wacciが「みんなのうた」で突きつけ
る究極の選択「この曲、浮気に似てる
なって。知りたい、知りたくないの話
って結構深い」

この夏、『wacci 夏の東西 Special Live 2023』でメジャーデビュー10周年の掉尾を飾ったwacci。しかし、12月からは早くも次のツアー『wacci Hall Tour 2023~2024 -laugh mix-』が控えるうえ、10月8日には新曲「まぶたを閉じれば」を配信リリースするなど、5人の勢いは収まることがない。加えて同曲はNHK「みんなのうた」にて10・11月にオンエアされ、これまでのナンバーとはひと味違った不思議なムードを醸し出している。そんなどうにも気になる新曲のことを、生みの親である橋⼝洋平(Vo.G)に直撃。「浮気の話」にまで発展する新曲のラストとは。
――新曲「まぶたを閉じれば」は世界が幻だったら?という内容ですが、このアイデアはどこから?
子供のころ、自分以外の人や物事が全部セットやエキストラで、すべては幻で自分だけが人として生きてるんじゃないか?みたいに思ったことがあったので、それが浮かんで。その説明を(決められた曲の長さの)2分20秒という枠でした時点で、もう1曲できた!みたいな。でも今までやってない感じの曲だったので、手ごたえはなかなか感じづらくて、(ほかにも候補曲を)いっぱい書いたんです。ただ、「まぶたを閉じれば」をメンバーやスタッフに聴かせた時、俺もこれ考えたことあるって共感してくれる人がいたり、いや考えたことないっていう話で盛り上がったりしたんですよ。「別の人の彼女になったよ」(2018年8月22日リリースのシングルで代表曲の一つ)のリリース前にも、これわかる、わからないで盛り上がった経験があったので、そうやって話題にできる曲っていうのは、すごくいいのかなと思いました。
――確かに。共感する人も多いだろうし、話題にしても楽しいですね。
でも「別の人の彼女になったよ」だと、かなり(共感できる人や話題にできる人が)限定的だけど、子どものころの記憶や体験は、必然的に子どもと、子どもだったことがある大人、つまり全員(に共通する内容)ですよね。だから「みんなのうた」としてもいいと思ったし、あと「みんなのうた」って、「メトロポリタン美術館」(1984年4・5月初回放送、作詞・作曲・歌 大貫妙子)とか、よく聞くとちょっと怖いと感じる歌もあるじゃないですか。そういうファンタジックな側面もあると思うから、最後(の歌詞)は、“もしも本当にそうだとしたら それを君は知りたいかい”って。そっち寄りに書けたらいいなと思ったんです。
――思い切った締めくくりですよね。
ほかの着地も一応考えたりはしました。この設定でどういう方向に持っていけばいいか?っていう。たとえば、自分以外が全部幻だったとしても、幻でもいいから母親とか父親とか恋人とか、そういう大切な人を大切に思う気持ちは変わらない……みたいな着地にもできるじゃないですか。そうやっていい歌にもできるけど、投げかけで終わることにして。ほら、こういう話って気心知れた人と深夜の2時ぐらいになって、話題もなくなってきた時に話す宇宙の話に近いなと。そういう距離の近さを、つながる要素として聴き手に感じてもらえたらいいなっていう思いもありました。
――なるほど。ところで、ご自身はもしすべてが幻だったとしたら、その真実を知りたいですか?
僕は知りたくないです。幻だったら孤独ですよね。自分だけが生身の人間ってことですもんね。だったら知りたくない。悲しいことはいいですけど、自分がうれしかったこととか、自分がやり遂げたこととか、自分が頑張ってつかんだこととかが、全部嘘だったことになるじゃないですか。そういうのはつらいかなと思います。逆に言うと(自分以外の人に)、なんかあいつ喜んでる!みたいに思われてるってことでしょ。だから知りたくない。
――ちなみにメンバーの見解は?
メンバーと知りたいか、知りたくないかの話はちょっとしてないんですけど、うちの父親からは、「みんなのうた」で聴いた最初の感想として、私は知りたいです!っていう一行だけがLINEできました(笑)。
――さらにちなみにですが、この問いかけの先にハッピーエンドは成立するのでしょうか?
うーん。本当のことを知ったらハッピーはないんじゃないですか。でも、知らないでいることはハッピーかもしれないですね。浮気って知らなきゃ浮気じゃないっていう考え方もありますから。浮気、知りたいですか?
――とりあえずは。
そうしたら(知ったら)、その人が浮気しているわけだから、関係はもう終わりですよ。っていうのを人生で考えた時、自分以外がエキストラなのを知らなかったら、普通に80年ぐらい楽しく世の中の一人として生きられるわけですよ。孤独じゃなく世の中の一人として、大勢のなかで安心感を持って生きて死ねるわけです。浮気も自分が知らなきゃ、されてないわけですから、それと同じですよね。だから知らないのが、ハッピーエンドなのかなって思います。
――それでも個人的にはつい本当のことを知りたくなります。
真実のなかで生きたいって思ってるってことですよね。自分が見たものは、ちゃんと真実であるのかどうか。そのなかで生きたいっていう。じゃ、浮気をされてるかも?ってなったら、相手のスマホを見ますか?
