【THE MADNA インタビュー】
シーンの急先鋒が希求する
今この瞬間のリアル

L→R 朋(Ba)、涼太(Vo)、理緒(Dr)、太嘉志(Gu)

THE MADNAのめくるめく進化から目が離せない。4月5日リリースされるニューシングル「sweet dream」はまさしく彼らの新境地、あるいは真骨頂とも言えるかもしれない。ビジュアルイメージも含め、鮮やかな変身を遂げた4人に迫る。

ワチャワチャしてるだけじゃない
シリアスな一面も見せておきたい

2023年の第一弾となるシングル「sweet dream」が4月5日にリリースされます。昨年12月26日に新宿BLAZEで行なわれた『THE MADNA CREAM SODA TOUR「チェリーボゥイ&チェリーガァル」』のファイナル公演でも春頃にリリースとツアーが予定されていると宣言されていたのが実現されたかたちとなりますが、今回はまたがらりとイメージを変えてきましたね。

太嘉志

「sweet dream」は“涼太に合いそうな曲”を最優先に意識して作りました。実は僕、あまりそういう曲の組み立て方をしたことがなかったんですけど、作り方の意識が変われば曲としてもまた新しい雰囲気を引き出せるんじゃないかと思ったんです。今作だからそうしたというよりは、たまたまこのタイミングで自分の意識がそうなった感じなんですけど。

太嘉志さんが思う、涼太さんに合いそうな曲ってどういうものなんです?

太嘉志

難しいな。どんな曲でも全部、涼太に合うと言えば合うんですけどね(笑)。でも、この曲みたいな“ちょい切ないロック”は特に合う気がして。

でも、打ち込みをふんだんに盛り込んだアッパーなトラックメイクが、この曲をただの切ない曲にはさせていないですよね。

太嘉志

切ないだけじゃなく、ちょっとした希望じゃないですけど、そういう煌めきがサウンドにも欲しいと思っていて。どんな歌詞が乗ってくるか分からないけど、そういうものが好きなのでこのかたちになりました。

涼太さんがこのデモを聴いた最初の印象は?

涼太

デモの段階からステージでこの曲を歌っている自分をイメージできたんですよ。既存のものでこのタイプの曲もなかったし、また新たな表現ができるという期待感もありました。ただ、歌詞は苦労しましたね。最初は漠然と“弱くても不恰好でも生きていく”みたいな、ちょっとメッセージ性の強めな歌詞を書こうとしていたんですけど、しっくりこなくて。デモを繰り返し聴いていくうちにメッセージより情景とかが目に浮かぶようなものに重点を置こうと、何回か書き直して自分なりに納得のいくところに落とし込んでいきました。

今この瞬間が全て、そのリアルだけを信じていたいというような、ある意味、刹那的な切実さが歌詞全体に滲んでいますよね。一瞬一瞬に宿るリアルって、解釈によってはTHE MADNAのライヴにも通じる気もして。

涼太

確かにライヴだったりステージだったり、自分が今やっていることや自分が今いる状況とリンクしちゃうところはありますよね。それは自ずとそうなるというか。

《痛いほど感じさせてくれ君の鼓動を/君のリアルを》の箇所は特に、歌詞も歌い方にも涼太さんの生々しい想いが乗っかっているように感じました。

涼太

そうですね、“本当に感じさせてくれよ”っていう気持ちは込められていると思います。あの…死ぬのが怖いっていう気持ちってあるじゃないですか。小さい頃からずっとそういう気持ちがあって、夜とかになると“死んだらどうなるんだろう?”とか“やっぱり怖いよな”って考えてしまったりするんです。年齢を重ねてもそれは変わらなくて、そういう“怖いな”って部分も投影されている気がするんですよ。

だからこそ今、この瞬間のリアルを感じて生きていたいと?

涼太

そう、そんな気がして。

“sweet dream”というタイトルには、そうした怖さを和らげてくれそうな響きもありますね。

涼太

単純に“おやすみ”みたいな意味合いでこのタイトルをつけたんですけど、そういうところもあるかもしれない。すがりたいというか…せめて柔らかい言葉で中和されたいというか。“sweet dream”って言葉として可愛いじゃないですか。でも、どこか切なくて、パッと見た時の印象もとても素敵だなってずっと頭の片隅にあったんですよ。歌詞を全部書き終えたあとにタイトルをどうしようか考えた時に、この言葉が浮かんで頭から離れなかったんです。

切実さにぴったり寄り添う、いいタイトルだと思います。朋さんはこの曲に対してどんなアプローチで臨まれたんですか。

サウンド自体にはそれほどビジュアル系っぽさはない曲なんですけど、たしかこの曲のデモができたタイミングにはもう次のビジュアルコンセプトもだいぶ決まっていて、衣装をモノトーンで揃えるとか、方向性が見えていたんですよ。なので、自分のルーツにあるビジュアル系のイメージを詰め込みたい気持ちが生まれて。わりと無理矢理ぶち込んだ感じではあるんですけど(笑)。

でも、それがアンサンブルにいいかたちで作用していますよね。実は今回のビジュアルコンセプトについてもぜひおうかがいしたいと思っていたんです。朋さんが今おっしゃったモノトーンの衣装とか「sweet dream」のMVにしてもがらりとイメージを変えてこられましたが、そこにはどんな狙いがあるのでしょう?

涼太

理由はわりとシンプルで、MVの制作会社を一度変えてみようという話になったんですよ。前に各々でやっていたバンドが作ってもらっていた会社がたまたま同じだったこともあって、新しい試みとしてTHE MADNAでも一回お願いしてみたいと。で、どういう映像を撮っていくか監督と話し合っていく中で、あえてすごくストレートなアプローチをしてもいいんじゃないかって話になったんです。

ストレート?

涼太

真面目な一面っていうか…ワチャワチャしているだけじゃない、こういうシリアスな一面も兼ね備えてるバンドなんだっていうところを見せておきたい気持ちがあって。これまでのイメージだけで、バンドに対して固定した印象を持たれてしまっているとしたらもったいないじゃないですか。一回、印象づいたらそれ以降は“別にもういいや”って思われちゃうケースもあったりすると思うので、もし、そういう理由で一回離れてしまっている人がいるなら戻ってきてほしいですし。単純に自分が飽き性だったりもするので、自ずと変化させたくなっちゃうっていうのもあるんですけど(笑)。

だから、衣装もモノトーンなんですね。

涼太

はい。シンプルにいきたくて。

でも、太嘉志さんとか特にギャルっぽい派手な衣装がトレードマークみたいになっていたじゃないですか。抵抗とかなかったんです?

太嘉志

今までの長いバンド人生を振り返れば8割ぐらいモノトーンが占めていますからね。私服も黒系が好きだし、そういう意味では実家に帰ってきた…みたいな(笑)。やっぱり落ち着くんですよね。もちろん派手なのも可愛くて好きなんですけど、逆に可愛い衣装だとなかなか“エロみ”が出せないんですよ。今回の衣装だと大人なセクシーも表現できるので、ライヴをやっていても新鮮で。

理緒

僕はふだんからモード系の服、ヨウジヤマモトとかコム・デ・ギャルソンが好きで。今回、衣装のアウターがギャルソンだったのでだいぶテンションが上がりました(笑)。

俺もモノトーンの衣装は好きですね。個人的に、見た目はシンプルでも内側からグワーッとあふれ出てくる激しさとか、そういうものを見せたい気持ちがあるんですよ。特にライヴ中はそうで。なので、衣装がモノトーンだと感情を曲に乗せて表現しやすいっていうところはあるかもしれない。

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