アイドル出身ゆえの苦悩…V6岡田准一
が複雑な心境を吐露

『日経エンターテインメント』(2015年1月号/日経BP社)によれば、岡田の主演映画『永遠の0』の興行収入は87億円、動員数は700万人を記録したという。これは『アナと雪の女王』に続く第2位の大ヒットで、実写邦画では1位だ。この数字からも彼のファンに限らず、多くの人が劇場に足を運んだことがわかる。

特に中高年の心をつかんだようで、岡田も日刊スポーツのインタビューに「若い人よりもおじさんたち、サラリーマンの方々に『よかった』とすごく声を掛けていただいて」とヒットの手応えを感じたようだ。しかし岡田は「自分は役者としてはみてもらえないのではないか」というジレンマを長いあいだ持っていたという。


■アイドル出身ゆえの葛藤

岡田はジャニーズのグループ「V6」のメンバーでもある。いまやアイドルも時代と共に変化を遂げ、仕事の幅も広がっている。その選択肢の一つに役者があるが、世間からは役者である前に「ジャニーズ」「アイドル」という色眼鏡で見られる事も少なくない。そうしたイメージに加えて、役者とアイドルでは性質が180度違うと話す。

黒澤明監督はじめ昭和の名優たちは、自尊心や虚栄心が映ってしまうという理由からカメラ位置を意識せずに演じることにこだわる。まずはじめに役者としての「心」を作ることを優先させる。それに対してアイドルは、カメラ位置ありきでパフォーマンスを組み立てる、いわば“見せ方のプロ”。方法論としては対極にあるという。岡田はまずV6としての匂いを消すことから役作りに入るなど、アイドルと俳優の切り替えを特に意識したそうだ。

「これまでは、いくらやってもアイドルというイメージが拭い切れなかったのが、ようやく俳優として作品を見てもらえるようになりました。まだ足りないですけど、実感としては初めて認めてもらえたかなという感じがします。」

岡田は今年「第39回報知映画賞」では主演男優賞を、そして「第27回日刊スポーツ映画大賞」でも主演男優賞を受賞した。報知映画賞はジャニーズ初の快挙となる。2006年に「石原裕次郎新人賞」を受賞してから8年。これが限界だと長らく思っていたそうだが、心のどこかでは“認めてもらいたい”という願望があったと振り返る。


■とにかくストイック

乗馬をはじめ、いくつもの武術を修得するなど、岡田は役者として必要不可欠な基礎を身につけた。その甲斐あって体が動かせるという理由でオファーがかかった『蜩ノ記』では、殺陣も通常用いられる竹みつではなく、危険が伴うジュラルミン製を渡された。共演した役所広司とは撮影後に一緒に風呂に入り、時代劇を演じる上での心得を聞いたという。出演がない時でもカメラの後ろに立ち、共演者の演技を見守ったというエピソードには、故・高倉健と重なる。何気ないエピソードの端々からも、彼の本気度が伝わってくる。

特に時代劇ともなると求められるレベルも高く、作品もセンシティブな内容が続いたが、これもストイックで繊細な岡田だからこそ演じられたと言える。さらにここへ視聴率や興行収入などの数字がのしかかるのだからプレッシャーは相当なものだっただろう。現場を共にした『軍師官兵衛』のスタッフからは「大河史上もっとも雰囲気の良い現場」という声があがるなど、現場からの信頼も厚い。

約一年に渡って撮影された『軍師官兵衛』は12月21日でいよいよ最終回をむかえる。ストーリーの行方と並んで、彼の努力が詰まった演技をしっかりと目に焼き付けておこうと思う。


「性格も地味だしキラキラしたところに出ていくことに、まだ違和感があって」と話す岡田だが、V6は来年でデビュー20周年を迎える。すでにグループとしての活動もさかんになると同時に、早くも映画『図書館戦争』の続編に出演することが決まっている。いま以上に多忙を極めることが予想される2015年は「両立」がテーマだと語る。

V6ではいちばん年下の弟キャラ、スクリーンでは実力派の俳優と、知れば知るほどその奥深い魅力にひきこまれてしまう。


(柚月裕実)

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