ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
元号が平成に代わって早27年。それでもまだある「うわー昭和だわ」と思うような喫茶店。そうです。カフェではなく、喫茶店。そんな昭和を守り抜くお店に似合う曲を選びました。

1.「蘇州夜曲」/アン・サリー

「昭和の雰囲気」で真っ先に浮かんだのは「蘇州夜曲」。
西條八十作詞、服部良一作曲の歌謡曲で、李香蘭主演の映画「支那の夜」(1940年(昭和15年))の劇中歌として発表された名曲です。
オリジナルの李香蘭ヴァージョンも素敵なのですが、今回はアン・サリーヴァージョンをご紹介します。本業は医師という異色の経歴を持った歌手で、美しい発音、柔らかく包み込まれるような歌声が、美しいメロディと抒情的な歌詞に合い、聴いていて何とも心地好いです。
ゆったりとした時間が流れる「昭和の雰囲気の漂う喫茶店」には、まさにお似合いの曲ではないでしょうか。
(選曲・文/コーリス)

2.「アルハンブラの思い出」/ナルシソ
・イエペス

午後の疲れを癒しに入る、古い喫茶店には灼熱の夕暮れ時の、気だるい時間を感じさせるような曲が似合うのではないでしょうか。
ギターの旋律に身を委ね、一日の残された時間を思いながら寛ぎたいですね。ギターの演奏は、映画【太陽がいっぱい】のサントラでお馴染みの、ナルシソ・イエペス氏です。

私がかつてアルハンブラ宮殿を訪れた時、この宮殿の日陰で、素晴らしい庭とメスキータを眺めながらお茶を飲んで寛げたら、どんなに素敵な時間だろうかと思いました。
この曲には、立ち止まって思いを馳せる時間がよく似合います。
私たちにアルハンブラ宮殿のような素晴らしい宮殿はなくとも、それぞれの家や生活に思いを馳せたり、本の中の主人公の気分になったり。
レトロな喫茶店で過ごす時間に、こんなギターの音色はいかがでしょうか。

(選曲・文/宮川桃子)

3.「サンシャイン日本海」/Negicco

今回選曲したのは、2014年に発表された新潟のアイドルグループ・Negiccoが7月に発表したシングル。彼女たちのデビューは2003年、ここ最近注目度がグンと上がっていますがそこまで到達するのにかなりの苦労を重ねています。
先日12年ぶりのMJ出演で、同じ3人組のPerfumeとの再会も話題になりましたね。5月5日には、ついに新潟のホールで単独公演が実現、更なる飛躍が期待される、彼女たちのこの曲は昨年7月に発表された、シングル曲になります。
作曲はORIGINAL LOVEの田島貴男。田島さんと言えば、1990年代前半の渋谷系で名前が挙がる機会が多い方ですが、この曲はそれよりも前のイメージがあります。ゆったりとした曲調、上手すぎない3人の歌唱とハーモニー、そして何よりフィルム撮影のPVと映し出されるメンバーの表情。そこには、昔懐かしい昭和の雰囲気がその時代以上に漂っているような気にもなります。昭和の雰囲気が漂う喫茶店に流れるのは、当然昭和の曲がメインになると思われますが、2014年に発表されたこの曲が混じっていても違和感はないように感じますね。
(選曲・文/Kersee)

4.「『ALWAYS 3丁目の夕日』サウンドト
ラック」/佐藤直紀

映画「海猿」や、ドラマ「ハゲタカ」(NHK)等の音楽を手がけた作曲家の佐藤直紀が、映画「ALWAY 3丁目の夕日」にて、昭和のノスタルジックあふれる楽曲で構成したサウンドトラックです。
東京タワー建設が始まり、日本が高度成長期へと邁進する昭和を、下町の人情と感動あふれるタッチで描いたこの映画、公開当時の在日中国大使館の大使が、当時の中国の首相である温家宝に、「今の中国を捉えているかのような作品だ。この映画はぜひとも見るべきです。」と、中国の中央政府に伝えたと言われています。事実、その後の日中首脳会談の折、安倍総理に温家宝首相(当時)自ら、私も「ALWAY 3丁目の夕日」を見て感動したと伝えた逸話が残っています。

