フルマラソンであと10キロ、でもまだ
10キロの苦しい時に自分を震い立たせ
る曲
ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
スポーツの秋。各地でマラソン大会が開催されています。走ることって、達成感もあって楽しいのですが、やはり途中の道のりは辛いもの。そこで今回は、フルマラソンで残り10キロの苦しい時に聴きたい曲を選びました。背中を押してくれる6曲をどうぞ。
1.「戦う男」/エレファントカシマシ
国際マラソンのトップ・ランナーはラストスパートをかけるところでもありますが、やはり一番苦しいところだと聞いたことがあります。「もうこのままゴールは無いのでは」と思うくらいゴールがひたすら遠く感じるのも、この30キロを過ぎた辺りからだそうですね。
あと10キロ、残りの力を全て絞り出してゴールを目指して燃え尽きるために。
エレファントカシマシの「戦う男」は、1997年に発売されたアルバム「明日に向かって走れ」からのセカンドシングル曲です。ファーストシングルで表題曲の「明日に向かって走れ」は、どちらかというとマラソンのためのトレーニング中に聴くと頑張れる感じですが、この「戦う男」はリズムにもスピード感があって、気持ちを強く奮い立たせてくれます。歌詞がそのまま全て、心にエールとして響くでしょう。もちろん戦う女性にも。
(選曲・文/阪口マサコ)
2.「Sports Men」/細野晴臣
日本のポップスの発展に多大なる影響を与えた御大、細野晴臣。今もなお各ジャンルで常に一歩先を行く音楽を発表し続けています。この曲は1982年のアルバム『Philharmony』に収録された代表曲です。彼はこの時YMOでも大活躍をしていました。
サンプリングを大々的に使ったこの曲は、YMOともちょっと違ったテクノポップ。歌声は細野自身ですが、かなり加工されています(地声もすごくいい声なのになあ…)。全編英語の歌詞です。体が弱かったのでこれから強くして、そしてスポーツマンになるんだ、といったことを歌っています。サビでもはっきりと「僕はスポーツマンになるんだ」と。スポーツマンになるという思いが、フルマラソンを完走する原動力にもなると思います。曲に後押しされながら、完走を目指していけそうです。
(選曲・文/片山明憲)
3.「BRIGHTER DAY」/安室奈美恵
(選曲・文/石井由紀子)
4.「Crowd Chant」/Joe Satriani
主にメタルで活躍するギタリスト、Joe Satriani。彼のギターテクニックは世のギターキッズたちを虜にしてきました。彼を師匠とする者は数知れず。この曲でもテクニックを存分に発揮しています。
4つ打ちの打ち込みとクラッピングがベースとなり、そこに彼のギターが唸りをあげます。ギターが歌っています。それに人間の声が呼応する。ギターと人間がコール&レスポンスをするのです。まるで聴いている人を応援するように。キツくなったときでもこの曲は応援曲となるでしょう。この曲は人気の経済系テレビ番組のテーマ曲となっておりますので、ご存知の方はイメージがつくのではないかと思います。
(選曲・文/片山明憲)
5.「Training Montage」(映画「ロッキ
ー4」より)/Vince DiCola
苦しい自分をケリ上げつつ、しかし決して焦ることなく、ひたすら着実に走り続ける。
走り続けるという「作業」を鉄の意志で完遂する。まだ遠いゴールの瞬間へ向かって・・・。
ここはやはりスポ根映画界の絶対王者、名画「ロッキー」シリーズのサウンドトラックの出番です。
今回ご紹介するのは、かの有名なビル・コンティの手掛けたお馴染みの曲ではなく、「ロッキー4」で起用された、ヴィンス・ディコーラによる「Training Montage」。
ライヴァルにして親友のアポロを葬った仇敵ドラゴとの試合に向けて、黙々と厳しい特訓を重ねるロッキー。そのシーンで流れるこの曲を覚えている方も多いかもしれません。
聴いているだけで胸が熱くなる名曲。そしていかにも80sなシンセサイザー・サウンドが、今となっては新鮮に響きます。(余談ですが、80sのシンセものは、ぜひアナログレコードで聴いてみてください。一つ一つの音の太さ、豊かさが違います。) ただ燃え上がるだけじゃダメなんです。燃え上がった炎が持続することこそ大切で、難しく、価値あることなんですよね。
ちなみに、この「ロッキー4」で最期を迎えたアポロですが、その息子を主役に据えた「ロッキー」シリーズの新作映画「クリード」も近く公開になるとのこと。こちらの炎も持続しているようです。さあ、必ずゴールまで走り切りましょう!
(選曲・文/伊藤威明)
6.「The Power」/Manowar
ヘヴィメタルのバンドは数あれど、彼らほどメタルを崇拝し、その身をメタルに捧げたバンドは他にいないと思います。そのバンドの名は、Manowar。徹底された男のマッチョイズムが、どの曲でも大げさなくらい表現されています。彼ら自身も一瞬プロレスラーかと見まがうような筋骨隆々のマッチョたち。全てメタルのために体をも仕上げているのです。「偽メタルに死を」(Death to False Metal)という言葉を掲げたり、ライブで139dBもの爆音を出し「世界で最もうるさいバンド」としてギネス認定されたり、レコーディング契約のサインの際に自らの血で判を押したりと伝説は数知れず。男、いや漢の中の漢たちなのです。暑苦しさ故、ネタ要素が多いのも彼らの魅力の一つです。
この曲もイントロからアツい演奏です。ギターのリフも気持ちを昂揚させる。ボーカルのEric Adamsも血管がちぎれるんじゃないかというくらい力のこもった歌唱を披露します。特にサビはギターの速弾きも相まってとにかく凄まじい。これを聴けば全身からパワーが漲ってきます。
(選曲・文/片山明憲)
著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会
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