山﨑玲奈と小野田龍之介はすでにナイ
スなコンビ 新演出版、ブロードウェ
イミュージカル『ピーター・パン』に
かける思いを聞く

2023年7月~8月に東京ほか(ツアー公演あり)にて上演される、ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。11代目となるピーター・パンを演じるのは、第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン(TSC)「ミュージカル次世代スターオーディション」でグランプリを獲得した山﨑玲奈。フック船長を演じるのは、ミュージカル『マチルダ』でミス・トランチブル役の好演が記憶に新しい小野田龍之介
どんなコンビネーションが生まれるのか。SPICE編集部では、ビジュアル撮影を終えたばかりの山﨑玲奈と小野田龍之介に話を聞いた。
山﨑玲奈「自分がこの役をできる日が来た!」
ーーまずは『ピーター・パン』に出演が決まったときの率直なお気持ちを教えてください。
山﨑玲奈(以下、山﨑):ミュージカル俳優を目指したときから、ずっと出たい作品だったので、出演が決まったときは嬉しさもありましたが、とにかくすごく驚きました。「自分がこの役をできる日が来たんだ!」と嬉しいし、驚いたし、いろいろと感情の嵐でした。
ーーこれまでの公演をご覧になられたことがあって、それで憧れていた。
山﨑:そうですね。小さい頃に唯月(ふうか)さんの『ピーター・パン』を観たことがあるんですけど、細いことまではあんまり記憶に残っていないんです。でもすごく楽しいミュージカルだなと思って……。私の憧れの女優さんが高畑充希さんなんですけど、その高畑さんがピーター・パンをやられていたと聞いて、自分もやりたいなと思ったんです。
小野田龍之介(以下、小野田):え、(高畑)充希ちゃんがピーター・パンをやってたときは……?
山﨑:生まれたばかりでした!
小野田:!! え、今いくつ?
山﨑:今16歳です。
山﨑玲奈
小野田:いや、しっかりしているねぇ(笑)。
 
ーー小野田さんは出演が決まってどんなお気持ちですか?
小野田:お兄さんはですね、『ピーター・パン』自体大好きな作品なんですけど、とにかくこの新ピーター・パンである“山パン”がね、きっといつかピーター・パンをやってくれるんじゃないかなと傍から見ていて、ずっと期待をしていたんですよ。もしかしたら、次のピーター・パンは“山パン”なんじゃないかなと思ってたんです。
(山﨑さんとは)『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』で共演していますし、彼女が『アニー』に出演していたことも知っていましたから。“山パン”がピーターでデビューするときには、その側にいたいなという思いは心の中でずっとあったんです。
山﨑:そうなんですか!
小野田:そうなのよ。で、薄ら出演のお話を聞いたときに、「僕でよければぜひやらせていただきます」と。僕は子どものときからこの『ピーター・パン』は本でも映画でもミュージカルでも触れてきて、僕の中でも大切な作品。その作品に、期待を寄せている、信頼の置ける後輩の“山パン”のデビューに携われることは、本当に嬉しく思っています。
山﨑:なんで“山パン”なのか聞いてもいいですか?
小野田:山﨑ピーター・パンだから、山パン。
山﨑:私、小学生のときのあだ名が「ヤマザキパン」だったんですよ。だからなんで知っているんだろうと……(笑)。
小野田:そんなこと、知るか!(笑)
ーーちなみに小野田さんは誰の『ピーター・パン』をご覧になったのですか?
小野田:僕、ずっと観ていますよ。最近のピーターは全部観ているはずだけど、最初に観たピーターは誰だったかな……それこそ思い出せない。本当に小さい頃に連れていってもらったのでね。
夏といえば『ピーター・パン』というぐらい風物詩になっていますし、ミュージカル業界においても本当に大切な大きな作品ですよね。でも、日本の『ピーター・パン』はそのクールごとに演出家が変わったり、ピーターが変わったりして、毎回進化や変化を求めている作品でもあります。長く愛されて上演されてる作品でもここまで変化していく作品はなかなかないですよね。そういう意味では非常に珍しいと思います。悪い意味で変化させちゃいけませんからねぇ。今回は長谷川 寧新演出になりますし、新しいピーターが生まれるわけですから、ここ数年の中ではまた大きくガラッと変わるとき。皆さまの期待に応えられるものにしたいですね。
なんと言っても、今年は「ピーターイヤー」ですから!(『ピーター・パン』の誕生を描いたミュージカルの)『ファインディング・ネバーランド』が5月、6月に上演されますから。『ファインディング・ネバーランド』から『ピーター・パン』を観られる国は今、日本しかないでしょう。この連続上演というのは今年しかないかもしれませんし、ぜひこの機会を逃してほしくないです!
小野田龍之介
小野田龍之介「妥協しないでやれる人は素晴らしい」
ーービジュアル撮影を終えられたばかりですが……。
小野田:(即答で)格好よかったです、僕は。
ーー長谷川さんやカメラマンさんからはどんな指示を?
 
