それぞれの思いが楽曲の翼に乗って飛
び立つ 『sings ジブリ』コンサート
第二弾開催~これからの人生を支えて
くれる、音楽の力が紡ぎだす美しい光
景があるはず

島本須美井上あずみ、角野隼斗、菊池亮太による歌とピアノのスペシャルコンサート『sings ジブリ』が、2023年7月17日(月・祝)東京・東京国際フォーラム ホールAで開催される。
『sings ジブリ』コンサートは、スタジオジブリの設立者でもある宮崎駿監督のあまたある傑作映画を、心に深くしみこむ音楽で彩り、作品のテーマや世界観を提示しつづけてきた作曲家・久石譲の名曲の数々を、歌とピアノでお届けするコンサート企画。昨年2022年4月から6月にかけてコンサートツアーが初開催された(出演:島本須美、麻衣、角野隼斗、菊池亮太)。
『風の谷のナウシカ』の「ナウシカ・レクイエム」、『魔女の宅急便』の「海の見える街」、『天空の城ラピュタ』の「君をのせて」などなど、世界で愛され続けているジブリワールドを象徴するのはもちろんのこと、作品からある意味で一人立ちを果たし、スタンダードな名曲としても広く親しまれているジブリメロディーを、音楽として楽しもうという趣向のコンサートだ。
第二弾の開催を前に、2022年の模様を振り返り、その見どころをお伝えしよう。
島本須美/井上あずみ/角野隼斗/菊池亮太による歌とピアノのスペシャルコンサート「sings ジブリ」スペシャルゲスト 加藤登紀子 CM動画
音楽の力を信じた美しい構成
特に、2022年のコンサートツアーで感じたのは、こうした映画音楽を、オーケストラの生演奏で楽しもうという企画とは、ひと味違った歌とピアノのスペシャルコンサート 『sings ジブリ』の持つ、演奏者の顔と個性が、楽曲の素晴らしさと共に舞台に弾ける楽しさだ。
例えば、2022年のコンサート初日には、スクリーンに映像も映し出されていたが、ジブリ映画の名場面を次々と見せて、視覚からもその世界に誘おうという趣向ではなく、山々や、海と空といった自然の光景を象徴的に映し出すものだったのが印象深い。それによって、この音楽で思い出すのはこの場面ですよね、と敢えて特定しないからこその、聞く人それぞれの心のなかに広がるジブリ映画の場面や、さらに映画を観た時、音楽を聴いた時の、百万人なら百万通り、一千万人なら一千万通りあるその人だけが持つ思い出の情景にひたることを許してくれる、音楽の力を信じた構成が美しい。しかも、基本的にはピアノ二台でられる音楽が、時にはソロ、時には角野隼斗、菊池亮太の ”競演” と言いたいセッションによって奏でられることの、ピアノという楽器の可能性も感じさせてくれる。
【ルパン三世】カリオストロの城より/サンバ・テンペラード/大野雄二 Cateen×Ryota Kikuchi
「ナウシカ・レクイエム」では微かに遠くから響く繊細な音、一転して「もののけ姫」ではフルオーケストラの全ての楽器の音域を、実は1台でカバーできるピアノの特性を生かした、菊池渾身のアレンジによる大迫力の演奏が壮大なスケールで届けられる感動に心震えた。
『ハウルの動く城』の「人生のメリーゴーランド」では、角野がピアノの譜面台位置に置かれた鍵盤ハーモニカを用いて右手でメロディーを、左手ではピアノ鍵盤で伴奏をという、一人で二つの楽器をあやつって、楽曲に相応しい素朴な音色を際立たせたし、『魔女の宅急便』の「海の見える街」ではこのコンサートが初挑戦だったというボタンアコーディオンで粋にメロディーを奏でる角野と、菊池のピアノによる会話のような音の掛け合いが展開される。
更に2コーラス目からは角野もピアノの前に位置し、それぞれのピアノでの大競演に発展していく構成も発想も豊かそのもの。ピアノが弾ければアコーディオンは弾けるでしょう?と軽く言われることもかなりあるが、鍵盤が縦になっていることだけでもプレッシャーは大きい上に、両者は言うまでもなく全く違う楽器。そこに果敢に挑戦していくチャレンジ精神と、この楽曲を観客にどう届けたいか、を最大限に優先する姿勢が頼もしかった。
人の声と歌声が届ける温かさ
だからこそ、島本の歌声と、台詞の声を大切に、大切に扱っている姿勢もよくわかり、楽器としての「声」の素晴らしさを伝える楽曲の展開は見事だったし、島本がヒロイン役を声で演じていることを媒介にして、2幕冒頭に用意された『ルパン三世 カリオストロの城』からの「ルパン三世のテーマ~サンバ・テンペラ―ド」も全く自然にジブリコンサートのなかになじんでいく。
なんと島本と作品中で最も有名な会話を再現して見せた菊池が、大野雄二の名旋律を弾き、やがて角野との二台ピアノで、サンバのリズムで繰り広げられるセッションは切れ味鋭いこれぞ名手の掛け合い。椅子から立ち上がるようにして演奏する場面も、決して華やかに見せるだけの目的ではなく、そうすることによって鍵盤を走る指に自身の体重が乗って、更に音に力が増すことをわかっている二人による、グリッサンドを多用した音と音との自由な飛翔がヒートアップした様は忘れられない時間になった。この熱さがあるからこそ、島本の未だ透明感と少女性を失わない、清らかで温かい歌声をより高みへと飛翔していく感覚も心地よい限り。

