「声出し解禁」だから伝えあえる思い
があふれだす『緒方恵美 アニメグ。
30th TOUR 2023』東京公演レポート

2023.6.6『緒方恵美 アニメグ。30th TOUR 2023』@SHIBUYA CLUB QUATTRO
声優活動30周年を迎え、アーティストとしても力の入った活動を続ける人気声優・緒方恵美。そんな彼女の最新ミニアルバム「アニメグ。30th」をフィーチャーしたライブツアーが、6月6日・SHIBUYA CLUB QUATTROでファイナルを迎えた。マスク着用の上で声出し声援OKとし、声出しライブ自体が初体験の新たなファンもいる中で繰り広げられたライブハウスならではの熱くて暖かなライブの様子をお送りしよう。
開場時間の間際から雨が降り出す中、SHIBUYA CLUB QUATTROには入場を待ちわびるファンの列が伸び、スタンディングの会場内もツアータオルを首にかけ、ブルーとイエローのコンサートライトを手にしたファン達の熱気とざわめきに包まれていた。そして19時を過ぎたところで、スピーカーから響き渡る激しいメロディと共にバンドメンバーがスタンバイ。そして白いコート・ブーツ・マフラーと純白の出で立ちで緒方恵美が登場すると、場内は爆音に負けないくらいの歓声に包まれ、いよいよライブの幕が上がった。
オープニングはどちらも重低音のサウンドがフロアを揺るがすような「聖者の行進」「絶望性:ヒーロー治療薬」というロックナンバーの二連発でスタート。迫力満点の生演奏に負けない低音ボーカルで、絶望の世界から立ち上がるメッセージが込められた二曲を力強く歌い上げ、最後はパワフルなシャウトで締めくくった。
「こんばんはー! ファイナル東京! めっちゃ来てくれてありがとう!」
スタートから熱い声援を送ってくれた満場のファンへのお礼の言葉でMCがスタート。今回のツアーはいずれも久々の声出し声援OKだったため、最初の名古屋公演では久々の声援を浴びて「そのまま死ぬかと思いましたが」とようやくコロナ禍前のライブの風景が戻りつつあることを喜び「思いきり声出して飛んで楽しい一日にしてください」と語った。
そして声出しNGの時期のライブしか知らず、今回が初めて声出しをするという新規のファンも多いことから「古の民のみなさんもリードしてガンガン盛り上げていきましょう!」と以前からのファンにゲキを飛ばして、再びライブがスタート。
続いてのパートは激しかったオープニングとは代わってしっとり聴かせるナンバーぞろい。「プラチナ」は自らが演じた月(ユエ)として、そして「One Last Kiss」は碇シンジとして26年間を共に歩んだ『エヴァンゲリオン』への思いをこめて、コンサートライトを振りながら聴き入るファンに語りかけるように歌を紡いでいく。
そして「逆夢」は劇場版『呪術廻戦0』で演じた乙骨憂太の里香への思いを乗せるように、静かな独唱からだんだんと力強い歌声を響き渡らせる。そして最後はキーボードのメロディと共に絞り出すような独唱で締めくくり、場内は大きな拍手で包まれた。
「そろそろ面談のお時間ですよ?」
その言葉と共に始まったMCでは、今日来場したファンに「初めて来たという人」「名古屋と大阪に来てたという人」そして「初めて緒方の声出しライブに来たという人」と挙手でのアンケートを採りながら、改めて声出し声援が可能になったことの嬉しさを語った。
そして緒方恵美のライブ恒例のバンド紹介では、各メンバーにコールが飛び、何故かそれぞれが星座と血液型を告白するなどして笑いを誘う。そして突然「Happy Birthday to You」の歌が流れ、今日が誕生日の緒方恵美をステージで祝うサプライズが。スタッフからの記念の寄せ書きに書かれたネタに走ったメッセージを晒して笑いを誘い、さらには酒枡とお酒のプレゼントをもらった際のやりとりで、ギター・目木とーるが「失礼だな、純米だよ」と『呪術廻戦0』の名セリフのパロディで返すと、それを緒方が乙骨憂太の演技で繰り返して場内が喜びの歓声で包まれる一幕も。
