ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
気づけば8月も、もう終わり。そういえば、ついこの間まで夜7時前でも空は明るかったはずなのに、最近は日が暮れるのもスッカリ早くなってきた・・・。秋の虫の音色を聞こえ始め、季節は確実に移り始めています。過ぎゆく季節を感じながらセンチメンタルになる曲や、笑顔で季節を見送るような曲まで集めてみました。

1.「夏なんです」/はっぴいえんど

日本語ロックの金字塔、はっぴいえんどが歌う夏。今年作詞活動45周年を迎えた、松本隆が作詞をし、海外の先進的な音楽を積極的に持ち込み、日本のポップスに革命を起こした細野晴臣が作曲をしました。この曲は日本の夏の情景、日本人の感性の豊かさを見事に表しています。
「ギンギンギラギラの 太陽なんです」「ホーシーツクツクの 蝉の声です」「モンモンモコモコの 入道雲です」
まさに日本の夏。そしてこのようにも歌っています。 「日傘ぐるぐる 僕はたいくつ」。曲調はゆったりとしていて、夏で火照った体をクールダウンするような感じ。夏のイベントも全て終わり、ただただ「過ぎゆく夏」に思いを馳せつつ、「たいくつ」に過ごしているのでしょうか。歌詞と曲、どちらもしっかりと味わいたい名曲です。
私はこの曲を夏が終わる頃、8月中旬以降に必ず聴きたくなります。一種の清涼感を感じられるからです。ロックというより、チルアウトに近い。細野はYMO散開後アンビエントに傾倒しますが、この曲で既に近しいことをやっていたようにも感じます。
(選曲・文/片山明憲)

2.「Reasons」/Earth, Wind & Fire

この夏、恋をしましたか?体が熱く火照るような恋をしましたか?
朝夕の風が少し乾いて涼しくなって、空が高く感じる夏の終わりとともに、熱病のようなひと夏の恋も冷静さを取り戻してゆきます。
過ぎゆく夏とともに、この恋もフェイド・アウトしてゆくのかしら・・・
そんな揺らぐ心をフィリップ・ベイリーのファルセット・ボイスがせつなく歌い上げます。「愛することの理由は?僕らの愛が終わる理由は?」夏の間はそんなことを考えもしませんでしたね。
少し感傷にひたる夏の終わりに聴きたい、アース・ウィンド・アンド・ファイヤーの1975年のアルバム『暗黒への挑戦』に収録されている隠れた名曲です。
(選曲・文/阪口マサコ)

3.「Hello,my friend」/松任谷由実

夏の終わりって、なぜこんなに寂しくなるのでしょうか。
誰しもが楽しい気持ちになる陽気な時の終わりは、秋の涼しい風に吹かれて、もう時間切れだと告げられて名残惜しい気分になるのかもしれませんね。
この時期は、そんな騒がしい季節が終わる、切なくなる気持ちを乗せたこの曲が頭を過ります。
冒頭のメロディは、ただ見送ることしかできない元気な夏の後ろ姿を、ぼんやり見つめる自分の気持ちと不思議な位テンポがあってしまいます。 季節のうつろう切なさと、この歌の一夏の恋の終わる切なさの歌詞は、もう戻ることのない愛しいものの姿を見届ける甘酢っぱさがどこか似ているのでしょう。
秋に向かって、前を向いて歩く前に。夏と秋の狭間で少しだけ足を止めたくなりますね。
(選曲・文/宮川桃子)

4.「宿題が終わらない」/SHISHAMO

季節の移ろいを感じてセンチメンタルな気分に・・・・なんて言えるようになったのは、きっと夏休みの宿題を課されなくなってからです。えぇ、私はいつでも8月30日から宿題に手をつけ、始業式に向かう通学の電車の中でも宿題やってましたから。間に合うかどうか?の切迫感を味わいつつ毎年格闘していました。
さて、SHISHAMOは、神奈川県出身のガールズ3ピースバンド。この曲は、彼女たちが現役高校生の頃に作った曲だけに、宿題を片付けないといけないけど、なんかダルい・・・といった雰囲気が生々しく伝わってきます。そして、かつてのズボラな学生が聞くと、宿題が終わらない・・・というか、課題プリントすら見つからない女子高生の気持ちが、昔の自分と重なり笑えてくるのです。
高校を卒業して2年が経過したSHISHAMO。宿題が終わらないと嘆いていた女の子たちは、なんと来年1月には、日本武道館のステージでワンマンライブを敢行するまでに。季節が流れるのは本当に早いものだ・・・と、過ぎゆく夏を通り越して、親戚のオバチャン感覚で、彼女たちの活躍を見守ってしまうのです。
(選曲・文/石井由紀子)

5.「君がいない夏」/DEEN

ものすごく暑かった気がする今年の夏ですが、北向きに位置する自宅の部屋では涼しい風が少しずつ入るようになりました。いつの季節もそうなんですが、夏は特に惜しむ気持ちが強くなります。幼い頃は、夏休みが一番長い休み。キャンプや夏フェスなど、この季節ならではのイベントが他より目白押し。そういう気持ちが強くなるのも無理はないのかもしれません。
と、いうわけで、今回選曲したのは、1997年に発表されたDEEN「君がいない夏」。ボーカル・池森秀一の声は、こういう切ないメロディーに本当によく合っています。別れをテーマにした楽曲なのですが、”もう戻れない時を”という言葉には過ぎゆく夏と彼女との思い出、両方の気持ちが強く込められていますね。派手さはありませんが、しみじみと夏を振り返りたくなる時に、ふと聴きたくなるナンバーです。恋人と過ごした人、特にこの夏に恋人と別れてしまった人にとってはピッタリと言えるでしょうか。(若干語弊がある表現になりますが・・・)
(選曲・文/Kersee)

6.「なつやすみ(終)」/ザ・なつやすみ
バンド

今年も、あたり前のように季節は巡ります。
暑苦しくも愛らしい蝉の「み~んみ~ん」は、涼やかな鈴虫の「りんりんりん」に変わり、モクモクと威容を誇った入道雲は、うろこ雲に主役の座を明け渡し...。
暑い暑いと辟易していたはずの夏が、いざ終わろうとすると、多くの人がなぜか「あ~あ、もう終わりか…」と思えてしまうのは、やはり「夏休み」という、普遍的で魅力的な非日常を、子供のころに経験しているからなのでしょうね。大人になって、「夏休み」がない生活を送っていたとしても。
ということで、こうしたテーマであれば、もはや外せないバンドが、この「ザ・なつやすみバンド」。 改めて、なんて素晴らしいバンド名!もちろん音楽的にも大変素晴らしいバンドなんですが、日本人の季節感覚を、これ以上明快に表現したバンド名はないように思います。今回ご紹介する曲も、ズバリ「なつやすみ(終)」。
2012年にリリースされたアルバム『TNB!』の冒頭を飾る曲。 いわば彼らの名刺代わりといったところでしょうか。もはや説明は無用でしょう。 じっくり浸ってくださいませ。
(選曲・文/伊藤威明)

著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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