【SPYAIR】
根底に“KINGDOM”があったことで
意識をつなげていくことができた
L→R KENTA(Dr)、MOMIKEN(Ba)、IKE(Vo)、UZ(Gu&Programming)
約2年振りとなるアルバム『KINGDOM』はSPYAIRの現在・過去・未来を“デカさ”というキーワードでつないだ、バンドの今が詰まったアルバムとなった。
“KINGDOM”という言葉の響きとか
漠然としたデカさがいいなと
アルバム制作に入る前から“KINGDOM”というタイトルを考えていたそうですが、その時はどういうイメージだったのですか?
UZ
“KINGDOM”には“王国”という意味があるんだけど、それより言葉の響きとか、漠然としたデカさがあっていいなと思って。
“SPYAIR王国を作るぞ”みたいなことではなく?
UZ
ではなくて(笑)、とにかくデカいイメージがいいなと。1stアルバムが『Rockin' the World』、3rdが『MILLION』で、タイトルを見ただけでデカい感じだったでしょ? 俺はそういうのが好きだし、このバンドに合うと思っていて。そういう意味で“KINGDOM”というワードを最初に決めて、これを軸にこのアルバムを作り上げました。
IKE
こういうキーワードがあったことが、すごく重要だったと思う。最初はワードとして提示されただけで、意味までは深く掘り下げなかったけど、“デカさ”は全員の共通認識になったかな。アルバムまでにタイプの違うシングルを4枚出したけど、根底に“KINGDOM”があったことで、意識としてひとつのものにつなげていくことができたと思うし。
歌詞は自分たちの居場所とか、人と人とのつながりを歌ったものもあって、それが逆にデカさを感じさせますよね。
MOMIKEN
“KINGDOM”というテーマのもとで最初にできた曲が「THIS IS HOW WE ROCK」で、それがアルバムのメッセージとして軸になるものだと思っていて。それを母体に書いていく中で、いろいろなものが引き出されていった感じです。
KENTA
“KINGDOM”は語感がカッコ良いし、何となくデカくていいなと思ってて。そのキーワードが提示されて以降は、作る曲やライヴでどういうものを表現するかも全て統一感がとれていったと思います。
1曲目「THE WORLD IS MINE」のイントロは、まるで大作映画のようで。そこからド派手なロックが続き、キュンとするミディアムもあり、ラップで攻めつつ、最後はバラードでしっとり終わる。中でも序盤の「スクランブル」はストレートでキュンとくる曲ですね。
UZ
そうですね。これは一番最後にできた曲なんですよ。いろんなタイプの曲がある中で、もうひとつシンプル&ストレートな曲調で、日本語で引っ張る曲が欲しいなと思って。この前に作ったのが「MIDNIGHT」で、あれはちょっと癖が強いじゃないですか。それで、ストレートなものを作りたいと。俺はいつもメロディーにめちゃくちゃな英語詞をラフで付けてデモを作るんですけど、この時は珍しく日本語で作ったんですよ。そうしたら今さらだけど、日本語が合うメロディーと英語が合うメロディーがあるってことに気付いて(笑)。だから、この曲は歌詞を乗せやすかったんじゃないかな?
MOMIKEN
実際やりやすかったかな。歌詞で言うと「THIS IS HOW WE ROCK」以降、めちゃめちゃ力強い言葉で書いた歌詞が多かったから、等身大で書けたというか。20代で将来に不安も感じているけど、もう子供でもいられないみたいな、自問自答や自分の未来を模索している感じを出したくて書きました。こういうメッセージはいつの時代でも普遍的なものだと思うし。最近はあまり書いていなかったから新鮮でしたね。
「スクランブル」は渋谷のスクランブル交差点のこと? みんなが東京に出てきて間もない頃の気持ちとか。
MOMIKEN
俺はそういう気持ちで書きましたけどね。
KENTAさんはこの歌詞いかがですか?
MOMIKEN
KENTAに聞きます?(笑) もしKENTAが歌詞でエモくなって、上を向きながら悦に入ってプレイするようなドラマーだったら嫌だな…。そんなKENTAは見たくないし(笑)。
KENTA
うん。たぶんグッときた…(笑)。
UZ
でも、それは俺も一緒。ラップパートは別だけど、歌に関しては歌入れの時に“こういう歌詞なんだ〜。いいな~”って思った(笑)。
IKE
いつもは歌詞にあまり反応しないはずのUZが“この歌詞はすごくいいね”って、まじまじと歌詞カードに見入ってた。バンドが歴史を刻んだからこその歌詞だし、俺ら自身にすごく響く音と歌詞なんだと思う。素朴なエモさっていうか、じんわりくるよね。
KENTA
逆に「RAGE OF DUST」は怒りのエモさがあるよね。
IKE
星を見ちゃってる感じだよね。「スクランブル」はもっと足下というか、街が見えるじゃん?
KENTA
なるほど!
(笑)。その次の「君がいた夏」は、去年の富士急ハイランド・コニファーフォレストでの野外単独ライヴ『JUST LIKE THIS』で初出しした曲で、胸がキュッとなるミディアム系という。
UZ
あの時は曲タイトルもまだ決まってなくて。
MOMIKEN
俺らってみんな、20代の時にドライブデートとかした経験があって…。あてもなく走ってると、たいてい海に行き着いたりするじゃない? 海か街が一望できる高台だったり。そんな時代を懐かしみつつ、今の自分と照らし合わせているような。
UZ
この曲はアルバム中で唯一“KINGDOM”というテーマを決める前にできていて。どういう方向に行ったらいいか迷っていた時期に作ったから、自分的には思い入れが深いかな。
ちなみにKENTAさん、この歌詞については?
KENTA
よくぞ訊いてくれました! 好きなフレーズがあって。《青くてもどかしい 恋だった》なんですけど。毎回ライヴでここになると、MOMIKENのしたり顔が浮かぶ(笑)。色で恋を表現するって、なんかこっ恥ずかしいじゃないですか。
MOMIKEN
あぁ〜。でも、実際はそこじゃなくて。《うるさいくらい輝いた海》のほうがやってやった感がある(笑)。
KENTA
あ、確かにそこは常滑(地元)の海が見える!
MOMIKEN
でしょ? 波が太陽でビカビカしてて。《うるさいくらい輝いた海》と浮かんだ時は、“俺、ナイス!”って(笑)。
IKE
俺は1行目だな。《君と車に乗って》だけで絵が浮かぶじゃん。で、そのあとにちゃんとストーリーが進んでいくんだけど、そこがヴォーカリスト殺しで。曲が進むごとに気持ちが変化していく歌詞だから、流れを止めないようにストーリーを追いながら1曲を通して表現していくのが本当に難しかった。
KENTA
ライヴでやる時はいつも緊張してるよね。
IKE
アルバムの中でも一番難しかったです。正直まだ表現し切れていないと思うからもっと歌い込んでいかないと。
演奏も難しいですか?
UZ
すごく難しいです。「Be with」みたいなバラードは自分たちの中にスイッチがあるけど、「君がいた夏」は良い意味で中途半端なテンポなんで。寂しく弾きすぎちゃダメだし、バラードまでしっとりとはいかないし。特にライヴでやる時は難しいですね。でも、ツアーではやらないわけにはいかないので。
IKE
来年のツアーに向けての課題曲です!(笑)
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