アニメ『スプリガン』 原作者・たか
しげ宙、皆川亮二ペシャル対談インタ
ビュー公開

2023年7月より、TOKYO MX、メ~テレにて地上波初放送されるアニメ『スプリガン』について、原作者・たかしげ宙(原作)、皆川亮二(作画)ペシャル対談インタビューが公開された。
『週刊少年サンデー』(小学館刊)において、1989年から1996年まで連載されたコミック『スプリガン』を原作に、david productionによって新たに制作された本作。Netflixシリーズとして2022年6月18日(土)から配信がスタートしている。監督は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『ひそねとまそたん』の小林寛だ。
下記インタビュー全文を引用する。
『スプリガン』原作者スペシャル対談インタビュー 原作者:たかしげ宙✕皆川亮二
1989 年から 1996 年にかけて連載され、今なお名作として語り継がれている漫画『スプリガン』。古代文明やオ ーパーツといったロマン溢れる舞台設定と主人公の御神苗優をはじめとしたキャラクターの造形。その魅力は完結 から四半世紀を経た今もまったく色褪せていない。昨年には初のアニメシリーズ化、Netflixで配信されるや否や、 リアルタイマーから新たに本作と出会ったファンまでが熱く支持。その追い風を受けて、このたび 2023 年 7 月からは TOKYO MX とメ~テレでの放送も決定した。それを記念して、原作・たかしげ宙と作画・皆川亮二の対談が実現。 連載当時のエピソードや、今回のアニメを観ての感想を語ってもらった。
――改めて『スプリガン』が描かれた当時のことを伺いたいんですが、連載開始が 1989 年でしたね。
たかしげ:ちょっと前に初代担当の方が当時をまとめたものが SNS に上がっていて、自分もそれを見て再確認したんですけど、最初に自分が原稿を持ち込んだんですよ。そのとき彼(皆川) は別に漫画を描いていて。
皆川:そう、だから僕は『スプリガン』をやることをまったく知らなかったんです。
たかしげ:担当編集者も違ったからね。
皆川:僕は当時、高校の同級生でもある神崎将臣先生の手伝いをしていたんですね。そのときに『サンデー』の編集者の方に「描いてみな」って言われたんですよ。たぶん深い意味はない、リップサービスのようなものだったと思うんですけど、僕は本気で捉えて必死になって描いたんです。その『HEAVEN』という作品がデビュー作になったんですけど、そこからいつの間にか『スプリガン』をやるという話になって。
たかしげ:脚本を持っていったときに担当編集 K さんが「ちょっと描かせたい人がいるから」と言っていたんですよね。それが彼だったんです。「おそらく次に入選するから、そうしたらこれをやらせるから」って。「やらせるから」って言いましたからね(笑)
――ご本人のまったく知らないところで(笑)
たかしげ:担当編集 K さんは前の担当さんに「この子はちょっと出したいのがあるから俺にやらせてくれ」と要求して代わってもらったらしいです。それから半年ぐらいかかって 1989 年の 2 月に連載がスタートしました。手塚治虫先生が亡くなった翌日だったので、よく覚えています。
皆川:僕はその前の夏ぐらいにデビューしていたんですけど、その頃に担当さんが挨拶に来いっていうから行ったら、 いきなり『スプリガン』の原作を渡されて「おまえはこれを描きなさい」って。新人なので断れないじゃないですか(笑) 「わかりました」って言ってやるしかなかった。
たかしげ:だから、『スプリガン』が始まってからも彼とはしばらく面識なかったんですよ。初めて会ったのは連載が始 まって半年ぐらい経ってから。
皆川:忘年会のときでしたね。
たかしげ:会ってみたら同い年だし、好きなものも大体重なっていたので話が合って。それからは仲良くやらせてもらいました。
――たかしげ先生が最初に持ち込んだ原稿の時点で、世に出た『スプリガン』の大枠はできあがっていたんですか?
たかしげ:そうですね。もう出所がインディ・ジョーンズの『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』のラストシーンなんで。 いっぱい宝物が重なっているんですけど、あれが全部危ないものだったら大変だなと思ったところからの発想だったんです。そこに、現代劇だから現代性を取り入れたほうがいいのかなと思って、ああいうフォーマットになっていきました。
皆川:僕も原作を読んだときに「これは絶対に『レイダース』が好きなやつが書いてるんだろうな」と思いました。僕も スピルバーグが大好きで、スピルバーグの映画の影響で漫画を描いていた感じだったので、これはもしかしたら話が合うやつかもしれないと思っていましたね。
――改めて読み返してみると、インディ・ジョーンズ的な冒険活劇の側面と同時に、当時の世相や社会情勢も投影されていますけど、これは?