小野田:今回の撮影は、Calvin Kleinのモデルのようにお願いしますと言われました。セクシーで高貴で、ちょっと大人な感じ。この間までやっていた森 新太郎演出バージョンは割とコミカルで、絵本っぽい感じだったじゃないですか。その前の藤田俊太郎演出も。今回はそれより前の演出の匂いがしたり、また新たな匂いがしたりしています。
フックの衣裳もガラッと新調されたんです。僕もこれまでたくさんのフック船長を観させてもらいましたけど、全然印象が変わって、華やかさが増しました。華やかさと高貴さと男性のセクシーさと、いろいろなものが折り混ざって、面白いアレンジが加わっています。楽しみにしていてください。ピーターの衣裳も可愛いですよね?
山﨑:ピーターの衣裳は結構、森(もり)っているというか、葉っぱやボタニカルのイメージがあって、もりもりしています。
(長谷川)寧さんが思い描くのは、今までの楽しそうで、明るくて、ちょっと可愛らしいピーターとは違って、本当に格好よくて、フック船長に全く物怖じしないピーター・パン。なので、衣裳もカツラも可愛らしさというより、格好よさが重視されているように感じました。
 
小野田:ポージングも攻めているよね!
山﨑:そう! 撮影しながら、今までとは違うなと思いました。
小野田:これまでたくさんのピーターを観てきて、好奇心や冒険心溢れるピーターはたくさんいたんですけど、ここまでやんちゃなピーターは珍しいなと。今回の扮装を見て思いましたね。まだ撮影の段階なんですけどね。
(左から)小野田龍之介、山﨑玲奈
ーーこれから先の2人の演技にもインスピレーションを与えそうですね!
小野田:(即答で)今日がピークです。
山﨑:ええ〜? もっと上がっていきましょうよ!(笑)
小野田:そうだね(笑)。でも、ビジュアルの段階から今までのピーターと違った印象を持ってもらえるんじゃないのかな。僕もワクワクしてますね。
ーー 早速ナイスなコンビネーションが感じられます。お二人の雰囲気が稽古場の雰囲気をつくっていきそうですね。
小野田:そうですね。確かに敵対する役ですけど、他の芝居と違うのでね、稽古場から関係性をばちばちにすることはないでしょうね。ワクワクできる敵対関係というのかな。フック船長も子どもから見たら、もしかしたら怖いと思う部分もあるかもしれないですが、大人が見たら滑稽に映るだろうし、ピーターはピーターで、子どもらしすぎないけど、かといって大人でもないし、いろいろな面を持っている。とにかくワクワクしたショーを作れたらなと思います。僕は主役についていくだけです!
山﨑:ちょっと期待値を高めすぎないでください!(笑)
小野田:いやいやだから大丈夫。だって、だって今日がピークだから(笑)。
山﨑:いや、そこは上がっていきましょう(笑)。
ーー共演された『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』のときは、実はそんなに絡んでないですよね?
 