――見せて。とは言うかもしれないですね。
見て、浮気を知って、別れるってことですよね。だから、そうやって浮気が発覚した時にハッピーのパターンってありますか?っていう質問だと思うんですよ。これ(ハッピーエンドが成立するのか?という質問)って。だからハッピーはないと思うんですよね。
――浮気のゴタゴタを経た先に違う幸せが待っていたらいいなと。
それはそうかもしれないですね。ただ、これ(「まぶたを閉じて」)で言うと、エキストラだったりセットだったりだからこそ感じられるハッピーなできごと。ゲームみたいに自分の人生をみんなと作れたっていうこと。だから、それはその(幻の世界の)先にこそハッピーエンドがあるっていうこととイコールになるのかなと思います。
――話を脱線させてすみません。でも興味深かったです(笑)。
実はこの前も言ってたんですよね。この曲、浮気に似てるなって。知りたい、知りたくないの話って結構深いと思うんですよ。そこにあるけど、知らないか、知ってるかっていうのは、この曲が生み出す議題ですね。
――そんな最後の一行ですが、そこまでのフリがきいていますね。曲調も歌声も音色もずっと軽やかで楽しいのに、最後だけ急に怖い。
陽気でハッピーな感じのサウンドで、おもちゃ箱のような感じが2分20秒に詰め込まれてますね。アレンジはギターの村中(慧慈)が担当したんです。「みんなのうた」に、この曲を書いたっていうの(意図)がよくわかるから、ぜひ俺がアレンジしたい!って言ってくれて、最初から最後まで全部、村中が埋めてくれて。歌詞の世界観にもこだわって、最後の一行にどう持っていくのかも計算して作ってると思います。意味を知ると、よく聴くと怖い「みんなのうた」って、ミュージシャンとしてはやってみたいところでもあるから、ちゃんと振り切ったんじゃないですかね。攻めてるところかな。SNSを見てたら、これは子どもの時に聴いたらトラウマになる!みたいな意見もあったりしました(笑)。
――では次に、12月2日(土)から始まる「wacci Hall Tour 2023~2024」の話も。とは言え、8月のスペシャルライブで、一連のメジャーデビュー10周年の大仕事を終えたばかりですよね?
去年のツアーも今年のツアーも10周年で、もうずっと10周年で、夏も大阪・東京で2本(スペシャルライブを)やって。とにかくお祝いはたくさんある方がいい!っていう(笑)。2012年がデビューなんで、2023年でいよいよ11歳の12年目ってことですね。
――でも長い休みもなく、次のツアーへ。
うちは11年間、休んだことがなくて、47都道府県ツアーも2周半してるんで、むしろ今回は(間隔が)空いた方です。でもやっぱり、この2年間で「恋だろ」(2022年6月15日リリースのシングル表題曲)とかも(世に)広がってくれて、レコード大賞の優秀賞(第64回 日本レコード大賞 優秀作品賞)ももらったりして、これまでやってきたことが報われた部分もあったので、それを経て今度はひと回りパワーアップした感じで、ちゃんといいライブをしたいなって思いますし、恩返しができたらなって思いますね。
――いよいよネクストフェーズに突入!というツアーになりますね。
……(笑)。
――違いました?
何度もネクストフェーズ、やってるんで(笑)。10歳(10周年)になった時も、ネクストフェーズ!みたいなことを、やっぱMCで言ってるわけです。でも、今回こそ!……今回こそ‼ ネクストフェーズです(笑)!
――では今回のネクストフェーズのツアーとは?
「laugh mix」(ラフミックス)っていうツアータイトルをつけました。レコーディングで全部録り終えた時に、とりあえず軽く全部の音をエンジニアさんに混ぜてもらうっていうのがラフミックス。マスタリングまでの工程の最初の段階です。ラフミックスのラフは、Rough(粗い)なんですけど、ツアータイトルのラフは、笑うのLaughに変えて、「laugh mix」っていうことで、まだ未完成の状態のラフミックスが、みなさんの歓声や手拍子や笑顔が加わって完成するという。そうやって完成するのがライブです!っていうのをテーマにして曲も作っているし、ライブで声も出せるようになったし、みんなに参加してもらえるツアーにして、最後はみんなに笑顔で帰ってもらえたらいいなと思ってます。いろんな楽曲を武器に、いい思い出が残るライブをしたいと思っているので、ぜひ見に来てほしいです。
取材・文=服田昌子 撮影=ハヤシマコ

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