そしてファンと一緒に盛り上がろうと、次のライブパートに行く前に「次の曲、サビの部分を一緒に唄ってください」と緒方のレクチャーがスタート。曲中で繰り返されるサビのフレーズ「oh,Let's get loud,OK」を何度か声を合わせて繰り返し、いよいよみんな一緒に盛り上がるライブパートが再スタート。
繰り返す日々を乗り越えながら明日へ進もうという前向きなメッセージソング「Ready」を緒方が語りかけるように唄いあげ、練習したサビの部分になると場内のファン全てが一体となって「oh,Let's get loud,OK」と声を上げてハーモニーを奏でていった。
続いては緒方が直井文人を演じた『Angel Beats!』のナンバーのメドレーがスタート。「誰かに自分を認めてほしい」という複雑な思いを抱えた直井の気持ちを込めて、語りかけるような歌声で「My Soul,Your Beats!」を1コーラス唄い上げると、そのまま力強いシャウトでGirls Dead Monsterの「Crow Song」へと雪崩れ込んでいく。静かな前曲から一転しての激しいパンクナンバーを、緒方は力強いシャウトと共に熱唱。ファンとコール&レスポンスを繰り返しながら腕を振り上げて盛り上がり、最後は「いくぜ! 飛ぶよ!」のゲキと共に全員でのジャンプを決めて、場内の全員が一体となって盛り上がった。
ツアーのオープニングとなった名古屋公演では、盛り上がりすぎて途中で水を飲むのを忘れていたというエピソードを交えながら、ライブもいよいよラストパートへ…と緒方が告げると、会場からは「イヤだー!」という叫びと共にフロアを揺らすような地団駄が。声出し声援NGだった時期に、終わりたくないという気持ちを無言で表すためにangelaのatsukoが発明したという地団駄誕生エピソードも披露しつつ、ファンの気持ちを嬉しく受け止める緒方。そして名残惜しさを残しながらもいよいよライブもラストスパートへ。
レコーディングの時からすごく楽しかったというトークから、地鳴りのようなドラムと重低音サウンドと共にスタートした「No.7」、そしてオリジナル版はL'Arc~en~Cielが唄った軽快かつパワフルなメロディの「Driver's High」と、ノリの良いロックナンバーの二連発に場内のテンションも一気に急上昇。緒方とファンが共に手を振り上げたり、息を合わせてジャンプをしながら共に盛り上がりながら、いよいよライブもクライマックスへ。
緒方恵美の声優デビュー30周年の節目でもある今回のライブのラストを飾るのは、すべての始まりにして原点でもあるデビュー作『幽☆遊☆白書』のオープニングナンバー「微笑みの爆弾」だ。ファンにとってもこれ以外あり得ないという定番ナンバーに盛り上がり、ステージの緒方と共にクラップを合わせながら盛り上がる。そしてサビの「ありがとうございます!」に合わせて緒方が優雅に感謝のお辞儀をすると、場内が大歓声に包まれる。そして終わり手前では「今日は本当にありがとうございました!」のお礼に続いて「風華円舞陣! 薔薇棘鞭刃(ローズ・ウィップ)!!」と、自身が演じた蔵馬の必殺技のシャウトを披露するなど、ファンには嬉しいサプライズも。そして最後は激しいドラムのロングソロからのシャウトで、熱いライブの時間を締めくくった。
「ありがとうー!」とファンの声援に応えながら緒方はバンドメンバーと共に引き上げ、ステージの照明も落とされるが、すぐさま場内にはファンからの「アンコール!」の声が響き渡る。そんな久方ぶりのファンからの生の声に応えて、ツアーTシャツ姿の緒方が再び登場して、アンコールステージが始まった。
ギター・目木とーるの奏でるアコースティックギターの調べに乗せて始まったのは、緒方のオリジナルナンバーから「アイノウタ」。不安で孤独な夜も、愛する人の声や笑顔を思って唄い生きていく……今回のライブでのファンへの気持ちと重なるような歌を、語りかけるような独唱で唄い上げると、静かに聴き入っていたファンの大きな拍手が場内を包み込んだ。
歌い終えて改めて残りのバンドメンバーを呼び込んだ緒方は、新型コロナ禍ですべてが変わってしまった時から今日までを振り返りながらその気持ちを語った。