目をつむって聞いていると、まだパソコンも携帯電話もない昭和時代、恋人と交わしたラブレターや、友達と一緒にノートに書き込んだ交換日記、恋人の親が出ませんように(?)と願いながら掛けた黒電話・・・今よりも、ゆったりと、やわらかな時間が流れていた昭和の一時を、このサウンドトラックとともに思い出してみませんか。
(選曲・文/堀川将史)

5.「マイ・ロンリー・グッバイクラブ」
/ 和久井映見

今はお母さんや時代劇で貫禄のある役所を演じる機会の多い、ベテラン女優の和久井映見。デビュー曲ならでは、そして今でも台本がないとカメラ前で緊張してしまう彼女らしく、恥ずかしそうに頑張って表情を作る姿は、見ているこっちまで恥ずかしくなってしまう程の初々しさ。
「映見ちゃん渋いの歌うねぇ」と言われた懐かしさを感じるこの楽曲は、ドアを開けるとベルが鳴り、姿勢はそのままに目線だけ客に送るマスターのいそうな昭和の喫茶店にしっくりと、また女優、歌手、アイドルの垣根なく色々なことをするのが当たり前であった昭和の芸能界も感じさせます。作詞作曲は「タッチ」でも有名な康珍化とアイドルやアーティストの作曲も多く手がけている亀井登志夫の2人。この2人の作品を味わうだけのために、喫茶店でマスターが丁寧にいれた1杯のコーヒーを楽しむ時間を作っても良いかもしれないと思わせる、耳に残る歌詞とメロディーです。
(選曲・文/和久井直生子)

6.「 真夜中のドア STAY WITH ME」/
松原みき

オシャレなカフェとは違うけれど、タバコの香りさえインテリアの一部になっている雰囲気ある喫茶店。壁には昔から置いてありそうな飲料メーカーのロゴが入った掛け時計。いつだったか打ち合わせがてら一息いれようと、上司が連れて来てくれた時に流れていたこの曲。「この曲いいだろう?」とまるで自分の歌のように、穏やかに熱をもって教えてくれたっけ。
時が過ぎ、今度は僕が部下を連れてこの喫茶店に入る。何一つ変わらない店内。変わったのはマスターの髪くらいだろうか。偶然、時を戻すかのように流れ出したこの曲に「いい曲だろ?現代にはない音楽的ゴージャスさ...」と上司と同じように部下に話し始めた自分がいた。
窓の外には汗を拭いながら急ぎ足で進む人々。昔ながらの、ちょっと甘めのコーヒーを飲みながら昔の僕と同じように目の前の彼も「初めて聞いたけど、良い曲だなぁ」と思ってくれたりするのだろうか。

そんなストーリーが沢山詰まっていそうな昭和の喫茶店には、他にも沢山のストーリーを紡いできたであろうスーパーヒットメーカーの三浦徳子と林哲司の2人が作詞作曲を手がけたこの楽曲が良く似合うのではないでしょうか。

(選曲・文/五十嵐壮之介).

7.「浅間」/宮沢昭

日本人によるジャズ、所謂和ジャズの中でも、サクソフォニスト宮沢昭氏が1970年に発表したこの「木曽」という作品は、彼の生まれた長野の峰々をテーマにした4つの楽曲で構成された、驚くべき上質なスピリチュアルなジャズが聴ける傑作です。
日本人にもこれだけのフィーリングを持ち、演奏できる人がいたのか!と改めて驚かされる作品。この楽曲ではそれぞれのメンバーが順に暴れ回ってエネルギーを発散させるフリージャズ寄りの演奏が聴けます。
ジャズ喫茶でなくとも、印象的なジャケットを眺めながら長野の山々を想うと音楽に心を連れ去られてしまう事でしょう。
日本人ジャズを見直すきっかけになる1枚になるかと思います。
(選曲・文/田中孝典)

著者:ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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