「炎のたからもの」 島本須美/角野隼斗/石若駿(ワーナーミュージック・ジャパンより)

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音楽の力が紡ぎだす未来へ
そんな思い出もつきない第一弾のコンサートから、更にパワーアップした今回の2023年『sings ジブリ』では、どんなセットリストが組まれるのかにも期待が高まる。
『風の谷のナウシカ』でナウシカ役、『となりのトトロ』でお母さん役、『もののけ姫』ではトキ役を務め、ジブリファンにはおなじみの声優であり、2019年に角野隼斗のピアノとアレンジで『singsジブリ リニューアルピアノバージョン』を発売したことが、この『singsジブリ』コンサート開催のきっかけになった島本須美。
そのアルバムの音楽を担当し、ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリストの栄誉を得たのち、数々のオーケストラと共演しつつクラシックフィールドにとどまらず、クラシック音楽で培った技術に、即興演奏の醍醐味を融合した独自のスタイルを持つ新時代のピアニストとして、“Cateen(かてぃん)“名義で活動する、 YouTubeチャンネル登録者数120万人突破を誇る角野隼斗。
音楽大学在学時より数々の国際コンクール、オーディションで受賞し、ピアニストとしてのソロリサイタル等の活動と並行して、アーティストのサポートや、現在ではテレビ、映画、アニメ、ゲーム、東京オリンピックCM等の楽曲制作も手掛け、YouTube動画視聴回数2億回以上、チャンネル登録者数58万人超えの人気で、自身のバンド「アノアタリ」では、キーボード・作曲も担当している菊池亮太の、2022年からの続投となる三名が再び集結。
それに加えて、『天空の城ラピュタ』の挿入歌「君をのせて」、『となりのトトロ』のオープニング主題歌「さんぽ」、エンディング主題歌「となりのトトロ」を歌った、ジブリメロディーのミューズ井上あずみが初参加。
更に「ひとり寝の子守唄」「百万本のバラ」「知床旅情」などの、日本の音楽シーンに残るヒット作を持ち、スタジオジブリ作品『紅の豚』では劇中歌「さくらんぼの実る頃」、エンディング曲「時には昔の話を」を歌っただけでなく、声優としてマダム・ジーナ役も演じた日本を代表する歌手の一人、加藤登紀子がSpecial guestとして参加することが決定。時を超えて愛され続けるジブリ作品の音楽たちが、ピアノと歌と作品ゆかりの面々が語る楽しいエピソードとナビゲートで奏でられ、ここにしかない『sings ジブリ』の世界が展開されていく。
人選からしても「風の谷のナウシカ」「君をのせて」「さんぽ」「さくらんぼの実る頃」「時には昔の話を」が聞けることはまず間違いないだろう。映画『風の谷のナウシカ』が公開された1984年にはまだ生まれていなかったという角野と菊池が、名曲を自由なアレンジで演奏する姿に、ジブリメロディーが時代を超え、不朽の名曲として歌い継がれ、弾き継がれていることが端的に表れるコンサートに、オリジナル歌手である島本、井上あずみ、加藤登紀子が揃う奇跡のコンサートから届けられるものは、果てしもなく大きいに違いない。
そんな新たなコンサートからあなたは何を受け取るだろう。是非、一人ひとりの大切な思い出と、更に楽曲がつなげる未来とを、東京国際フォーラム ホールAの空間いっぱいに広がるジブリメロディーワールドから感じとり、新たな思い出を作って欲しい。そこにはきっとこれからの人生を支えてくれる、音楽の力が紡ぎだす美しい光景があるはずだ。
文=橘涼香

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