【編集Gのサブカル本棚】第25回 マ
チ★アソビの歩き方(2022年秋編)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ここ3年多くのイベントが中止・延期を余儀なくされた。昨年から開催されるイベントが徐々に増え、2022年10月、3年ぶりにリアル開催された「マチ★アソビvol.25」(10月15、16日にステージ開催)の取材に行ったことを記録として書いておきたい。

 マチ★アソビは、09年から毎年5、10月の年2回、徳島県徳島市で開催されているアニメ・ゲームの総合イベント。「マチをアソビつくす」をテーマに、さだまさし氏の小説のタイトルにもなった眉山の山頂をふくめ、JR徳島駅の周辺数キロ内の街全体を使って大小さまざまな催しが行われ、毎回数万人が参加している。「鬼滅の刃」などで知られるアニメ制作会社ufotableが09年に徳島スタジオを設立し、阿波おどりのアニメポスターを制作したことをきっかけに生まれたイベントで、同社が18年までイベント全体の企画・プロデュースを担当。現在は音響制作会社のスタジオマウスが引き継いでいる。
互いの信頼関係で成り立つ場
 マチ★アソビに行ったことがない方には、アニメ・ゲーム系のイベントというより、屋外で行われる音楽フェスをイメージしてもらったほうが分かりやすいかもしれない。良い意味でのユルさが最大の魅力で、徳島の山、公園、商店街など街全体を使った広い会場を回遊しながら各々の楽しみ方ができる。大半が眉山山頂や新町川のそばにある屋外のステージで実施され、映画館を使った上映イベントなどを除くほとんどのイベントが無料。徳島まで足を運ぶというハードルさえ超えれば、すべてを体験するのは不可能な多くのイベント群が待っている。毎回配布されるフライヤー(イベントの情報を掲載した小冊子)には、アニメ・ゲーム関係の会社の企業や作品のロゴがずらっと並び、こうしたところも音楽フェスっぽい感じがある。
 各イベントも通常のアニメイベントとはだいぶ違う。きっちりしたものから手作り感満載のものまで色々で、当日突発的に行われるイベントもある。主催者側から「大人が本気でやる文化祭のようだ」という感想をよく聞くが、実際マチ★アソビでしか実現できないであろうイベントがこれまで多く行われてきた。筆者が覚えている範囲でいうと、声優とファンによる鬼ごっこ、声優同士の公開結婚式、徳島県知事も参加するドッジボール大会――誰かが企画して責任をもって運営すれば大概のことはイベントとして成立できてしまう。
 そうした自由な場が実現できているのは主催側の尽力だけでなく、参加者のリテラシーの高さによるところが非常に大きい。マナーが良いのはもちろん、積極的にイベントを楽しもうというスタンスで臨んでいるため登壇者との良い化学反応がおこりやすい。
 ゲストと参加者の距離が近いのもマチ★アソビの特徴のひとつだ。イベント自体がアットホームなだけでなく、街全体が会場なため、声優やプロデューサーなどの出演者が街中の商店街を歩いたり、近所の徳島ラーメン店(最近は鯛塩ラーメン店も人気)でファンと出くわしたりすることも珍しくないが、そうした場でも“適度な距離感”が保たれている。月並みな言葉だが達成はなかなか難しい「イベントはみんなでつくる」が高いレベルで実現できていて、主催者と参加者の信頼関係をもとに成り立っているイベントも多い。
 筆者が知る範囲では、新潟市開催の「がたふぇす」、広島県福山市開催の「フクヤマニメ」など、“マチ★アソビ・インスパイア系”とでも言うべき似たコンセプトの地方イベントも生まれている。
リアルな場の大切さ
 3年ぶりにリアル開催されたマチ★アソビでは、これまで通り各イベントが行われ、参加者が集うのかどうかが心配だった。コロナ禍を経てつくづく思うのは何事も継続は力だということで、続けることよりも一度断ち切れてしまったものを再開するほうが何倍もカロリーがかかる。これまで当たり前だと思っていたものが実はそうではなかったこと、リアルな場の大切さを痛感させられた3年間だった。
 蓋を開けて見れば幸いなことに、感染対策を十分にとりながらほぼこれまで通りのマチ★アソビが無事開催され、今後も続いていけそうな展望がみえるものだった。
 マチ★アソビほど、実際に行って体験してみないとどんなイベントか分からないものはないと思う。ユルさだけでなく、受動的にまわっているだけだと見逃してしまう突発イベントもある“高度な情報戦”が必要な面もあって、一度目よりも二度、三度目のほうがより楽しむことができる。ゴールデンウィークの5月6、7日に開催される「マチ★アソビvol.26」、ご都合つけばぜひ足を運んでみてほしい。私も取材でうかがう予定だ。(「大阪保険医雑誌」22年11月号掲載/一部改稿)

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