yama、須田景凪、syudou、キタニタツ
ヤが大阪で初集結ーー抜群の親和性を
見せた記念すべき一夜、新イベント『
NEOTOPOS』レポート

『NEOTOPOS』2023.4.2(SUN)大阪・Zepp Osaka Bayside
『NEOTOPOS』
4月2日(日)、新しいイベント『NEOTOPOS』が大阪・Zepp Osaka Baysideで開催された。出演者はキタニタツヤ、syudou、須田景凪yamaの4組。FM802の番組『ROCK KIDS 802』(月〜木 21:00〜23:48)が全面バックアップする、新感覚のアーティストにスポットを当てたこだわりのイベントだ。出自は全員インターネットという共通点のある4組だが、これだけのメンツが揃う機会はなかなかない。大注目の次世代アーティストが集結した、親和性の高い対バンライブとなった。
『NEOTOPOS』
この日は1階がスタンディング、2階は着席スタイルでどちらも超満員。アーティストと同年代である10〜20代だけでなく、家族連れもいてかなり幅広い層の観客が集まっていた。その様子からも彼らの人気と注目度の高さがよく伺える。キービジュアルのイラストとロゴは、須田やsyudouのMVなども手がけるイラストレーター・sakiyamaによるもので、動画のライブ配信をモチーフにしており、本イベントの趣旨を明確に伝えていた。
FM802 DJ 高樹リサ
ジングルが流れると、MCをつとめるFM802 DJの高樹リサが明るくステージに登場。挨拶のあと、「楽しむ準備できてますかー?」との呼びかけに、大きな拍手と歓声で応えるフロア。声出しも解禁されたことで、会場は高揚感に満ち満ちていた。そして、いよいよ『NEOTOPOS』が開幕した。
キタニタツヤ
キタニタツヤ
トップバッターはキタニタツヤ。高樹が名前を呼んだ瞬間、大歓声が会場を包む。SEが流れると、青と紫のハードな照明に染まったステージにギター、ベース、ドラムのサポートメンバーが登場。続いてキタニが現れるとフロアの熱は最高潮に。エッジーなギターがうなり「聖者の行進」でライブがスタートした。すらりと伸びた長身がステージに映える。ロングウェーブの髪を揺らし、妖艶に歌う佇まいからは鬼気迫るものを感じる。キタニのライブは撮影OKということもあり、スマホを掲げているオーディエンスが多く見られた。だからといって棒立ちではなく、撮影しつつもしっかり拳を突き上げる。開始早々、キタニワールドを作り出していた。
MCでは「声がでかいなあ!」と歓声の大きさに喜ぶ。「今日は演者がさ、インターネットのさ、深〜い深〜い暗〜いところから出てきたわけで、ようやくこういうところまでこぎつけたわけでさ。きっと皆もレペゼンインターネットでしょ? 初めての人もいると思うけど戸惑うことはないよ。最後まで全力で楽しんでいきましょう。よろしく」と話し、TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』とコラボしたアニメMVが話題の「永遠」をドロップ。さらに「悪魔の踊り方」では思考力が奪われるほどの眩しい照明と吐露するようなボーカルで沼に引きずり込む。
スタンディングなので物理的にも距離は近いのだが、キタニのライブは客席との心理的距離の近さを感じさせる。オーディエンスは観客というよりも同志といった方が感覚的に近いのかもしれない。それほどの熱狂が充満し、独特の一体感が渦巻いていた。傷や闇といった、現代に生きる者が抱える負のテーマは、音楽においては希望であり処方箋だ。「人間みたいね」では、キタニ本人もギターを持ったことで生感が増し、人間臭さを感じさせるサウンドに変化。「トリガーハッピー」では気怠さも孕んだ歌い方で表現力の幅を見せつける。ラストの「スカー」はキタニの渾身のコードストロークから始まり、バンドメンバーも一球入魂で全力プレイ。その姿に牽引されて、最高の盛り上がりでフィニッシュした。
syudou
syudou
うってかわり、弾けるようなポジティブエネルギーで会場を席巻したのは大阪初ライブのsyudou。「ぶちかます」というセリフが印象的なSEが流れ、syudouが元気よく走り込む。「初めまして大阪! syudouといいます! 今日はこのイベントの主役獲るつもりできたんでよろしく!」と勢いよく「ギャンブル」を投下。「アイ! アイ!」と煽りながらお立ち台に登ったり、ステージを縦横無尽に動きまくって熱量をぐいぐい引き上げる。普段メディアやSNSに登場する時は黒いマスクを着用しているsyudouだが、ライブでは素顔。そんな特別感も嬉しい。人気曲「コールボーイ」でものすごい一体感を見せたあとはMCへ。
