[Alexandros]とVaundy、そして観客の
熱量がぶつかり合った『ディスフェス
』横浜2日目

THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23 2023.5.18. KT Zepp Yokohama
今年は全国ツーマンツアー形式で開催中の[Alexandros]主催『THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23』、通称ディスフェス。かつては日本一遅い夏フェスと銘打っていたこともある気がするが、今年はこの時期としては記録的な暑さとなった5月17・18日に、日本一早い夏フェスとして開幕した。
【※以下のテキストには、一部演奏曲名の記載があります。あらかじめご理解の上お読みください】
ツアー緒戦のKT Zepp Yokohama 2デイズのうち、2日目の5月18日公演のゲストはVaundy。今年3月に大学を卒業したばかりと年齢はまだ若いが、アリーナもフェスも紅白も、自分のステージに変える実力を持つ正真正銘のライブアーティスト。サポートミュージシャンによるバンドサウンドは、時に雷鳴を伴う豪雨のように強烈になるが、Vaundyの歌声自体も超骨太で、何があっても揺るがなさそうなほど頼もしい。
MCで「正直な話、呼ばれると思っていませんでした」と言っていたが、自分自身が覚醒しながら、観客にも全力を求めるライブのやり方は[Alexandros]とも近い気がした。そんなVaundyは「恋風邪にのせて」、「そんなbitterな話」、「踊り子」など13曲を披露。「毎回対バンは俺で1回(観客の体力を)終わらせようという気持ちでやってます」、「温存してんじゃねえ!」と煽りながら、「CHAINSAW BLOOD」、「泣き地蔵」、「花占い」で畳みかけた終盤は特に圧巻で、ラストは「怪獣の花唄」で床が揺れるほどの盛り上がりを生み出した。
Vaundyのライブが終わると、[Alexandros]のメンバーが登場。「Are you ready Yokohama!?」という挨拶を合図に、衝動に駆り立てられながら川上洋平(Vo/Gt)、磯部寛之(Ba/Cho)、白井眞輝(Gt)、リアド偉武(Dr)が鳴らすバンドサウンドとその音楽に盛り上がるオーディエンスの熱量が激しくぶつかり合う。
今回はアルバムのリリースツアーではないため、1stアルバム『Where's My Potato?』からの「Yeah Yeah Yeah」など予想外の選曲が面白い。また、ライブでは定番のアンセムに関しても、今のメンバーの気分に合わせてボトムからリニューアルされているから聴きごたえ抜群、かつ音楽とともに踊りたくなる感覚が刺激されまくりだ。観客がノリノリなのはもちろん、ステージ上の川上もバンドの演奏にノリながら軽やかにステップを踏んでいる。
「閃光」や「ワタリドリ」ではフロアから大きなシンガロングが発生。「ヤバいね。みんな最高の声してます。思わずイヤモニ外しましたよ」と観客に伝えた川上、耳に手を当てて前に乗り出す白井、自分のマイクを観客の方に向けた磯部、大合唱が起こるたびに目を輝かせるリアドと、観客のリアクションをメンバーは嬉しそうに受け取っていた。さらに、長いコロナ禍を経て戻ってきたのは声だけではない。「声出しNG」「ライブ中はマスク着用」をはじめとした感染症対策ガイドラインが今回のツアーから完全になくなったことで、人が人の上を転がるライブハウスならではの光景も3年ぶりに蘇った。そうだ、[Alexandros]のライブは本来こうだったとメンバーもファンも思い出した瞬間だった。前方に転がってきたダイバーとがっちりと握手を交わしていた川上。湧いた感情が抑えきれなかったからそうした、という感じが観客の様子から伝わってきて「泣きそうになった」という。
こうなったらもう、バンドも観客もテンションが上がる一方だ。メンバー一人ひとりの気合いや喜びが音楽の中に漏れ出ている。上機嫌の川上は、自分一人での弾き語りパートで「ちょっといつもと違う感じでやろっかな」とオアシスの「Wonderwall」を口ずさむ。“思わずつい”というテンションで一緒に口ずさんだ人がフロアの中にいたから、さらに上機嫌になっていったのも、その後披露した自分たちの曲「Adventure」でさらに大きなシンガロングを起こしていたのも含め、微笑ましい場面だった。
さらに、ライブ中には「せっかく出てくれたので、僭越ながら歌わせてください」とVaundy「踊り子」をカバーする貴重な場面もあった。「最高の2日目をありがとう。その理由はやっぱり、一発目に登場してくれたVaundyだと思います」と語った川上は、先のVaundyの発言を受け、彼をツアーに誘った理由について「単純に彼の曲のファン」「俺が本当に大好きってだけ」「先輩後輩は関係ない。カッケーやつはカッケー」と明言。なお、MCでは、前日のゲストだったSUPER BEAVERとは打ち上げでも盛り上がり、深夜1時半まで語り明かしたことが明かされた。メンバーは9年ぶりの対バンツアーをステージ上でもバックヤードでも楽しんでいるようだ。
気持ちのよい盛り上がりとともに幕を閉じた5月18日公演。「THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23」は5月26日のZepp Sapporo​公演(w/WurtS)から6月30日のZepp Nagoya公演(w/go!go!vanillas)まで、このあと7公演を控えている。「いやいや、2日目でこうですから、ヤバいよね」と川上も言っていた通り、ここからもっとヤバいライブが全国各地で繰り広げられるに違いない。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=河本悠貴

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