【WHITE ASH】俺らスマートになって
ねぇか?って
写真左上より時計回り、のび太(Vo&Gu)、山さん(Gu)、彩(Ba)、剛(Dr)
WHITE ASHが4thフルアルバム『SPADE 3』を完成させた。前作『THE DARK BLACK GROOVE』で、バンドがステップアップするグルーブを確立させた彼らが次に表現したのは、ジャーンと鳴ったらビビッと反応できる、衝動的なカッコ良さ。痛快作だ!
取材:高橋美穂
タイトルの“SPADE 3”が絶妙ですよね。地味に見えるスペードの3だけれど、大富豪ではジョーカーをも凌ぐ最強カードになるっていう…この意味で合っていますか?
のび太
大正解です(笑)。去年シングル「Insight / Ledger」をリリースしましたけど、「Insight」はアニメ(『ガッチャマンクラウズ インサイト』)の主題歌として、「Ledger」は自分たちが作りたい曲として、映画『ダークナイト』のバットマンの敵役のジョーカーをモチーフに作ったんですね。「Ledger」はアルバムに入れたいと思っていたから、ジョーカーよりも強いアルバムにしたいと思っていたんです。そんな思いが頭の隅にありつつ、ツアー初日の札幌に行くためにフェリーで移動して…電波もないから、マネージャーがトランプを用意してくれたんですけど、出航してから6時間くらい大富豪をやり続けたんですよ。大富豪はジョーカーより強いのがスペードの3で。その時に、いいなと思って。しかも、普通の3って一番弱いじゃないですか。でも、ギリギリで強さを発揮する一発逆転感がロックな感じがして。
でも、前作『THE DARK BLACK GROOVE』が、WHITE ASHがずっと突き詰めてきたグルーブをかたちにできた決定盤だったから、今作は悩みませんでしたか?
のび太
そうでもなかったです。ただ、前作のリリースツアーは大きい3会場をやって、追加公演では初めてワンマンをした3カ所のライヴハウスでやって、計6カ所だったんですけど、ライヴハウスで『THE DARK BLACK GROOVE』の曲を演奏するにあたって、削った曲もあったんです。それは最後の「Gifted」だったんですけど、大きな場所で鳴らすイメージがあったので、ライヴハウスでやると本来の良さが出ないんじゃないかと。でも、違和感があったというか。ロックバンドって、どんな場所でも楽器があれば鳴らして見せ付けるみたいな姿勢が自然なのに、ライヴでやれない曲があるなんて、俺らスマートになってねぇか?って。だから、『THE DARK BLACK GROOVE』で欲求が満たされたこともあって、ちゃんとライヴハウスで演奏できる、本来のロックバンドらしい衝動的なものを作りたかったんです。
確かにカッコ良い汚さというか、グランジっぽいですね。
のび太
カート・コバーンのドキュメント『モンタージュ・オブ・ヘック』を観たことも、今作の下地になっています。カートって自分に対して正直で、音楽も衝動的っていうか。いい意味でラフだし、粗削りでも誰が見てもカッコ良いっていう感じは、ロック特有のものだなって思って。
肩の力を抜いて作れたわけですね。
のび太
そうですね。「Insight」で主題歌として相応しいものを作りたくて、『THE DARK BLACK GROOVE』とは違った勢いのあるものにしたけれど、受け入れてもらえたし、なおかつ昔の勢いのある感じに戻ったわけじゃなく、前作を経過した上での疾走感を提示したので、純粋に突っ走っていくものを作ってもいいなって。
山さん
勢いでやると、昔は他との感じも意識していましたけど、このタイミングでは勢いでやっても自分らしさが出せるっていうか。超自由にやれています。前回は自分の中では挑戦的なところがあったんです。ギターとしてグルーブをどう出すかって。でも、今回はとにかくロックな曲をっていうところから制限されずに作れたので、それぞれがロックだと思うものを持ち合わせて、WHITE ASHなりのロックなアルバムが作れたと思います。ギターもリフが多めで。
彩さんも、自分のロック観を反映できたと思います?
彩
そうですね。前作はテーマ性があって作り込んだんで、今回は何も考えず、あるがままやり抜きました。肩の力が抜けたロックな感じを出せたかな。前作ともガラッと違うじゃないですか。前作は内に向かうというか、自分たちの中のものを突き詰めましたけど、今回はライヴハウスを意識して、みんなと体感したい曲が多いので、外に向かうアルバムになったかな。史上最長のツアーで狭いところも細かく回るので、熱さを伝えられたらいいな。暑苦しいぐらい(笑)。
剛さんはグルーブを司るパートですが、どうでした?
剛
やっぱ前作の経験値は大きかったです。グルーブを自分の中で突き詰めて、プレイスタイルも研究したので、その後だから自信があったし、気楽にできました。
あと、自信がそうさせているのか、メッセージが聴こえる歌詞も増えたように思います。「Spade Three」とか。
のび太
確かに。でも、もともとRed Bull Studios Tokyoに『SPADE 3』はサポートしてもらっているんで、「Spade Three」はそのテーマソングなんです。
この熱い歌詞には、そういう背景があったのですね。
のび太
そうですね。僕ら、タイアップに強いんですよ。
山さん
自分で言う? (笑)
(笑)。インスピレーションを受けて、新たな表現を引き出されることが多いんでしょうね。
のび太
そうなんです。求められたものにも応えたいので。一緒にやりましょうってなった時に、意味があるもののほうがいいし。デビューした時って、何か分かんないけどカッコ良いっていう感覚を大事にしていたんですけど、何が自分たちらしいのか考えた時に、歌詞に意味を持たせると自分たちらしさが揺らぐのかって言ったら、そうじゃないことに気付いたんです。この4人ならカッコ良ければ何でもありになるんだなって、活動を通じて分かってきたので。
そういう意味では、今作は反射神経でカッコ良い!って言えるような仕上がりになっていると思います。
のび太
そう、それが最大級の褒め言葉なんで。あれがどうでこうでだからカッコ良いっていう理屈じゃなく、最初から結論にいく感じが、僕らとしては一番嬉しいですね。
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