声優・谷山紀彰率いるGRANRODEOがビ
ッグネーム抑えてALチャート3位 そ
の強さの理由とは?

(参考:アイドルファンと声優ファンはなぜ衝突? 溝を埋めるカギはあるのか)

 相変わらず強い竹内まりや『TRAD』以外、ほとんどが初登場となった今週。フレッシュな顔ぶれ、と書くのは少し違うし、それぞれキャリアが長く、熱心なファンを持つアーティストたちだが、かといって、ファン以外から見れば「え、これがチャート10位圏内に入っちゃう?」というか、もっと言えば「誰それ? ほんとに売れてんの?」と思われているのかもしれない。ちなみにセールスは僅差で、10位から2位までが10,000~25,000枚の数字にとどまる。ほんの数百人、数千人という買い手の差が今週の10枚を決めたわけだ。

 まず気になるのは、3位のGRANRODEO(グランロデオ)。『カルマとラビリンス』というタイトル、ジャケットも含めて完全なるV系バンドを想像するが、これは声優として活躍中のKISHOWこと谷山紀彰、そして声優アーティストの楽曲を手がけてきたe-ZUKAこと飯塚昌明のユニットだ。活動歴は長いから片手間では当然ないし、今やさいたまスーパーアリーナや大阪城ホールの単独ライブが簡単に埋まると書けば、人気のほどは理解できるだろう。

 アニメタルを例に出すまでもなく、アニソン/声優界とハードロック/メタル界は昔から親和性が高かったが、Gacktに肉薄する世界観でヒーローになりきるKISHOWには「遊び」や「フリ」がまったくない。ロンブー淳のjealkbマキタスポーツのFly of Dieがそうであるように、まったく違う畑の人間をも本気にさせる様式美というものがV系には確かにある。あるいは、V系の様式美さえ守れば出自は何でもよろしい、という許容量がシーンにあるとも言える。GRANRODEOの購買層は、おそらくアニメファンとまったくイコールではないだろう。完璧なる安定を誇るロックンロール・バンド、クロマニヨンズを抑えての初登場3位も、当然なのかもしれない。

 洋楽が強いのも今週の特徴。トニー・ベネット&レディー・ガガは話題のコラボであるが、見た目もすっかりお爺さんになってきたMr.BIGの新作が6位、エイフェックス・ツインによる13年ぶりの話題作が8位というのも、それぞれファンの「これだけは発売日に押さえとくでしょ!」という情熱を感じさせる。竹内まりやファンの多くは、たぶんリチャード・D・ジェイムスの名前を知らず、Mr.BIGがメンバーの闘病を超えて本作を完成させた話にも興味がないと思う。でも、ほんの数千〜数百人の買い手の差によって、これらのアーティスト名がひとつの遡上に載せられるというのは、やっぱチャートの面白さだなぁ。(石井恵梨子)

リアルサウンド

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