【TWEEDEES インタビュー】
正面突破のフルコース的な美味しさ

L→R 沖井礼二(Ba)、清浦夏実(Vo)

これまで以上のグッドメロディーが散りばめられた3rdアルバム『DELICIOUS.』。ますます自由に時代やジャンルを横断するような一枚が完成した。果たしてその変貌の真相とは? 上質なポップスをご堪能あれ。

すごくいいアルバムで、雰囲気がガラッと変わっててびっくりしました。

沖井

ありがとうございます! そう言われて逆にびっくりなところもあるけれど(笑)。奇をてらわないようにはしたんですよ。

清浦

でも、1曲目の「DELICIOUS.」なんかは沖井さんがとんでもない曲を作ったなって思いました。

沖井

煮詰まって公園へ行った時に、子供や犬を眺めてて急に閃いた曲なんだけどね。

確かに、歌詞にはチャーミングな箇所があったりもしますね。

沖井

アルバムのタイトルが先に決まってたんですよ。“最近のTWEEDEESってどんなモード?”みたいな話をしてたら、この人(清浦)に“デリシャスじゃないですかね”と言われたのがしっくりきて。

清浦

なんて言うのかな? 上品さがありつつ、テイスティーやフルーティーじゃないというか。沖井さんはウニが好きなんですけど、食べた時に“ハァ〜♪”ってなるような(笑)。そんな堪らない感じが今ならできる気はしました。

沖井

ちょっとサイケデリックな美味しさだね(笑)。なので、“DELICIOUS.”って曲を作りたいなとはずっと考えてたんです。熱に冒されたみたいに進めていって、シューゲイザー的な音はその途中で思い付いた感じで。

清浦

“どう歌えばいいんだろう?”という気持ちだったけど、思い切ってやるしかない曲でした。レコーディングでは勢い余って酸欠になったりして(笑)。その甲斐あってか、普段求められないものができた手応えはあります。

今作の前にミニアルバム『à la mode』を挟んだ理由を聞かせてください。

沖井

TWEEDEESをきちんと把握しないと、3rdアルバムは危ないなって思ったんです。重要なアイテムととらえてたので時間が欲しかった。だから、『à la mode』は統一性なくポップな曲を集めたものにして、そのあとはライヴも減らし、バンドを見つめ直しました。なおかつ、僕たちは冬が好きなので、冬に向けたアルバムを作りたかったのもあります。僕、デビューして20年ですけど、冬に出せるのが20年振りで。Cymbalsの2ndミニアルバム(『Missile & Chocolate』/1998年)以来。

清浦

沖井さんは産みの苦しみを味わってましたけど、今までで一番じっくり作れたと思います。

沖井

ボツにした曲もかなり多いんで。陶芸家が焼き上がった作品を“違う!”ってする感じ(笑)。

清浦

割っちゃうんですよ〜! で、やっと選べたのがこの10曲。沖井さんがどこにハードルを設定してるのか分からなくなる時もあったので、“これはヤバいぞ”と思ったりもしましたが(笑)、だんだん私も掴めてきて必死に付いていって。

沖井

とにかく正面突破を考えてました。ここで日和ったものを作ったら “TWEEDEESってこんなもんか”と思われちゃうんで。

では、アルバムが出来上がってみてどうですか?

沖井

“TWEEDEES”がタイトルでも良かったかも。ついに自分たちと向き合わなきゃならなくなって、我々らしさを徹底して探る作業が結果できましたから。一曲一曲のキャラがきちんと立ってて、アルバムの中での役割を果たしてくれてるし。

清浦

『à la mode』は幕の内弁当で、『DELICIOUS.』はフルコースみたいな感じですね。

アルバム後半は特に絶品で。メドレーっぽく聴けました。

沖井

やった! The Beatlesの『アビイ・ロード』みたいかな?(笑)

清浦

作ってる時に沖井さんすごく聴いてましたよね、The Beatles。

沖井

『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の50周年盤に度肝を抜かれて、久々に夢中になってね。アルバムの構成というものを勉強し直した感じです。

その中で、PIZZICATO FIVEのカバー「東京は夜の七時」が「21世紀の子供達」と融合させるかたちで収録されていて。

清浦

小西康陽さんのメロディーにはハッとしましたね。すごく無機質な印象を受けて、感情を込めるような曲ではないんだなと。ギャルの“超ウケる〜”ってあるじゃないですか。真顔で言ってて、さほどウケてないみたいな。それに近い、無のイメージで私は歌ってみました。

沖井

感情がないわけではないんだよね。これが小西マジックか〜!

清浦

沖井さんが急にカバーしてみたくなったんですが、最初は“よりによってこの名曲!?”って(笑)。でも、面白いと思っちゃった自分もいました。

沖井

ただ、まんまカバーしたら説得力は出せないだろうなと。清浦は1990年生まれなので、この曲の頃はほぼ物心ついてないし、若い人から90年代のことを聞くたび何か誤解されてる気もして。うーん…「21世紀の子供達」で《子供達のセックス離れ》とか酷い世の中の歌詞を書いたけど、90年代ももうバブルではなかったんですよ。「東京は夜の七時」の世界観もあえてのファンタジーで。でも、今はそのファンタジーがファンタジーとして通用しないと思うんです。そういう誤解を解きたい想いで選んだのもありますね。“昔は良かった”と言いたい曲じゃなく、今がとにかくダメとも思ってない。僕らが感じるムードを音楽で表現しました。

「美しい歌はいつも悲しい」はどんな曲ですか?

沖井

フランス映画とかの“愛のテーマ”って、たいてい悲しいんですよね。美しいものやもっともポジティブな感情である愛を表現するための曲というのは。それはメロディーにしろ。「美しい歌はいつも悲しい」はまさにそんな曲だなと思って。完結したストーリーじゃなくてじわじわ融け出してほしかったので、歌詞は散文的にしました。

清浦

歌は祈りに近いイメージかな。しかし、まさか沖井さんが《愛》《美しい》という言葉を日本語で使うとは!

沖井

“歌詞で《美しい》を使ったら負け”って、俺、いつも言ってたもんね(笑)。

清浦

素直でいいなと思いましたよ。今のTWEEDEESに必要なワードだったと私は解釈してます。

沖井

もうカッコ付けてられなかったです。しっかり向き合わなきゃいけない曲だったし、今はそういうタイミングなんだろうな。

取材:田山雄士

アルバム『DELICIOUS.』 2018年10月31日発売
日本コロムビア

  • COCP-40536
    ¥3,000(税抜)



『おしゃべりTWEEDEESツアー』

11/11(日) 福岡・LIVLABO
11/17(土) 大阪・GOOD THING
11/18(日) 愛知・喫茶モノコト〜空き地〜

TWEEDEES

トゥイーディーズ:2015年に結成され、同年3月に1stアルバム『The Sound Sounds.』を発表。16年7月には2ndアルバム『The Second Time Around』、17年6月にはミニアルバム『à la mode』をリリースした。ポップスとロックの王道を貫く高い音楽性とファッション性を持ち、等身大のフレンドリーなキャラクターで臨むライヴにも定評がある。

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