスで立ち上がることができた作品です。建前でも何でもなく、心から8曲全てを愛しく思っていますね。
聴きどころや、注目してほしいところを挙げるなら?
白井
ベースは「トロイメライ」のサビのフレーズが気に入ってるので、ぜひ注目して聴いてほしいですね。あとは、全体の流れがとても美しいので1回頭から通して聴いてもらいたいです。
斎木
全部自信作なので、ここ!と選ぶのは難しいですが…とにかくアルバムを1周聴いて、もう一度1曲目の「ep」を聴いてもらいたいです。そこからは無限リピート確定だと思います。
渡井
雰囲気の違う楽曲が並ぶので好みが分かれると思います。それぞれのベストソングを見つけて、自分なりの解釈で受け取ってくれたら嬉しいです。
そんな今作に“innocentpia”というタイトルを名付けた理由は?
渡井
このタイトルは造語であり、「春が終わる前に」で歌われる“架空の国”や「怪獣とまぼろしの国」で歌われる“その国”に名前を付けてやろうと考えたものです。全てを許容してくれる理想の場所を意味しています。
作り終えたことで、何か得たものや改めて発見できたことはありましたか?
渡井
次回作へのプレッシャー、まだまだやりたいことが尽きないこと、Halo at 四畳半らしさ、ですね。
白井
楽曲の幅などが前作よりも大きく広がったので、Halo at 四畳半のまた新しい一面を見ることができました。
斎木
個人的には、新しい音使いだったりフレージングに挑戦できたことがひとつ。もうひとつ、どんな曲を作っても渡井の歌が乗ると結果いい曲ができるということを改めて実感しました。この先の楽曲でまた新しい挑戦をすることができそうです。
リリース後には全国ツアー『「innocentpia」Release TOUR“まぼろしの国の作り方”』を行ないますが、どのようなツアーにしたいですか?
白井
新しい曲たちをライヴでやって、お客さんの気持ちを曲に詰めていけたらいいなと思います。今回のツアーは初めてだったり、今まであまり共演してこなかったバンドとも共演します。
斎木
前回のツアーで一緒に回ったのがほとんど音楽の方向性が近いバンドだったのですが、今回は新しい対バンの組み合わせがあったりして、どういう化学反応が起きるのかが楽しみです。
片山
今回も全7本と少なめの本数なので、ライヴ一本一本を大事に楽しんでいきたいですね。その上でツアーファイナルワンマンに向けて、曲と一緒に成長していけたらなと思っています。あとは、ツアー各所の地方飯がとても楽しみです!
渡井
前作でも強く感じたのですが、ステージで演奏することによって楽曲のまた違った一面を垣間見れたり、会場でお客さんと出会うことで楽曲自体が深化する瞬間があったりしたので、今回もそれが楽しみです。
ツアーファイナルとなる5月14日(土)の渋谷WWWは自身初となるワンマンライヴですね。
白井
初めてのワンマンライヴなのでまだ全然分かりませんが、特別な日になる予感が今からしてます。ワンマンでしかできないこともたくさんできたらいいなと思います。
斎木
ワンマン自体初めての経験なので、自分自身想像が付かないですが、今からとてもワクワクしています。後にも先にも応援してくれるリスナーのお陰でできるライヴなので、ワンマンもお客さんと一緒に作り上げられたらなと思います。また、最近新しいギターを導入したので、新しいサウンドに磨きをかけていきたいと思います!
片山
めっちゃ楽しみです! 人生初のワンマンでもありますし、今回のツアーで新譜の曲がどういうキャラクターになっているかとか、ただただワクワクしています!
渡井
人生で初めてのワンマンライヴであり、親友のワンマンライヴを観た場所でもあり、さまざまな思いがあります。今言えることは、これまでの感謝とこれからの展望を伝えられるライヴにしたいと思っています。
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