山﨑:うーん、時々絡みましたよね?
小野田:トキと時々ね(※トキは小野田さんの役名)。確かにそんな絡みはないですよ。「ここがお墓ですか?」と言ったら、歌って長尺で答えるというミュージカルならではのシーンぐらいじゃない?(笑)
山﨑:あとトキが死ぬの見ました!
小野田:そうそう。あんまり近くにいないくせに、僕の死に際だけは近くにいたよね(笑)。だから正直、『北斗の拳』のときは共演したけれども、そんなお芝居のディスカッションのような瞬間はそんなになかったかな。現場で仲良く喋るぐらいでした。
(左から)小野田龍之介、山﨑玲奈
ーー改めてお互いの印象を教えてください。
山﨑:『北斗の拳』のときは絡むシーンがあんまりなかったんですけど、(小野田さんは)私が一番絡むケンシロウ役の大貫(勇輔)さんとすごく仲が良くて。和やかだな〜面白いお兄さんだな〜と思ってましたけど、スイッチが入ると、すごい集中力を発揮されていました。そのギャップがすごいです。
小野田:よかった、集中していて(笑)。
山﨑:オンオフがしっかりしていて、素敵な俳優さんだなと思っています。
小野田:素晴らしい俳優さんですね!(笑)
山﨑:もう鏡ですね! 俳優の鏡です!
小野田:(山﨑さんは)役者さんとして、的確性があって、崇高なものを持っていて、素敵な女優さんだなという印象があるんですけど、稽古場で覚えているのは、彼女、休憩中に勉強しているんですよ! 僕がこの年齢で現場にいたときは、全く勉強はしていなかったし、演劇のことしかやってこなかったから……。ちゃんとしている役者さんは、学業も疎かにせず、芸にもひたむきなんだなと思い知らされました。妥協しないでやれる人は素晴らしいですよね。
山﨑:受験生だったからですよ。大千穐楽の4日後に試験だったんです。
小野田:そうか。それでも努力できる人は何にでも努力できるんだなと思いました。
山﨑:学生の鏡ですよね?(笑)
小野田:うん、鏡だよ!
長谷川 寧による「新演出」
ーー今回、演出の長谷川さんとはどんなお話をされたんですか?
山﨑:長谷川さんとは私がピーター・パンに決まってすぐにお会いすることができたので、もう4ヶ月ぐらい経つんですけど、自分の世界観をしっかりと持たれている方だなという印象です。『ピーター・パン』をこうしたいというビジョンが既にあって、イラストなんかも見させてもらったんですけど、今までと違う発想をされているなぁと思います。セリフの一つひとつについても、アメリカの台本と比べたりして、既にディスカッションをしています。まるで今回が初演のように細かくやられています。
これまでのピーターのイメージ像に頼らず、自分でイチから考えて、自分らしいピーター・パンを探求しないといけないよと言われています。どうしてもこれまでのピーター・パンのイメージが強いので、もちろん助けられてる部分はあるんですけど、そのイメージが邪魔してくるときがあるから。今、長谷川さんと一緒に崩して創っているところですね。
山﨑玲奈
小野田:もうそんなにディスカッションしているんだ! 僕、まだ台本をもらっていない! え、僕、アドリブでやるの?(笑)
山﨑:小野田さんなら、ワンチャン行けますよ(笑)
小野田:行けないわ!(笑)。
 
山﨑:訳詞も全部リニューアルですし、今までのほとんどのピーター・パンは一人称が「僕」だったんですけど、今回は「俺」になっているんです。
小野田:へぇ、今までのピーターは「僕」だったんだ?
山﨑:(初代ピーター・パンである)榊原(郁恵)さんは「俺」だったらしいです。語尾も「〜〜してるよ」ではなく「〜〜してるぜ」みたいに、男勝りな感じになっています!
 