たかしげ:そういうのは彼(皆川)が大好きだったんです。そういうの入れようよって。
皆川:若気の至りですね(笑) なんか世の中に対して怒っていたんでしょうね。『朝まで生テレビ』とか観ながら、アホみたいにとんがってた。
たかしげ:そういうものをちょっと入れるのは別に自分も嫌いじゃないんですけど、彼が「学歴社会を入れようぜ」とか言ってくるんで、「わかった、ちょっと考えてみる」とか言って。
皆川:ごめんなさい(笑)
たかしげ:謝らないでくれ、それなりに何とかなったから(笑)
――それが『スプリガン』という作品を多面的なものにしたところはありますよね。
たかしげ:そうそう。我ながら言われて書いたわりによくできたなと思ってたし。
皆川:今読むと「恥ずかしい!」ってなるんですけどね。
――連載開始当初はお互い顔を合わせないままに作っていたわけですよね、それはどういうプロセスだったんです か?
たかしげ:最初は自分が書いたものを担当がチェックして皆川さんに回すっていう形だったんですけど、仲良くなってからはダイレクトに要求が来たり、今みたいに「こういうのやらない?」って言ってきたり。そういう彼の要求を受けて、やり取りをしつつ転がしていきましたね。
皆川:最初担当の K さんに「とにかく面白くしろ」って言われて。それが一番難しかったですね。さっき話したとおり、 デビューするまで僕は漫画を一本ちゃんと描いたことがなかったんですよ。まったく漫画のことを知らなかったから、 イチから基礎を叩き込まれましたね。今思うとそこで育ててもらえたことはありがたかったなと思います。最初の「炎蛇の章」のときはまだたかしげさんに会っていなかったので、とにかく怒られながらやっていた印象があります。
たかしげ:でも実際に会うようになってからはだんだんうまくいくようになって、「狂戦士 (バーサーカー)の章」ぐらいからは本当にスムーズに進むようになったと思います。
――主人公の優をはじめ人物造形とかキャラクター設定も『スプリガン』 の大きな魅力だと思うのですが、ああしたキャラクターはどのように生まれていったんですか?
たかしげ:基本は自分のほうで考えましたけど、キャラの肉付けは皆川さんがやってくれました。
皆川:僕は漫画のキャラクターの作り方もよくわかっていなかったので、自分の好きな漫画のキャラクターを思い浮かべながら描いていましたね。望月三起也先生が大好きなんですけど、望月作品に出てくるキャラクターみたいなかっこいいキャラを描こうと思って描いていたら、そしたらいつの間にかキャラクターができていった。
たかしげ:自分も望月三起也というイメージはありました。高校生とかがヒーローになるっていうのも望月先生はやっていたので。
皆川:それでいろいろなキャラクターがどんどんできていったら、今度は「こういうキャラクターが欲しいよね」という のも出てきて。そうやってどんどん増えていきましたね。
――とくに思い入れのあるキャラクターっていうと誰になりますか?
たかしげ:当時の会話ですけど、「帰らずの森篇」で暁巌というキャラクターを出したんですけど、あれは意外と適当だったんですよ、こっちとしては。こういうタイプのこういう位置づけのキャラクターがいないと成り立たないよなっていうことで入れたんだけど、上がってきた原稿を見たらいいキャラクターになっていて。
皆川:キャラクターって物語の中でどんどん育っていっちゃうんです。 そういう意味では僕は染井芳乃とかは大好きでした。唯一いつも出ている女の子として、描いていて楽しかったですね。
――芳乃も暁も、本当に最後の最後まで重要な役回りを担うキャラクターになりましたよね。
皆川:なんだかんだそうなっちゃいましたよね。そこで消えると思っていたら、思いのほか最後まで残っちゃった。
たかしげ:いいキャラだったのでまた出したっていうのもあるんですよ。
皆川:ボー・ブランシェなんて、絶対に使い捨てキャラだと思っていたのに、描いてみたら思いのほか面白かった(笑)漫画ってそうやってできていくんですよ。逆に御神苗優がいちばん描きにくかったですね。描けば描くほどサブキャラが育っていっちゃって、思い入れも強くなっていくので、だんだん御神苗が蔑ろになっていってしまう。「どうするかな」と思って十字架みたいなものを背負わせたりするんだけど、そういうことをやっていると御神苗というキャラ がどんどん暗くなっていっちゃって。そこは難しかったですね。
たかしげ:でも逆に、周りが極端だから真ん中にいりゃいいやって作り方をしてたところもあって。他の漫画でもよくあるけど、サブキャラの方が個性的だから主人公がキャラ多角形フレームの真ん中にいるっていう。そういう作り方 をしていたつもりです。
――そこから時を経て今回アニメシリーズ化されたわけですが、その前 1998 年には劇場版『スプリガン』が公開さ れました。あの作品に対してはおふたりはどんな印象を持っていましたか?
