【聖飢魔II ライヴレポート】
『聖飢魔II 期間再延長再集結
「35++執念の
大黒ミサツアー FINAL」』
魔暦25(2023)年2月15日
at 国立代々木第一体育館

魔暦25(2023)年2月15日 at 国立代々木第一体育館

 魔暦元年(1999年)12月31日の本解散以降、復活を願う信者(ファンのようなものだが、信奉者の呼称)のアツい声に応えて節目節目に期間限定再集結を行なってきている聖飢魔II。地球デビュー35周年を迎えた魔暦22年(2020年)も彼らは再集結して大黒ミサ(ライヴ)ツアーを行なう予定だったが、同年春に起こったコロナ禍により生大黒ミサは中止となり『ヴィデオ黒ミサ&生トーク』というかたちで全国を回ることになった。リヴェンジを果たすべく彼らは再集結期間を延長し、魔暦23年(2021年)にあらためて大黒ミサツアーを行なうことがアナウンスされたが、同年もコロナ禍が収束することはなく『ヴィデオ黒ミサ&アコースティック主体の生黒ミサ』という形態による全国ツアーが実施された。

 今回の再集結はそこで終わりかと思われたが、聖飢魔IIはさらに再集結の期間を延長し、魔暦24年(2022年)にようやく有観客大黒ミサツアー『聖飢魔II 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー」』を実現させるに至った。また、彼らはツアーを控えた同年9月21日に23年振りとなる新譜大教典(音楽アルバムのかたちを用いた)『BLOODIEST』を発布。新たな聖飢魔IIの魅力が詰め込まれた大教典で信者の期待をさらに高めたうえで、10月16日から全国ツアーへと旅立った。

 4年越しとなった今回の再集結が実現したのは“有観客の大黒ミサをしたい!”という構成員の想いはもとより、それを望む信者の多さが原動力になったことは疑念の余地がない。ホール&アリーナを会場にした魔暦22、23(2020、2021)年の全国ツアーは“ヴィデオ黒ミサ”での開催だったにもかかわらず、各地で揃って参拝券(入場券のような物)は即座に売切れとなった。今回の『35++執念の大黒ミサツアー』も全国全公演ソールドアウトで多数の信者が集まり、魔暦25年(2023年)2月15日に東京・代々木第一体育館で開催された最終大黒ミサはWOWOWの同時中継とライヴヴューイングも実施。ツアーファイナルは来場した10,000人に留まることなく、全国規模のイヴェントとして華やかに行なわれた。

 代々木第一体育館の場内にオープニングSEとして「ゴジラ映画『三大怪獣地球最大の決戦』のテーマ」が流れ、ステージに構成員たちが姿を現した。客席が騒然となる中、大黒ミサは重厚な「創世紀」からスタート。聖飢魔IIの大黒ミサが始まった瞬間のインパクトの強さは変わることがないなと思っていると、ステージに運び込まれた棺からデーモン閣下(Vo)が登場。客席からどよめきが湧き起こり、大黒ミサが始まると同時に場内のヴォルテージが一気に高まったことがはっきりと感じられた。

 「創世紀」に続けて壮大さと憂いを併せ持った「EL.DORADO」、かつて全ての再集結のラストナンバーで演じられていた曲が冒頭で行われ、その意外な演出が、参拝者を呆然とさせる中、ルーク篁参謀(Gu)とジェイル大橋代官(Gu)のスリリングなギターバトルを配した「RATSBANE」を続けてプレイ。フィジカルにステージを行き来して歌い、超絶的なハイトーンシャウトを発するデーモン閣下。華やかなオーラを放ちながらテクニカルなギターソロを決めるルーク篁参謀。ロックフレイヴァーを纏った存在感とシュアなギタープレイの取り合わせが最高にカッコ良いジェイル大橋代官。ステージ後方のライザー上に力強く立ち、重厚なベースサウンドと安定したグルーヴでバンドのボトムを支えるゼノン石川和尚(Ba)。タイトさとしなやかさを巧みに使い分ける高度なドラミングとワイルドなヴィジュアルでオーディエンスを魅了するライデン湯澤殿下(Dr)。5名が並び立った情景と気持ちを引き上げるラウド&クリアーなサウンド、アツいリアクションを見せるオーディエンスの姿などが折り重なって、代々木第一体育館の場内は完全に聖飢魔IIの世界へと化した。

 “聖飢魔II 期間限定再集結再延長「35++執念の大黒ミサツアー」のファイナルへようこそ! 今宵が来てほしいような、来てほしくないような気分だろう、お前ら。我々も、そうだ。だが、とりあえず楽しめ! 今日はお前らを殺しにかかるからな。いろんな首を洗っとけよ! 泣いたり、笑ったりしながら帰っていけばいいじゃないか!”というデーモン閣下のMCを挟んだあとは、アッパーかつ現代社会への毒メッセージをはらんだ最新曲(このFINALで初演奏)「Run! Run! Run!」や美麗なかつ深遠なバラードの「BAD AGAIN」、ダンサブルな「魔界舞曲」、抒情的な味わいとプログレッシヴロックを思わせる知的さを融合させた「嵐の予感」などが届けられた。一曲ごとに表情を変えていく構成と聖飢魔IIならではの秀でた表現力が創出する世界観の深さは圧倒的で、強く惹き込まれずにいられない。激しくいき上げることよりもじっくり聴かせることを重視するスタンスが奏功して、円熟した現在の彼らの魅力をたっぷりと味わうことができた。