ーー小野田さんは長谷川さんとお話されましたか?
小野田:はい。今日、撮影のときに初めてお会いしました。会った瞬間に「校長〜!」と呼ばれて……今『マチルダ』というミュージカルで、ちょっとどぎついキャラクターの校長をやってまして……何のことか最初分からなかったんですけど、どうやら『マチルダ』をご覧になったみたいで(笑)。
僕はまだ作品のことを詰められていないんですけどね、撮影のイメージとして、ご自身が撮ってきてくれた写真を見せてくれて! こちらもイメージがしやすかったですね。
山﨑:すごく楽しそうでしたよね!
小野田:そうそう、すごく楽しそうだった! その写真でポスターを別に作りたいぐらい(笑)。その他にも「こういうナンバーを作りたいんです」とか「セットはこうで〜」とか具体的にイメージをお持ちの様子でした。噂によると、今回動くらしいんですよ。長谷川さんはもともとダンサーですから、多分、人間の身体を動かす演出がきっと多くなるのかなと思って。僕はもうダンスとか苦手なので……(笑)。
山﨑:いやいやいやいやいや!(笑)
小野田:「動くの苦手なので」と言ったら、「あ、そういうのは大丈夫です」と却下されました(笑)。闘争シーンや、海賊との戦いを海賊との戦いを身体で表現したり……いろいろとアイディアはあるようです。今までの『ピーター・パン』とは違った新しい演出を加えたりするみたいなので、 非常に楽しみですね。話を聞くだけでもワクワクしました!
小野田龍之介
ーー新演出ではありますが、現段階でお二人が特に好きなシーンやナンバーはありますか?
山﨑:私はやっぱりフライングシーン!
 
小野田:あぁ、ワクワクするよね。
山﨑:お子さんだけではなくて、大人の方にもワクワクしてほしいと思っています。結構『ピーター・パン』は子ども向けのミュージカルというイメージが付いてしまっていると思うんですけど、実は大人も楽しめる作品。フライングシーンもお子さんが楽しんでくれるだけではなく、大人の方にも楽しんでいただけるようにしたいですね。実はもう(長谷川)寧さんとフライングの練習をしていて……! 新演出のフライングシーンも個人的に注目してほしいです。
小野田:『ピーター・パン』はファミリー向けかな? と一瞬思うけれど、イギリス文学がベースにあって、ドラマがしっかりしている。ちゃんとした物語の中で、毎回ワクワクするのが、わーって踊って歌うモリビトたちのナンバー! フックの怖い感じを全部忘れて、とにかく今はただこの瞬間を楽しんでいいんだと思えるシーンですよね。ノリノリになれるあの瞬間が好きですね。客席とステージが一体化する瞬間だなと思います。今回はきっと今まで以上にダンスナンバーとして盛り上げてくれるんじゃないかなと思います。
 
ーー改めて観客の皆様にメッセージをお願いします!
山﨑:『ピーター・パン』は、子ども向けのミュージカルだと思っている大人の方もいらっしゃると思うんですけども、老若男女楽しめる作品になっています。新演出で、今までとまた違う『ピーター・パン』だと思いますし、「今回の『ピーター・パン』の演出、面白いな」とか「ピーター・パンが格好良くて、惚れちゃった!」と言ってもらえるように頑張ります!
また、今回は『ピーター・パン』にしては、数多く地方公演が行われるようなので、各地でこの作品の良さを伝えられるチャンスだと思って、全国にお届けしていきたいなと思います。
小野田:とにかく誰もが知っていると言っても過言ではない『ピーター・パン』。ひとりでも多くの方に楽しんでいただきたいです。この3年間、コロナ禍で非常に塞ぎ込んできた時間が多かったと思うんです。その中でやっといろいろな自粛が緩んで、解放されてきて、今上演されているのもすごく今の雰囲気に適している演目が多いなと思うんですけど、『ピーター・パン』も絶対そのひとつだと思っています。
今、みんながワクワクしたいときだと思うんですよね。大人は子どものときにワクワクした気持ちになれるだろうし、お子様にとっては、本や映画で知っているピーターが目の前に現れたときの感動といったら! これは本や映画では体感できないですよ。唯一、劇場空間でしか体験できないワクワクした時間。コロナ禍を経て、この解放されたひとときを楽しんでいただきたいです。この新生『ピーター・パン』。その生まれる瞬間は今年しか観られませんから。お見逃しなく!
(左から)小野田龍之介、山﨑玲奈
取材・文=五月女菜穂     撮影=鈴木久美子

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