みんな二ヶ月ほど仕事が無くなる中、2020年のこの日に配信の無観客ライブをおこなったが、普段はファンのみんなの目を見ながら唄っていただけに、どこに向かって唄えば自分のエネルギーが届けられるのがわからなかったこと。
規制されながらライブが再開された後も、ファンのみんなが声を出して声援を送りたいのを我慢しているのがわかって辛かったこと。
それだけにこのツアーで声出し声援を解禁できたことが本当に嬉しいし、人と人が繋がって、そこから言葉が生まれることを忘れてはいけないと会場と配信で見てくれているファンへと語りかけていった。
そして緒方の誕生日を祝う花とケーキがステージに持ち込まれ、客席からファンからの「Happy Birthday to You」の歌声が贈られた。
「みんなからもらったと思って」とケーキを食べ、声を出して祝ってもらえるのは本当に幸せと笑みを浮かべる緒方から、お酒と共に洋楽を楽しむライブ「M’ sBAR 2023」(8月12日・会場:代官山「晴れたら空に豆まいて」)と、心と体がととのうエールロックライブ「禊2023-ととのう-」(12月23日・会場:神田明神ホール)の開催決定の嬉しいお報せと共に、アンコールライブが再びスタート。
改めてのメンバー紹介を交えながら「freedom! say yes!」とコール&レスポンスを交わしながら、「freedom」「Breaking Dawn」「Try Out, Go ON!」の三連発でステージと場内が一体となってラストへ向かって突き進む! 緒方とファンがメロディに乗せてツアータオルや拳を天に突き上げ、熱いシャウトとコール&レスポンスを重ね合わせていき、曲が代わるたびにテンションも上がっていく。
「本当にサンキュー! 飛ぶぜ!」
これからもみんなでがんばって生きていこうというメッセージと共にジャンプを決めて、アンコールステージも終了。メンバー全員が手を繋ぎながらのお礼の挨拶でライブは締めくくられ、終了のアナウンスが場内に流れる中で再びファンからのアンコールの声援が。それに応える様に終了アナウンスを「と、思いましたけど」と遮って、三度緒方とメンバーがステージに登場!
「サンキュー! 本当にありがとう!」
「誕生日はお母さんが母になった誕生日」と言う例えにちなんで、30年間声優業界を生き延びてファンのみんなと出会えた今日が自分にとっても新たな誕生日だと感謝を伝える緒方。
「大変なことがあると思いますが、手元にある楽しいことを数えて生きてまた会いましょう」
そんなメッセージに続いて「今日は素晴らしいバースデーだね…これが絶望の中の希望だよ…希望のバースデーだね」と、『ダンガンロンパ』の超高校級の「希望」苗木誠のような語りから、その言葉通りのラストナンバー「絶対希望バースデー」へと雪崩れ込んでいく。
キーボードの静かなメロディに乗せての「WoW WoWWoWWoWWoW」のコールを交わし合う緒方とファン。そして「そのまま突っ走っていこうぜ!」からのゲキと共に、絶望の中でも希望を求めて輝こうという、今とシンクロするようなメッセージソングを力強く歌い上げ、客席にもマイクを向けてファンからのコールを受け止めていく。そしてこれからも共に明日を生きていこうというメッセージを込めた全員でのジャンプで、今度こそのラストを見事に締めくくった。
「ありがとう……またネクストタイム!」
誕生日プレゼントの花を抱えながら、生声でファンへの最後の挨拶で、ライブツアーファイナルは大団円で幕を閉じた。
新型コロナなどまだまだ油断できない状況ではあるものの、みんなと繋がれる新たなライブの時間が始まっている……そんな希望を感じさせてくれた「緒方恵美 アニメグ。30th TOUR 2023」ファイナル。ますます円熟味を増していく緒方恵美が、これからどんな活躍を見せてくれるか期待も高まる一夜となった。
取材・文:斉藤直樹

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