[Alexandros] 約9年ぶりツアー形式の
『ディスフェス』初日、SUPER BEAVE
Rとの競演をレポート

THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23 2023.5.17. KT Zepp Yokohama
[Alexandros]の対バンライブツアー『THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23』の初日公演が5月17日、神奈川・KT Zepp Yokohamaにて開催された。バンド結成当初から、幾多の精鋭バンドをゲストに迎えて実施されてきた自主企画『THIS SUMMER FESTIVAL』(通称:ディスフェス)。2014年の東名阪開催以来、約9年ぶりのツアー形式での実施となる今回は、横浜/札幌/福岡/大阪/名古屋の5会場・計9公演のZeppツアーとして開催されている。
ツアー初日となるKT Zepp Yokohama公演1日目、ゲストとして登場したのはSUPER BEAVER。冒頭の「27」からエモーション全開の激演に熱く沸き返るフロアを、「始まってますけど? そんなもんっすか横浜!」と渋谷龍太(Vo)が絶唱とともに煽り立ててみせる。「突破口」では見渡す限りに観客の拳が力強く突き上がり、<威風堂々><正々堂々>のコール&レスポンスが響き渡る。「対バンの一番いいところは、メインアクトが、その一個前のアクトに影響されるってことです。俺たちがすごいのをやったら、先輩はそれを超えてこようとすると思うんで。俺たちと一緒に、最高の音楽を作りましょう!」という渋谷のMCに、拍手と歓声が広がる。
渋谷も思わず「19年目史上一番いい夜を、あなたと作れそうな気がしてるんで!」と呼びかけるほど、手応えと感激を露わにしていたSUPER BEAVER。形式的には、この日のステージにおいてはSUPER BEAVERは"アウェイ"のはずだが、"ホーム"や"アウェイ"といった概念すら無効化するような熱量は、『ディスフェス』ツアーの開幕をこの上なくドラマチックに彩るものだった。
加えて、長いコロナ禍を経て、ライブハウスの高揚の風景がようやく戻ってきた――という実感が、メンバー/観客問わず会場のボルテージを増幅させていく。ラスト「東京流星群」のフロア大合唱を、「たぶん楽屋まで聞こえないぜ! 聞かしてやろうぜ[Alexandros]に!」という渋谷の声が、さらに熱く激しい高みへと導いていった。
そして[Alexandros]。ツアー継続中のためセットリスト全掲載は割愛させていただくが、「閃光」「ワタリドリ」といったヒット曲から「Yeah Yeah Yeah」など旧曲まで幅広い選曲を通して、[Alexandros]のロックンロールの原点も最進化形も、クールさもワイルドさも、そのすべてをダイナミックに提示する圧巻のステージだった。
川上洋平(Vo.Gt)の「Are you ready, Yokohama?」のコールから流れ込んだ「閃光」では、磯部寛之(Ba.Cho)・白井眞輝(Gt)・リアド偉武(Dr)の疾走感あふれるイントロからOiコールが巻き起こり、川上のハイトーンボーカルとタイトなアンサンブルが、会場のクラップやシンガロングと一丸となって、怒濤のスケール感のロックの絶景を繰り広げていく。さらに、後半のコーラスのパートの、歌で魂を解放するかのようなオーディエンスの大合唱――。2021年、コロナ禍の真っ只中に生まれた[Alexandros]のキラーナンバーが今、ライブの熱狂とともに鳴り渡っているという事実に、思わず胸が熱くなった。川上が「みんな、いい歌声してます! ほんと、イヤモニ最初から外しちゃったもん」と語りかける言葉が、歓喜の大歓声を呼び起こしていく。
「いつもはバンドでやってるんだけど、今日はアコースティックギター1本でやろうかなと思って。なんでかっていうと……この曲では、みんなに主人公になっていただこうかなって」
そんな前置きとともに、川上がひとり弾き語りで歌い始めたのは、雄大なバラードナンバー「Adventure」だった。「みんなに主人公に~」の言葉通り、時折川上がメインボーカルをフロアに託すたびに、そしてコーラスパートに差し掛かるたびに、会場一面のシンガロングの歌声は一段と熱を増していった。
「暑い? いやあ、そこ混ざりたいなあ。まあ、あんだけ最高のライブ観せられたら、ねえ?」。5月とは思えないほどの熱気に満ちたフロアを見渡して、川上も感慨深げだ。続けて、「“先輩”とか言ってたけど、彼らはデビュー2007年だよね? うちら2010年だから、3年先輩なのに、なんか後輩面されて……」とSUPER BEAVERに触れて会場を沸かせた後、「まあでも、先輩とか後輩とか、関係ないじゃん? かっこいいやつが一番なんだから。本当に、最高の相手だと思います」と無上のリスペクトを表明して、拍手喝采を巻き起こしていた。
「俺ら、スタンディングのZeppなんて、マジで3年以上ぶりだからね。さっき、SUPER BEAVERが始まる時に、そこ(舞台袖)で『行ってらっしゃーい』って言って……この(フロアの)光景に感動したよね。ここからですね!」と喜びを露わにする磯部に、オーディエンスも拍手喝采で応じる。「コミュニケーション空間としてのライブハウス」が戻ってきた実感を、この場にいた誰もがリアルに感じたはずだ。ライブ中にはSUPER BEAVER「空の彼方」を演奏する一幕も観られたこの日のアクト。折れず屈せず、道を切り開きながら進化し続けてきたロックバンド同士だからこそ体現し得た、最高の競演だった。
同会場の2日目公演にはVaundyが出演、その後もWurtSCreepy Nutsマキシマム ザ ホルモンyamaWANIMA(2公演出演)/go!go!vanillasといった錚々たるラインナップを迎え、『ディスフェス』ツアーは6月30日まで続いていく。

取材・文=高橋智樹 撮影=青木カズロー(SUPER BEAVER)、河本悠貴([Alexandros])

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