【そこに鳴る】やらなさそうな人がや
る様式美的なメタルだから面白い
L→R 鈴木重厚(Gu&Vo)、 藤原美咲(Ba&Vo)、真矢(Support Dr)
ギターどころかベースもタッピング! 超絶技巧と男女ツインヴォーカルが特徴の大阪発の3ピースバンド、そこに鳴るが新たなドラマーを迎えて完成した新作は本気(マジ)のメタルも手に入れつつ、持ち味のポップさも活きた名刺代わりの一枚だ。
取材:石角友香
今日はいらっしゃらないのですが、新たなサポートメンバーの真矢さんのキャラクターや人間性が今のそこに鳴るに及ぼしている面は大きいですか?
鈴木
そうですね。主に人間性なのですが、以前のメンバーは僕ら3人が3人、影響を与え合ってスレていたというか。
藤原
(笑)。
鈴木
真矢くんはストレートで、サポートであるにも関わらず、このバンドをいいバンドにしていこうという行動であったりとか、そういう気持ちが見えて、それに僕らも感化されたところがありますね。
バンドの空気は良さそうですね。今回はメタルそのものな曲も取り込んだ作品ですが、その発想はどこから始まったのですか?
鈴木
今のギターロックシーンでの流行が、4つ打ちがあって、シティポップがあって…という感じなので、その次はメタルやろ!と思って、メタルをやりました(笑)。
今までの曲にもメタル要素はなくはなかったと思いますが、そことはどう違うのでしょう?
鈴木
今までも“メタル的な要素を取り入れた”みたいなことは言われてたんですけど、“取り入れた”ではなくて、もうその様式美的なしっかりしたメタルというものをやろうというのはありましたね。それをやらなさそうなポップな感じの見た目の人がやったら面白いかなと。それで「METALIN」という曲を作りました。
そもそも“次はメタルが来るんじゃないか”っていう根拠はどこから?
鈴木
根拠? BABYMETALが流行ってるとかかな(笑)。
藤原
ははは。
BABY METALはそれまでのヘヴィメタルファンを更新しましたね。
鈴木
そうですね。いや、メロディックな要素っていうのに、日本人には絶対引っかかると思って。ただ、そのメロディックメタル的なところが、日本でポピュラーな音楽になってないのは、歌のニュアンスなのかなと思って。じゃあ歌のニュアンスを完全にJ-POP寄りにして、他はメロディックスピードメタルなものにしたら、これは受け入れられるだろうという感じです(笑)。
アニソンに近いものを感じます。鈴木さんはエクストリームな曲を作りながら、実は普遍的なものを求めてるのかなと。
鈴木
あぁ、もうまさに。おっしゃる通りでございます(笑)。芯にあるものみたいなものは、その普遍的なメロディーというか、歌…そういうところは一番重要視してます。
今回は新しいサポートドラマーの真矢さんのプレイもありきで考えたところはありますか?
鈴木
前のドラムが手数で勝負するタイプのドラムだったので、そのドラムありきでそこに鳴るになると僕は思ってたんですけど、真矢くんとやることによって、別に絶対的に必要なものではなかったなと思えたんです。真矢くんのドラムの良さって、ストレートに叩く出音が良くて、それがすごく気持ち良い場所にくるから、普通に8ビートを叩くだけでもカッコ良いみたいな。そういうのがあるから、今までだったらドラムをカッコ良くするために手数を入れまくるというスタンスだったんですけど、別にそれをやる必要がなくなったんで、最後に入ってる「sayonara blue」みたいな曲もできているのかもしれないです。
リズム隊としてはドラムが変わったことで何が一番変わりましたか?
藤原
今までは結構ふわっとやってきた部分が多かったんですよね。今作で初めて音符についても考えるようになりました。“ここは音符の位置がこうだから”とか今まで考えたことがなくて。だから、やっとスタート地点って感じなんです。
「新世界より」のミュージックビデオを先に公開しようと思ったのは?
藤原
「METALIN」と「新世界より」のどっちかをリード曲にしようと言っていて。両方ミュージックビデオを撮るんですけど、そこで先に「METALIN」を出してしまうとみんながびっくりしちゃうかなぁと思ったんです。「新世界より」を先に出すことで、ちょっと助走というか、地均しをしてから本格的なメタルの曲を次に出して…という流れを作るためにですかね。
曲の振れ幅が広いので、鈴木さんの歌詞の書き方にも興味があるのですが。
鈴木
一番多いのは、音に沿った言葉を音に添えてあげる書き方です。今作だと「Break out!!!」が一番そうですけど、メッセージ性とか、こういうことを伝えたいというよりは、音があって歌詞があるスタンスが多いですね。
なるほど。比較的、終わってしまったことというか、過去について書かれた内容が多いと思うのですが、自覚はありますか?
鈴木
それは確かに今言われて思いました(笑)。気にしたことなかったです。
諸行無常感があるというか。
鈴木
そうですね。侘び寂びや、その儚さみたいなのは大事にしたいと思ってます。いとおかしというか、たぶん無常観みたいなのはありますね。
それは普通に生きてきた中で培われてきたものなのですか?
鈴木
そうだと思いますね。あと、仏教がわりと好きで。大学が仏教系の大学だったので必修科目で原始仏教の講義とかを受けていたんですが、共感したのと、“空”(くう)の考え方を始めめちゃくちゃ面白いと思ったので、そういうところからきているのかもしれませんね。
“和テイスト”とかいう軽い感じじゃないですね(笑)。そして、「sayonara blue」は驚くほど青春ギターロックという感じで。これはあえてひねりを入れずに?
鈴木
そうですね。ひねりを入れずにシンプルで普通にいい曲っていうのをやりたいなと思って作りましたね。曲とメロディーの切ない感じや、情景としてはグッとくる感じっていうのを言葉で抽象的に表現したらそういう歌詞になりました。
青春感がありますね。
藤原
イントロとかAメロに入る直前のギターとかが、学校で放課後に弾いてそうですよね(笑)。
では、最後に本作を携えての2017年の抱負を聞かせてください。
藤原
忙しくしたい、売れたいですね(笑)。
鈴木
“売れたい”しか言ってないですね(笑)。
藤原
どこで2017年の抱負を聞かれても“売れたい”しか言ってないですね。でも、このCDができたことで、より広くいろんな人に聴いてもらえるのかなと。メタルファンにもJ-POPファンにも、ギターロックファンにも、どの方面にもちゃんと胸を張ってお勧めできる作品ができました。これでちょっと…売れます(笑)。
アニメの主題歌のオファーが来たらいいですね。
鈴木
来てほしいですね。そういう機会もできるように精進いたします(笑)。
アーティスト
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