「私大阪初ライブ、初対バンイベントでございます! キタニさん、須田さん、yamaさんとライブができるということで非常に興奮しております」と述べると、客席から沸き起こった歓声とガヤに「嬉しい」と無邪気に喜ぶ。「ビターチョコデコレーション」の前には「一緒に盛り上がれる仕組み持ってきました! 今日の大阪の印象が、ある種大阪の印象になるんで、最高の僕の思い出を作ってもらっていいですか! ビートをちょうだい!」とドラムがビートを放つと、syudouの指導が入る前にクラップが自然発生。この鮮やかさには本人も驚き「これがなにわ」と感動している様子だった。一切ゆるまぬクラップとともに楽曲を駆け抜けると「笑うな!」でまたひとつ熱を上げる。とにかく全身でライブを楽しむsyudouの姿が眩しかった。
MCでは対バン相手のキタニ、須田、yamaとのエピソードも丁寧かつ面白く紹介。そのトーク力の高さには舌を巻いた。キタニとは同い年だが、リスペクトゆえに敬語を使っているそう。キタニから「ミュージシャンとは、酒とタバコ、以上だ」と言われたことで「そうなんだ!」と素直にレコーディング前日の深夜にお酒とタバコを買い、声ガラガラになったというエピソードを披露。「須田さんは本当に後輩思いの優しい先輩で、めちゃめちゃモテそうと思ってまして。よく使われてるお花のモチーフがオシャレ」と思い、真似をして花を買い、プリングルスの空き容器に飾っていたが水を替えていなかったために腐らせたというオチで笑わせる。また、去年の夏に初ライブを行い「ライブは歌とバイブスどっちが大切だろう」と考えている時期にyamaのライブを見たと話し、「周りにはクオリティも重要だろと言われたけど、僕はバイブスだってスタッフと議論をしてたんです。フェスでライブを見た時、yamaさんはどっちも兼ね備えてました。どっちも大事だと気づかせてもらえたのでビッグリスペクトです。初めての大阪最高です!」と後半戦へ。
勢いを増して「インザバックルーム」「たりねぇ」を投下し、ラストの「爆笑」で締め括る。クリエイターとしてだけではなく、エンターテイナーとしての一面も提示したsyudou。バンドともフロアともひとつになった最高に躍動感のあるステージで、有り余るエネルギーと人懐っこいキャラも存分に爆発させ、がっつり観客の心を掴んでいた。
須田景凪
須田景凪
出演者の中でもひときわ黄色い声が大きかった須田景凪は、彩り豊かな楽曲たちを熱量高く演奏した。2013年から「バルーン」名義でボカロPとして活動を開始した須田は、サポートにギター、ベース、ドラムを迎えた4人編成で、須田もギターを持ち「veil」からライブスタート。疾走感のあるサウンドの中に感じる揺らぎと小気味良いギターリフ、甘い歌声にはノックアウトされるオーディエンスが続出。バルーン名義の楽曲「パメラ」では、イントロからクラップが発生。分厚いサウンドで4人の爆発力が増してゆく。
MCでは「すごいね、こんなに声聞こえるんですね。うれしい! 人間いっぱいですね(笑)」と笑顔を見せる。そして須田も共演者とのエピソードを話し始めた。キタニタツヤはバルーン名義の時からの知り合いで、最後に会ったのが「雨と傘」というイベント。「そこから会えてなかったけどYouTubeライブ越しに名前が出て、キタニが僕のモノマネをしてる動画がリスナーの方から送られてきて、静かに夜中に爆笑するという。syudouは初対面こそ酒でバグり散らかしてて面白い奴だなと思ってたんですけど、何かあると逐一連絡してくれたり、喋ると清々しいくらい真っ直ぐな奴で、このカルチャーでああいう奴って珍しいので、俺はすごい好きで」。yamaは去年のフェスで楽屋が隣で初対面。「ミステリアスな雰囲気だしいつご挨拶しようかなと思っていたら、yamaの方から「この曲とこの曲が好きで」と挨拶されて好感度爆上がりでした」と語る。この日を「なかなかない日」と強調し「めちゃくちゃ記憶に残る良い日にしましょう」と「メーベル」を披露。クセになりそうな反復フレーズとテクニカルなギターワークに問答無用で踊らされる。続く「雲を恋う」ではトーンダウンしてゆったり滑らかに歌い上げた。
