【モノブライト】街と人間模様を切り
取った大人味のアルバム

L→R 出口博之(Ba)、桃野陽介(Vo)、松下省伍(Gu)

約2年半振りとなるアルバム『Bright Ground Music』。都会で暮らしながら抱くさまざまな想い、日常の風景を鮮やかに反映した、本作についてメンバー3人が語る!
取材:田中 大

いろいろな人々の日常が描かれているアルバムですね。

桃野

こういう感じの人たち、ファミレスに来ていましたよ。僕はいつもファミレスで歌詞を書いているんですけど、本当にいろんな人がたくさんいるんです。“何でいるんだろう?”っていう人。

松下

“あの人、毎日いるな”とか? でも、桃野さんもそう思われている可能性があるのでは?

桃野

そうかも。一番怪しまれているかな?  “あの人、毎日パソコン開いて何やってるんだろう?”って(笑)。

(笑)。「ファミレス」という曲も収録されていますが。

桃野

はい。アルバムの最後が「ファミレス」ですね。東京に住むようになってから、ファミレスで過ごしながら人間ウォッチングをする時間が増えたんですけど、勝手にそれぞれの人のドラマを想像しているんです。そういう想像を歌にしたいっていうのは、今回ありましたね。

善と悪、真実と嘘の基準は絶対的なものがあるわけではなく、自分で決めるしかないっていう視点も反映されていますよね。例えば「HELLO」もそういう曲じゃないですか。

桃野

当事者じゃないと分からないものっていうのがすごくあると思うんです。周りから見れば不純なのかもしれないけど、そこに懸ける熱いものがあるならば、それは当人にとっての正解なのかなと。

「MOTHER」もそうですよね。2番目に好きな人と結婚した主人公の母親は、他人から見たら嘘を選んだのかもしれないですけど、本人にとっては正解だったみたいだし。

桃野

僕、子供の頃に“お父さんはタイプじゃない”ってずっと母親から聞かされていて(笑)。なぜ結婚したのか不思議だったんですけど、自分が大人になってみると“いい距離感ってあるんだな”っていうのを感じるんですよね。1番の人だと近すぎてダメだっていう感覚もあるなと。こういうこと思うんだから、僕も大人になったんだなぁと(笑)。

出口

それは僕らも感じましたよ。描く視点が今までと全然違うアルバムでもありますね。

自分のことを歌われたかのようなドキッとする感覚を、いろいろ味わえるアルバムだと思います。

桃野

このアルバムは“これ歌われたら嫌だろうな。みんないい奴っていうわけでもないんでしょ?”っていうところもある大人味だと思います(笑)。でも、それが共感につながる部分でもあるんじゃないですかね。

松下

10代くらいの人には、大人になった時に“あの曲で歌ってたのは、こういうことだったのか!?”ってなる瞬間がいろいろあるかもしれないですよ。

桃野

成長する中で、いずれ共感するというアルバムかも(笑)。どの曲にもいつか自分に当てはまる部分があるんじゃないですかね。だから、占いみたいなアルバムでもあるのかも。12星座のように、どれかしらに該当するんじゃないかという。

好きな曲を話し合うと、その人の現在がうかがえるかも。

出口

あぁ、「HELLO」の人なんだなとか(笑)。

松下

この人、「こころ」さんなのか…とか(笑)。

出口

そう言えば、「こころ」は古くからある曲なんですよ。

桃野

デモは2007年くらいからあるので。なかなかアレンジが定まらなくて、今回やっとかたちにすることができました。

アルバムの前半はドキッとさせられる視点の曲が中心で、インストの「TOWER(instrumental)」以降が、穏やかなトーンの曲が並んでいる構成なのも気持ち良いポイントです。

桃野

後味が良いものにしたいなと。後半は分かりやすく、誰が聴いてもポジティブな曲ですね。

「冬、今日、タワー」は東京タワーが立っている冬の街で繰り広げられるさまざまな人間模様が凝縮されていて、今作の象徴的な曲だと思いました。

桃野

北海道出身なのに冬の歌を実は作ったことがなかったんです。冬があまりに日常すぎたからなんでしょうけど。東京に来て雪が降った時の喜びとかを感じるようになったので、ようやく作ることができた歌ですね。東京に来てがむしゃらにやっていると周りが見えなくなる感じが僕はあったんですけど、こういう歌があるとホッとできるのかなと。

今回のアルバム、サウンドは全体的に90年代以降のUKロック的なテイストを感じるのですが、描かれている世界は東京のイメージがすごく浮かぶのも独特ですよ。

桃野

昭和からあるフォークミュージックって、僕は都会の音楽だと思っていたんですよ。田舎だとめまぐるしく変わる日々というのを感じられないので、そういうものはなかなか生まれなくて。そういう点でこのアルバムは、東京とかフォークミュージックっていう感じなんだと思います。

ライヴも楽しくなりそうですね。「ショートホープ」はライヴですごくカッコ良くなるんじゃないでしょうか?

出口

ライヴでどう表現するのか準備を進めている段階ですけど、やりたいことややれることが増えたので、みなさんに驚いていただけるものができるんじゃないかと思っています。

去年、サポートのドラム、キーボード、ホーンが入った8人編成でやりましたけど、今度のワンマンは?

桃野

その編成でやる予定です。大所帯だと曲によって編成を変えることができるので。今回は、日常を描いたアルバムなので、音に関しては非日常なかたちでやったら、ライヴの面白さを引き出せるんじゃないかなと考えています。ぜひライヴでも聴いてほしいです。

『Bright Ground Music』

  • 『Bright Ground Music』
    ASCU-2016
    2016.04.20
    2916円

モノブライト

モノブライト:2006年に北海道・札幌の専門学校時代の同級生で結成。UKロックシーンを背景にした、感情と刹那がたたずむ音像は桃野陽介というシンガーソングライターの手によって、ひねくれポップロックへと変遷していく。その象徴とも言えるシングル「未完成ライオット」で07年7月にメジャーデビュー。15年6月、結成当初からのメンバーが脱退し新体制に注目が集まる中、12月には大方の予想をポジティブに裏切る8人編成で登場し、再びバンド界隈を音楽的サプライズで沸かせる。また、アニメ『ぼのぼの』(フジテレビ系)の主題歌「bonobonoする」でも話題に。

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