たかしげ:いや、あれは「すごい」以外に何がある!?っていう話なので(笑)
皆川:ただ、最後に打ち合わせをしてからだいぶ時間が経ってからの公開だったので、忘れた頃にできあがったっていう感じだったんですよ。
たかしげ:だから当時から「これはきっとドッキリカメラで騙されているに違いない!」って言っていたんですよ(笑)
皆川:できましたって言われてびっくりして、実際に観てさらにびっくりして。
たかしげ:そこからまただいぶ時間が経って今回のアニメ化だったので、それもびっくりしました。でも今回のアニメ はあの劇場版とはまったく違うところに重点を置いているので、また違う面白さがありますよね。
皆川:僕も今回のアニメはずっと観ていましたね。
たかしげ:毎日 2 周するくらい観ましたから(笑)
――今回のアニメシリーズは原作のエンタテインメントとしての盛り上がり方やテンポ感、スピード感みたいなものが よく表現されている感じがしました。
たかしげ:これ、友達や作家さんみんなから言われるんですけど、内容的には原作から結構変わっている部分があるのに、観終わった後の感覚が漫画の読後感とかと変わらないって。それがすごいって言ってもらえますね。
皆川:ノリとか間の取り方がまさに一緒なんですよね。だから、よっぽど『スプリガン』を読んでくれている人が作った んだろうなって。たぶん僕らよりも『スプリガン』に詳しいと思う(笑)
――確かにめちゃくちゃ好きな人が作った感じがしますよね。
皆川:レイアウトから何から、観ていて「こうすればよかった」って後悔する場面もありましたから。本当にすばらしい なと。
たかしげ:そういう意味では脚本家の方も好きでいてくれたらしいし、絵を描いているみなさんも結構好きな人が集まってくれたらしいので。SNS とかで「やりたい」って手を挙げていた方も何人かいらっしゃいましたからね。
皆川:だから「ありがとう」という感じですよね。僕の中では『スプリガン』って、確 かに自分で作った子供なんですけど、もうとっくに大 人になって結婚して独り立ちしたような感じなんですよ。その子どもが国民栄誉賞をもらったみたいな感覚 がありますね。「おめでとう!」みたいな(笑)
――アニメを観たときに改めて面白いなと思ったエピソードはありますか?
たかしげ:話が面白いって言っちゃうと自分 を褒めちゃうことになるのでちょっ と違うん ですけど、森の話は結構、絵が強かったですね。知っている人はみんな感心してる。こんなになるんだって。ある友達はプロジェクターシステムで観たときに音が ちゃんと四方で動くからゾワゾワするって言っていました。怨霊に囲まれる感じ。
皆川:僕は「忘却王国」ですね。あれ、正直地味な話なんですよ。それをあんなに かっこよく作ってくれたというのは感激しましたね。あと「水晶髑髏」のボーの動 きもすごかった。漫画でも確かに描きましたけど、こういう感じになるんだって。 ボーがぐるぐる回っていて、朧が「いつまで回ってるつもりですか」って。「これ使ってくれたんだ」っていう(笑) 何から何まで漫画のままやってくれてるっていう のが感動的でしたね。
たかしげ:やっぱり小林寛監督のバランスの取り方がうまいんですよね。
――声優陣の演技についてはいかがですか。
皆川:僕は初回のアフレコを見学させてもらったんですけど、そこでまずみんなが台本を読むじゃないですか。それ に対して音響監督から指示が出るんですけど、その時点で「これでいいじゃん」って思っていました(笑)
たかしげ:アドリブもすごかったですね。帰らずの森で芳乃が暁と「おじさん」って 問答する辺りの会話があるんですけど、あれはアドリブなんです。音響監督から 「適当に会話で埋めてください」の指示で、ほぼ一発であれができていたんで、すごいなと思いました。
――あのシーンは本当に芳乃と暁というキャラクターが出ていますよね。
たかしげ:そうなんですよ。「そう言うよね」っていう。リアクションもそうだよねっていう感じだったし。声優さんって すごいなって。
――劇場版に参加されたキャストの方も今回登場していますね。
たかしげ:うん、朧役の子安武人さんと、劇場版で御神苗役だった森久保祥太郎さんが参加されています。
皆川:ネタバレになっちゃうけど、森久保さんに最後にあのセリフを言わせるのも面白いですよね (笑) あれを元々 主人公だった森久保さんが言うっていう。
――そのアニメが今度は地上波で放送されるということですが、その先の続きも気になります。まだまだ残っているエピソードがたくさんありますからね。
皆川:そうですね。そのためにもまずは今回、みんな観てくれたらいいなと思いますね。
――最後に、今回のアニメで『スプリガン』に出会う新しいファンに向けてメッセージをお願いします。
たかしげ:とにかく作者がいちばん喜んでいますので、とにかく観てください。観て、楽しんで、この作品を前に進ませてください。続編をいちばん楽しみにしているのは原作者ですので。一緒に楽しんでいただければ、それが何より の喜びです。
皆川:うん、とりあえず何でもいいからパッと観てもらえたら、面白いからたぶんずっと観てくれるはずなので。とにかく観てほしい。漫画は読まなくていいから、アニメを観てくれって思います。
たかしげ:そう、アニメのほうがいい出来なので(笑)
Interviewer:小川智宏

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着