芸人・チャンス大城のすさまじい話|
プチ鹿島の『余計な下世話』

 彼と知り合ってからはもう15年を超えるのだけれど、少年時代のすさまじい話はいつも楽屋の華だ。 チャンス大城はずっとイジメられっ子だった。メロンを盗んで来いという命令は最終的に「霊柩車を盗んでこい」になった。「あとで散々謝りましたがその時は必死でした。免許取って最初の運転ですよ!そのまま霊柩車でキャンプ場へ行ってバーベキューしたんです」(大城談)。

 大城は心臓が右にある。医学用語では「内臓逆位」という。『北斗の拳』にも内臓逆位のキャラがいたため、付いたニックネームは「サウザー」。ある日そのすさまじいニックネームの噂を聞きつけた隣の中学の番長がやってきた。「オイこら、サウザー出てこいや!」。校門で叫ぶ番長に、大城は慌てて駆けつけた。

「どうもサウザーです......」。

 弱々しく自己紹介する大城を見ながら、全校生徒が窓から指を差して笑っていた。そんな大城自身もやんちゃなところがあり、10代の頃、父親が寝ている部屋に野犬を放した。すぐに父親の悲鳴が聞こえた。そのあと大城はずっととぼけていたが、翌週に家族で教会へ行ったときに懺悔を決意したという。

「懺悔をしなさい」。牧師は小窓の向こうから諭してくれた。大城は父親への罪を告白した。次に大城の父親が懺悔の部屋に入った。野犬に噛まれて包帯だらけの父親の顔を見た瞬間、牧師の「小窓」は高速で閉まった。本人登場に、牧師は笑いをこらえて肩が揺れていたという。牧師さんも大変だ。

 野犬と言えばこんな話もある。大城は定時制高校に通った。夜間に集う同級生は年齢も職業も異なる。そんな夜間クラスに年に一度の文化祭のシーズンがやってきた。ホームルームで決まった出し物は「ドッグレース」。犬はどうやって用意するのかと思っていたら、「同級生」のトラック運転手が「大城、つかまえに行くで。助手席に乗れ」。

 工場の空き地まで行くと野犬がいた。年上の同級生の命令を受け、大城は必死で野犬をつかまえた。車の中で野犬の背中にスプレーで「ゼッケン」を書いた。学校につくと、またもや野犬に噛まれながらゲートに必死で入れた。しかしゲートが開いた瞬間、野犬たちはコースなど目もくれずに好きな方向へ散った。だって野犬だから。露店のたこ焼きは腹を空かせた野犬の群れに食い散らかされたという。すさまじい話だ。

 こんな話を2011年に私がやっている「東京ポッド許可局」というポッドキャスト(当時・現在はTBSラジオ)で2011年に配信したら、案の定すさまじい反響があったのである。チャンス大城のエピソードはまだまだある。先週、お笑いイベントで久しぶりに会って思い出した。

「すさまじい話」、どこかで彼に会ったら聞いてみてください。

Written by プチ鹿島

Photo by ツイッターアカウントより


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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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