 構成員全員による和やかなMCや場内が明るく盛りあがった「呪いのシャ・ナ・ナ・ナ」などを聴かせたあと、第1部の締め括りとして楽曲誕生40周年を記念とした「STORMY NIGHT」(悪魔組曲作品666番変二短調より)、「蠟人形の館」「DEAD SYMPHONY」をフィーチュアしたメドレーが演奏された。ゾッド星島親分(Ba)も登場して、構成員たちは広いステージ全体を使った華やかなステージングを展開。さらに、「DEAD SYMPHONY」では世を忍ぶ仮の年齢で60歳のデーモン閣下が“天地逆転唱法”を披露するなどアグレッシヴなパフォーマンスと躍動感にあふれたサウンドでオーディエンスを大いに湧かせて第1部は幕を降ろした。

 15分の休憩を挟んで始まった第2部ではシューゲイザーに通じる夢幻的なテイストを活かした、やはりこのFINALで初演となり、初の演出を用いた「WHAT’S HAPPENING?」やウォームな「永遠の詩 -A Song Of The Deceased - 」、ドラマチックなファストチューンの「BRAND NEW SONG」などが演奏された。ここでも“惹き込みと開放”を活かしたアプローチが見事に決まり、さまざまな感情を喚起させられることで場内の一体感はさらに高まっていった。

 “この間、何かのインタヴューで今回の再集結の足かけ4年の話をした時に、ポロッと吾輩は“バンドを解散する理由が、今ないんだよね”と言ってしまった。足かけ4年も活動しているともう立派なバンドになって、家族みたいになって、その後会議を構成員とスタッフとしている時に、また思わず吾輩は“40周年、もう再来年なんだけど、どうする? 再来年ということは、もう準備始めないといけないんだよな”と言っている自分がいた。我々構成員はみんなそれぞれちょっとずつ問題を抱えているんだ、世を忍ぶ仮の身体に。だから、約束はできない。同じかたちで再集結するかどうかは分からないが、違うかたちかもしれないけれども、きっと再集結するでしょう、40周年!”というデーモン閣下の力強い言葉に続けて、ラストソングとして「LOVE LETTER FROM A DEAD END」をプレイ。場内の盛り上がりは最高潮に達し、感動的な余韻を残して構成員たちは魔界へと帰還していった。

 コロナ禍という難局に屈することなく再集結期間を延長し、その間もモチヴェーションを保ち続け、良質な大教典を作り、唯一無二の魅力を湛えた大黒ミサを披露してみせた聖飢魔II。大教典『BLOODIEST』がそうであるように、音楽性の幅広さを押し出しつつ王道なメタルテイストをアクセントに用いる現在の彼らの在り方は本当に魅力的だ。彼らの歴史を彩ってきた名曲だけに頼ることなく『BLOODIEST』の楽曲をポイントになる場所に配した構成の大黒ミサだったことも含めて、聖飢魔IIは今なお進化し続けている現在進行形のバンドと言える。そんな彼らだけに、35周年を経てもまだまだ輝きを放つ存在であり続けることは間違いなさそうだ。

撮影:山田“あるまじろ”晋也/取材:村上孝之



結果的に正確な、閣下監修によるセットリスト

  1. 01. 創世紀
  2. 02. EL.DORADO
  3. 03. RATSBANE
  4. 04. Run Run Run!
  5. 05. Good Night Melodies(Syuto solo)
  6. 06. BAD AGAIN
  7. 07. 鬼
  8. 08. GLORIA GLORIA(Syuto によるBGM)
  9. 09. 魔界舞曲
  10. 10. RENDEZVOUS 60 MICRONS’
  11. 11. 嵐の予感
  12. 12. 呪いのシャ・ナ・ナ・ナ
  13. 13. STORMY NIGHT(悪魔組曲作品666番変二短調より)〜蠟⼈形の館~DEAD
  14. SYMPHONY
  15. 14. 怪奇植物(部分)(ZOD solo)
  16. 15. WHAT'S HAPPENING?
  17. 16. 地獄の皇太子
  18. 17. WINNER!
  19. 18. 悪魔組曲作品666番変二短調「序曲」(部分、BGM)
  20. 19. 永遠の詩 -A Song Of The Deceased -
  21. 20. BRAND NEW SONG
  22. 21. LOVE LETTER FROM A DEAD END
  23. 【以下、構成員が去る時のBGM(SyutoによるSymphony arrange, computer programming)】
  24. 22. THE BLOODIESTS –最も血生臭い奴ら-
  25. 23. 永遠の詩 -A Song Of The Deceased -
  26. 24. LOVE LETTER FROM A DEAD END
  27. 25. WHAT'S HAPPENING?

聖飢魔II

セイキマツ:デーモン閣下(Vo)を中心に地獄から地球へ這い上がったヘヴィメタル/ハードロックバンド。魔暦前14年(1985年)9月に大教典(アルバム)『悪魔が来たりてヘヴィメタる』で地球デビューを果たす。現在の構成員は閣下のほか、ルーク篁参謀(Gu)、ジェイル大橋代官(Gu)、ゼノン石川和尚(Ba)、ライデン湯澤殿下(Dr)。魔暦前13年(86年)の「蠟人形の館」が大きな話題を生み、また、デーモン閣下はTVなどでも大衆の人気を獲得。以降も数多くのヒット作を放つが、魔暦元(1999)年に解散。“地球デビュー”30周年を記念して魔暦17年(2015年)8月に期間限定で再集結を果たした。3枚組第三十xxx大教典 xxx(オールタイムベストアルバム)『XXX-THE ULTIMATE WORST-』を発表し、『大黒ミサツアー』も開催した。魔暦22年(20年)に“地球デビュー”35周年を記念し再集結。期間限定再延長・再集結とし、魔暦24(22年)9月に23年振りの新譜大教典『BLOODIEST』を発布(リリース)し、10月からは『35++ 執念の大黒ミサツアー』を開催する。

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