渡辺美里

渡辺美里

【渡辺美里 インタビュー】
“うたの木”も育ってきたので、
引き続きちゃんと育てていきたい

カバーシリーズ“うたの木”の最新作『Face to Face ~うたの木~』は自身初のデュエットアルバム。11人のゲストがそれぞれの個性と表現力を引き出した選曲の妙も見逃せないが、作品全体の仕上がりを見通して制作をプロデュースするとともに、素晴らしい歌声を聴かせてカラフルな作品を作り上げている。そんな本作の制作術を語ってもらった。

私が誰かを招く時は
“楽しかった”と思ってもらいたい

前作から約1年半振りのリリースとなる今作ですが、制作はどのように始まったのですか?

コロナ禍で世界中がギュッとブレーキがかかったような状態の中でも何かを作っていたいと思った時に、改めてレコードに針を落とすみたいなことを家でやる時間が増えたということもあり、“好きだった歌を自分なりのテイストで作り上げてみるのはどうだろう?”と思ったのが前作の『彼の好きな歌』(2021年10月発表のアルバム)の制作だったんです。その『彼の好きな歌』は“男性アーティストの曲に絞ろう”ということになったわけですが、私は20代の時に植木 等さんに“いつかデュエットをしたいんです”というお願いをしたことがあって…

『彼の好きな歌』では植木さんが歌った「花と小父さん」をカバーされていますよね。

そう! そういうふうに自分自身の作品としてカバー曲を作る場合よりも、“いつか一緒に誰かと歌いたい”というのはさらにグッとギアを入れ込まないと進まないものなんですよ。だから、“いつか、いつか”と言っていたら本当に先になっちゃうから“よし、やろう!”という気持ちになっていて、“それは今だな!”と思って今回の制作を始めたのは、前作が終わって、わりとすぐだったと思いますね。

植木さんが歌った「花と小父さん」をカバーされたことで、“いつか、いつか”を進めないとという気持ちのギアが上がったわけですね。

そうなんです。あとは、小堺一機さんとラジオを足掛け9年ぐらいやらせていただいていたんですけれど、その間に小堺さんと映画の話や海外ドラマの話、それに音楽の話をいつもしていたんですよ。それで、ある時に“レディー・ガガとトニー・ベネットのデュエットアルバムは聴いた?”と小堺さんに言われて、早速聴いてみたら、ミュージカルの曲やジャズのスタンダードをいっぱい歌っていて。しかも、レディー・ガガがトニー・ベネットと一緒に歌っている感じがすごく素敵だったから、“この感じをやりたい!”と思ったんですよね。日本でデュエットとなると…怒髪天の増子直純さんとはすごくロックなデュエットができましたけど、デュエットソングってそうじゃないイメージがまだまだあったかと思うんです。でも、そのトニー・ベネットとレディー・ガガみたいな、あるいはエラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングみたいな、そんなアルバムを作れたらいいなって。それは、小堺さんとラジオをご一緒してた時からずっと思っいたので、その気持ちもあり、植木さんへの私からのお願いみたいものがあったりもして、思えば初めてのデュエットアルバムということで。全編デュエットというのは初めてのものになりましたね。

デュエットとなると相手の方を引き立てるだけでは自分が埋まってしまうと思うので、そのバランスをどのようにされているのか気になります。渡辺さんはデュエットする場合に何か意識されていることはありますか?

ライヴでゲストをお招きする時にいつも思うんですけど、私が誰かを招く際は“あぁ、楽しかった”と思ってもらいたいんです。もちろんステージを観てくれているお客さんもそうですけど、ゲストに来てくれた人が一番“楽しい!”と思ってもらいたいっていう。豪華にはできないにしても、心を込めるということを、私たちのチームはいつもしているんですね。“人の振り見て我が振り直せ”じゃないですけど、自分が招かれて“行き届いてないな”と思うことを見た時に、“うちではこうしたくないね”って話をよくするので。もちろん“こうしてもらってとっても居心地が良かったから、うちのチームもそうしよう”と、勉強させてもらうこともあります。全てはライヴに来てもらった時は“あぁ、楽しかった。また来たい!”と思ってもらえるようにということなんです。それはラジオ番組のゲストも同じですね。通り一辺倒のことを訊くとかプロモーションのことを訊くというようなことは、もちろん訊いてほしい人もいると思うから、ポイント、ポイントで“いつアルバム出ます?”とか“この曲はどうですか?”という話をするだけです。だからといって、奇をてらった質問をして、何か引っ張り出してやろうってことは絶対しない。それでも“あぁ、楽しかった”という気持ちで帰ってもらえるようにするんですけど、レコーディングも同じです。今回は特に“Face to Face”というタイトルのとおり、やっと顔と顔を合わせて…

なるほど! コロナ禍を経てという意味でも面と向き合うことは意義深いですね。

そういう意味もあって“Face to Face”というタイトルにしたんですけど、せっかく会って歌えるのだから、相手の方が一番気持ち良いというか、心地良いレコーディングの仕方にしたい。だから、私が歌っておいたものに合わせて歌うほうが歌いやすいっていう方は、“そうしましょう”ということになるし、ひとりでまずは歌ったほうがやりやすいという人は、先にひとりで歌ってもらって、そこに私も重ねてみて、“じゃあ、今度は一緒に歌ってみましょう”というようなやり方になったりするんです。
アルバム『Face to Face ~うたの木~』

OKMusic編集部

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