【BONNIE PINK】初期の3作品が初のリ
マスターで再発!

デビュー20周年アニバーサリー企画として、BONNIE PINKの初期3作品『Blue Jam』『Heaven’s Kitchen』『evil and flowers』がリマスタリングされ、紙ジャケUHQ-CDと初のアナログLPで再発。瑞々しい感性とオリジナリティーによって今も輝き続けるその楽曲群を、良質なサウンドで味わってほしい。
文:内本順一

BONNIE PINKのデビュー20周年アニバーサリー企画として、ポニーキャニオン時代のオリジナルアルバム3作品が初めてリマスタリングされ、紙ジャケで再発。同時にアナログLPも発売されることになった。1995年9月に発売された記念すべきデビュー作『Blue Jam』、1997年5月に発売されたカラフルな2ndアルバム『Heaven’s Kitchen』、1998年4月に発売された傑作3rdアルバム『evil and flowers』、この3枚だ。それぞれの内容について簡単に説明していこう。

デビュー作の『Blue Jam』はBONNIEが京都に住んで、大学に通いながら作った全8曲のアルバム。青い衝動を感じさせる彼女の歌いっぷりがまず印象的だ。それは抑制よりも感情を爆発させるほうに傾いた歌い方で、例えば「Freak」の終盤にはエキセントリックとも言えるような裏声表現が出てきたりする。プロデュースを井出靖が担当し、ルースターズの井上富雄、池畑潤二、下山淳や、元ORIGINAL LOVEのキハラ龍太郎らが演奏。当時彼女が好きでよく聴いていたレニー・クラヴィッツからの影響が濃く表れているファンク傾向のロック曲「Scarecrow」、フリーソウル風味の「Too Young To Stop Loving」、クリスマスになると聴きたくなる切ないデビュー曲「オレンジ」など多様なタイプの楽曲を収録。

そのデビュー作から1年8カ月を経て発表されたのが2ndアルバム『Heaven’s Kitchen』で、表題曲はシングルで先行リリースされて大ヒット。BONNIEの代表曲となった。プロデュースに当時ノリにノッていたトーレ・ヨハンソンが迎えられ、スウェーデンで制作されたこのアルバムで、BONNIEの歌唱表現力は著しくアップ。パワフルに歌ったり、甘い声で歌ったり、切なさを滲ませたりと、楽曲の向きによって声の出し方を変化させつつ表情豊かな歌を聴かせている。「Heaven’s Kitchen」と同様のスケール感を有している「Do you crash?」、アニメ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』のエンディングテーマとなった軽やかなポップソング「It’s gonna rain!」などのシングル曲もいいが、映像喚起力の強い「ほほえみの糧」「No One Like You」なども印象に残る。

そんな『Heaven’s Kitchen』は全体的にも明るくポップなトーンだったが、そこから1年を経て発表された3rdアルバム『evil and flowers』は、同じくトーレ・ヨンハンソンのプロデュース作でありながらも、どちらかと言うとダーク。所謂スウェディッシュポップらしさはそこになく、どこまでも削ぎ落とされた音で感情の陰影を表現している。歌詞は失恋による苦しみと混乱が直截(ちょくせつ)に反映されたもので、必然的にマイナーコードが多用されているが、しかしメロディーに曖昧さはない。シングル曲は「Forget Me Not」と「金魚」だが、とりわけ「金魚」はファンの間でずっと人気の高い曲だ。息苦しさを表している日本語詞に沿ったダウナーなスローだが、そのどうしようもない切なさに共感する女性がとても多いのだ。ちなみに表題曲の「evil and flowers」は始まりと終わりに異なるアレンジで収められており、特に最後のその曲には確かに陽が差してくる感覚があって静かに深い感動が訪れる。そんなこのアルバムをBONNIEの最高傑作とする人も多い。

現在はニューアルバムの制作をじっくり行なっているBONNIE。それも楽しみにしつつ、90年代に発表されたこの3作品をハイクオリティーCDの高質な音でもう一度じっくり味わってもらいたい。また、BONNIEの強い要望で実現した初のアナログLPの発売もファンには嬉しいところだ。

『Blue Jam』 2016年09月07日発売
PONY CANYON

  • 【UHQCD】
    PCCA-50250 2160円

  • 【LP】
    PCJA-00060 3240円

『Heaven’s Kitchen』 2016年09月07日発売
PONY CANYON

  • 【UHQCD】
    PCCA-50251 2484円

  • 【LP】
    PCJA-00061 3564円

『evil and flowers』 2016年09月07日発売
PONY CANYON

  • 【UHQCD】
    PCCA-50252 2484円

  • 【LP】
    PCJA-00062 3564円

BONNIE PINK

ボニー・ピンク:洋楽的なアプローチで幅広い人気を博すシンガー・ソングライター。1995年、アルバム『Blue Jam』でデビュー。トーレ・ヨハンソンのプロデュースによる97年の2ndアルバム『Heaven's Kitchen』が大ヒットしたことで、一躍注目の存在に。以降もマイペースに、歌心と先鋭的な音楽性を両立させた珠玉のポップ集を届けてくれている。

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