だからライブハウスは面白い! ポッ
プで型破りな世界でステエションズが
魅了する、リリイベ東京公演をレポー

ステエションズ2nd Album "ST-2" Release party 2023.05.12(fri)下北沢MOSAiC
面白いバンドに出会っちゃったな! という気持ちと、だから、ライブハウスは面白い! という気持ちで、久々に胸の躍る夜だった。関西を拠点に活動する、4人組ニュースクールポップバンド・ステエションズが、2ndアルバム『ST-2』をリリース。そのリリースライブが、下北沢MOSAiCにて行われた。出演はアロワナレコード、Lym、そしてステエションズ。2019年結成、東京でのライブ本数もまだ少なく、知る人ぞ知るの存在ではあるバンドだが。会場にはライブハウスに高くアンテナを張った、多数のオーディエンスが集結。ポップで型破りなステエションズの音楽世界に魅了された。
アロワナレコード
アロワナレコード
この日、トップバッターで登場したのは、東京を中心に活動する5人組ポップバンド、アロワナレコード。1曲目「巡る季節に身を任せ」のゆったりしっとりしたアコギの弾き語りでライブが始まると、夕焼け感あるどこか切ないサウンドに映える、藤井陸(Vo&Gt)の伸びやかなハイトーンが胸を締め付ける。「愛の行先」、「あいより出でて」と続き、心地よい丁寧な演奏に鍵盤のフレーズが情景を広げ、ソリッドなギターがフックを生んでと、聴きどころ満載のステージで魅せた彼ら。
アロワナレコード
アロワナレコード
「暑くなってきましたね」のMCから、じわっとした夏の夜を思わせる「夏めく夜に」を披露すると、ラストはリバーブの効いたボーカルでディープな世界へと誘い、激しく感情的に展開する「大都会」でフィニッシュ。短い時間ながら、楽曲世界に気持ちよく浸らせてくれた。
Lym
Lym
たかぎれおと(Vo&Gt)のウェットな歌声で始まった「花と舞う」で、1曲目からオーディエンスの心を掴んだのは、同じく東京を中心に活動する4人組ロックバンド・Lym。続く「フライト」は疾走感ある曲調に、フロアから自然と手拍子が起きる。体調不良で出演出来なくなったライブに急遽、代打で出てくれたステエションズがカバーしたというエピソードを話して始まった、「ランドリー」、「March」とセンチなラブソング続いた中盤戦。
Lym
Lym
各パートがしっかり主張しながら、綺麗に調和するどっしりしたバンドアンサンブルに支えられ、たかぎの歌声がエモーショナルに響く。ラストは「朝が来ないように」のたっぷり感情を乗せた歌と演奏で、聴く者の胸を締め付ける。高い演奏力と表現力でしっかり魅せるライブだった。
ステエションズ
ステエションズ
そして、この日のトリを務めるのは、もちろんステエションズ。CHAN(Vo&Gt)の深いブレスから<I hate you>と始まる、最新アルバム『ST-2』に収録された「LOVE」の感傷的な歌声でドキッとさせると、弾き語りから楽器隊の音が徐々に重なり、美しく壮大にライブをスタート。グルーヴィーな演奏に意外性のあるラップ調のボーカルを乗せた「CLASSIC」から、軽快な4つ打ちビートに、歌詞のワードやスペーシーな鍵盤ソロが引っ掛かりを残す「OX」と続いて観客の体を揺らすと、ポップな曲調にリードコーラスが特徴的なキャッチーなサビがライブ映えする「YOUTH」へ。どの曲もポップながら、一筋縄でいかないところがなんとも面白い。
ステエションズ
続いて、ポエトリーリーディングのようなMCから、「上手く生きられないキミへ、一人ぼっちだと思ってるキミへ。僕と一緒にとんでもない回り道をしよう」と曲紹介をして始まった曲は「PHEW」。温かみあるサウンドに乗せて、一人ひとりに語りかけるように歌うCHAN。虎太郎(Dr&Cho)とCHANの掛け合いによるツインボーカルや変拍子が心地よい違和感を生む「QUEEN」は、曲後半のCHARLIE(Ba&Cho)のロボットボイスからテンポアップ。予想もしない展開だらけの楽曲に、ドキドキとニヤニヤが止まらない。
CHAN
GAL
ライブはいよいよクライマックス。歌うことへの決意をったポエムの朗読から始まった、浮遊感のあるGAL(Key&Cho)の鍵盤やエフェクティブなサウンドが心地よい「SCHOOL」に続く、本編ラストは最新アルバムから「SEPARATE」。CHANの感情的なボーカルとそれをなぞらえるようなサウンドに、「そうか、ステエションズの楽曲に感じる心地よい違和感やヘンテコさは、思考や感情と楽曲が直結しているからなんだ」と妙に納得。
一般的な曲作りのフォーマットにとらわれず、曲のテーマやそこにある思考や感情をダイレクトに反映したステエションズの楽曲たち。だからこそジャンル不問だし独創的だし、曲中の急な展開や変拍子やエフェクト効果といった心地よい違和感を感じさせる効果も、思考や感情にしっかり寄り添っているからこそ。
CHARLIE
虎太朗
アンコール時、初めてアドリブでMCをしたCHAN。「伝えたいことがたくさんあったんですけど、伝えるのが下手くそで。思ってることたくさんあるけど、こんなんしか伝えることが出来なくて。でも、私は死ぬ気で歌うことは出来ます。これが終わったら死ぬと思って出来るので、それをします」と不器用に語っていたが、その言葉に出来ない“伝えたいこと”をしっかり音にしたのが、ステエションズの楽曲たちなのだろう。
ステエションズ
伝えたいことを音にするというのは、ミュージシャンとしては当たり前かも知れないけど。ルックスだけ見ても同じバンドとは思えない個性的な4人が集まって、それぞれの思考や感情を歌や音にダイレクトに反映して、ポップソングとして成立させるというのは、誰でも出来ることじゃない。アンコールは最新アルバムのラストに収録された「LUCK」。<カラーシャンプーをぶちまけたいよ>と高らかに歌うCHAN、メンバー紹介を兼ねた各パートのソロで強烈な個性を放つ楽器隊。ここまでライブを見てすっかりファンになってた俺は、「この4人の頭の中が覗いてみたい」と思いながら、これが終わったら死ぬと思いながら演奏してるであろう、渾身のステージを前のめりで見ていた。次はぜひインタビューでお会いして、4人の頭の中を覗いてみたいと思う。

取材・文=フジジュン 撮影=モリウチ ハルカ
ステエションズ / Lym / アロワナレコード(順不同)
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