FM802との思い出も話した須田。「初めてラジオに出たのが結構前で、人間と喋ることすらままならない時期があったんですけど、802はラジオに出してくれてすげえ応援してくれて」と2019年1月度のヘビーローテションになった「パレイドリア」で気持ち良く会場を彩り、最後に「さっきキタニも言ってたけど、自分は本当にインターネットの底で音楽を作って発表していて、気づけば802とキタニ、syudou、yamaとイベントができたり。そういうのもひっくるめて音楽だし、こういう機会をもらう度に音楽やってきて良かったなと思います。また必ず大阪に来ます」と約束して、新曲「ダーリン」を投下。大人の色気も見せつつ、バッチリ会場を魅了した須田景凪だった。
yama
yama
トリを飾ったのはyama。サウンドチェックからyamaバンドがパワフルな音を放ち、フロアの期待感を高めていく。髪色と同じブルーに照らされてステージに登場したyamaに待ってましたの大歓声が贈られる。挨拶がわりに「あるいは映画のような」を伸びやかに歌い上げると、「yamaです。今日は残ってくれてありがとう。最後の最後まで楽しんでいきましょう」と挨拶して、TVアニメ『SPY✕FAMILY』第2クールのED主題歌「色彩」を澄んだ歌声で響かせた。
5月にシングル『slash』がリリースされることをアナウンスし「今日は本当に親和性のある4組というか、自分はすごく親近感を感じながら今日の日を楽しみにしてきました。昨日北海道にいて今日大阪に降り立ってるんですけど、キタニさんとずっと一緒で移動してきた」と明かす。さらにメジャーデビュー前にキタニの「記憶の水槽」や須田の「メーベル」をカバーしていたと話す。「4〜5年前にYouTubeでアップしてたんですけど、クオリティが恥ずかしくて非公開にしちゃったんですけど。あとsyudouさんの楽曲も挑戦しようとプロジェクトはとったけど難しくてやめたり。とにかくお三方の楽曲が大好きで昔から拝聴させてもらってたので、楽しみにしてきました」と3組へのリスペクトを語る。
「Oz.」「麻痺」「くびったけ」と、表情が異なる人気曲を続けざまに披露したあとのMCでは「声を出せるライブができるようになったのも、体験するのも自分は最近なので、すごく新鮮だしめちゃくちゃエネルギーを感じています。ありがとう」とライブへの想いを話し始める。「さっきsyudouさんがMCで自分のライブを見たという話をしてくださっていたのが本当に嬉しくて。2年前にライブを始めた当初はステージに立つので精一杯。足も震えてたしすごく怖くて、ライブは苦手だったので。挫折しそうになりながらも続けていくうち、長い人生でこの30分この1分は、本当にたった一瞬かもしれないけど、このたった一瞬に救われる瞬間があるなとだんだん気づいていって。それから何よりも熱心にライブに心を注いでいるので、そう言っていただけて良かった。自分がもらうだけでなく、皆さんに今ある全てを渡したいですし、音楽に救われる瞬間があると信じたいんです。あなたの弱い部分も辛いことも楽しいことも全て肯定したいなと思って、この瞬間、ステージに立って歌っているので、そうであればいいなと思ってこの曲を歌います」と熱のこもったMCから「世界は美しいはずなんだ」をポップに届ける。yamaが作るその美しい光景に、素直に心を動かされた。
ラストはyamaを世間に知らしめた「春を告げる」。クラップが沸き起こり、最高潮の盛り上がりで幕を閉じた。昨年末から数ヶ月ごとにyamaのライブを拝見しているが、どんどん存在感の増すyama。今後が楽しみで仕方ない。
こうして素晴らしい4組のライブが終了。どのアーティストも個性豊かで、持ち時間35分とは思えないぐらい濃い時間で、さらにオーディエンスも全力で向き合うことで双方のエネルギーがぶつかり合い、すさまじい相乗効果を生み出していた。なかなかない組み合わせで出演者も喜んでいたし、初回の『NETOTOPOS』は大成功だったと言えるのではないだろうか。次回の開催も期待大で楽しみにしていよう。
取材・文=久保田瑛里 撮影=ハヤシマコ

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