【ヒヨリノアメ インタビュー】
今作はある意味で
ライヴアルバムだと思った
修正をしたり、
録り直してしまったら嘘になる
「声」「SONIC」はここからバンドが突き進んでいくことを表すような疾走感がありますが、「光」は柔らかさも感じるサウンドになっていますね。
AKI
弾き語りで作った曲で、他にもヴォイスメモで録った曲がある中で、メンバーに聴いてもらった時に“これいいじゃん”となって3人で合わせて作りました。アレンジはそんなに難しくせず、シンプルに届きやすいようにしたところがあります。
前回のインタビューでみなさんは“生きるためにヒヨリノアメをやっている”とおっしゃっていましたが、「光」はその言葉が曲になっている印象がありました。
萩谷
“光”ってワードを聞くと明るかったり、希望のようなイメージがあると思うんですけど、この曲は暗いところから光を掴んでいる曲だと思っていて。
萩谷
そう。昨年11月くらいにAKIの縦隔気腫が治って、俺にリンパ腫の疑いがあった時に書いてくれた曲なんですよ(現在はサルコイドーシスと診断され闘病中)。なんとなく、その時期に作ったからこそのサウンドになったのかなと。
ウツイ
うん。「光」と「雨」は「声」よりも前にできた曲だから、その時のバンドの雰囲気が出たテンポ感になっている感じがしますね。そのあとにライヴを再開して熱量が上がっていったんだと思います。
これまでのAKIさんの曲は“自分はこうありたかった”という表現のものが多かったですが、「雨」は今まで目を逸らしていたことにも向き合っている印象がありました。《東京で、東京で、日本で、茨城で/巡り出会えたことがすべて》とバンドのことを歌っていますね。
AKI
この曲は3ピースになって初めてできた曲なんです。
掠れた声もそのまま音源になっていて、やっぱり歌を聴かせるバンドなんだと思いました。
AKI
自分的にはメンバーがいいって言うならいいのかって感じで…。レコーディングの時期が精神的につらくて、歌うのがキツかったので休ませてもらいながら録っていたんですけど、やっぱり泣いてしまって。エンジニアさんに“これはもう一回やったらキツイでしょう?”と言われて、自分でもそう思って。これはこれで音源にしようとなったんですけど。
レコーディングのためというより、とにかく今の自分を出しきるために精いっぱいに歌っているテイクですね。
AKI
そうですね。ライヴの時に感じている気持ちと似た感覚でブースに入りました。
本来、音源はきれいに録音するものだと思いますが、今回のミニアルバムはバンドの想いを正直に込めることを優先した作品だからこそ成立した一曲だと思います。
ウツイ
僕はむしろこのテイクのほうがいいと思っていて。これを修正したり、録り直してしまったら嘘になるというか、伝えたいものが伝わらなくなる気がします。
萩谷
全部のテイクを聴いたんですけど、音源になっているテイクがグッときすぎて。あと、今作ではプロデューサーのしのさん(それでも世界が続くならの篠塚将行)に提案してもらって初めてコーラスを入れているんですけど、その中でも「雨」は最初に取り入れた曲でした。だから、バンドの軸になっている曲だと思いますし、コーラスが入っているのをAKIが聴いた時に泣いていて。
この一曲で泣きすぎじゃないですか?
AKI
あははは。レコーディング中、いったん外に出ていたんですよ。その間におはぎさんがコーラスを録っていて、戻って聴いたらめっちゃ良かったんです。この曲にコーラスを入れてもらえたことが嬉しかったですね。それがきっかけになってライヴでもコーラスを入れるようになりました。
「あいのうた」はリズム隊が引っ張っていく曲だと思いますが、これはどう作っていったんですか?
AKI
これもライヴをするようになってから弾き語りで作ったので、これまでの話と重なるところがあるんですけど、曲名は“ライヴハウス”にしたかったくらいなんです。僕は曲を作る時に即興でギターのコードを鳴らして、メモ書きをせずに思ったことをそのまま歌って作っていくんですけど、「あいのうた」は一発目で歌詞とメロディーが決まっていて、メンバーもいいって言ってくれたからアレンジでアップテンポにしてみました。
ウツイ
今までのヒヨリノアメで疾走感のあるビートはあまりなかったから挑戦的な想いがありました。やってみたらめちゃくちゃ合っていたので、すぐに“これでいこう!”と。
萩谷
ベースで言うと、いい意味で揺れがあるサウンドにしていて。前半の小節はルート弾きがメインなんですけど、ベースだけどメロディーが鳴っている感じにしています。りんちゃんがしっかりドラムを叩いてくれているので、揺れがあるけどグルーブ感もあって、リズム隊は結構工夫をしました。