不穏な時代の雲間から頭脳警察の
サウンドが轟く『頭脳警察3』
頭脳警察は懐の深い音楽性を持った
バンドだった
それにしても冒頭1曲目の「ふざけるんじゃねえよ」、「嵐が待っている」と続く反逆精神に満ちた格好良さはどうだろう。発禁騒ぎを知るファンにとっても念願のリリースで、しかもこの一撃。これぞ頭脳警察と歓喜したに違いない。アルバムは3曲目「時々吠えることがある」から一転して静かなアコースティックギターとキーボードの伴奏を付けただけの弾き語りへとスタイルを変える。この、噛みしめて歌うようなパンタの声には説得力がある。4曲目「滅び得た者の伝説」は再び激しく燃えさかるような歌だ。6曲目「前衛劇団モーター・プール」は混沌としたアバンギャルドな展開が異色だ。他にもそれまでの頭脳警察にはなかったポップな調子の「パラシュート革命」、美しいメロディーを伴った名曲「光輝く少女よ」と、静かに、ぐっと聴かせる粒ぞろいの楽曲が詰まっている。この作品はしかし、保守的な頭脳警察のファンからは早くもそっぽを向かれる結果となった。今聴くとそれほどでもないと思うのだが、ストレートなロックンロールからブルースロック、内省的な歌詞を伴ったフォーク、パンタのもう一つの側面とも言えるロマンチックなラブソングまで、彼のその後のソロ活動を暗示させるような、多彩な音楽性が示されているとも言えるのだが、それがポップだと揶揄され、硬派な路線から安易な商業主義へと転向したかのように批判を受けたのだ。
以降、パンタはソロ活動へと歩みをすすめ、ライヴ活動、ソロアルバムの制作をへて、1977年にはバンド、HALを結成し、このバンドからは名作『マラッカ』が生まれている。相棒のトシも多くのアーティストのライヴやアルバムに客演し、音楽活動を止めることはなかった。再結成を望むファンの後押しもあったろうが、頭脳警察は1990年に期間限定で再結成し、ライヴ作、スタジオ録音のアルバムも制作された。そして、2000年に入ると頭脳警察は“第三次”ともいうべき再結成がされ、マキシシングル「時代はサーカスの象にのって」('08)をはじめ、『俺たちに明日はない』('10)、『狂った1頁』('12)と立て続けにアルバムが出され、そして最新作として、結成45周年、没後30年(2013年時)を迎えた寺山修司に捧ぐアルバムとして、『暗転』('13)がリリースされている。
それ以外にもベスト盤、コンピレーション、ライヴDVD、旧作のリイシュー、最初のほうで紹介した『幻野祭』CD2枚+DVD1枚のBOXセット、『ドキュメンタリー 頭脳警察』、CD+DVD, SHM-CD(全7枚)からなる『無冠の帝王-結成40周年記念BOX』、発掘ライブ音源のリリースなど、彼らの活動を追うアイテムはひきもきらず、その姿を求める声は途切れない。決してメジャーレーベルに属して活動しているわけでもないのにである。
著者:片山明
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