「“続けてきた人間たち”の汗と歴史
がここにある」~舞台『仁義なき幕末
-令和激闘篇-』木津つばさ&鈴木勝
吾インタビュー

「東映ムビ✕ステ」シリーズ最新作『仁義なき幕末』、映画『仁義なき幕末 –龍馬死闘篇-』公開に続いて上演される舞台『仁義なき幕末 -令和激闘篇-』より、村田組・尾崎水月役の木津つばさと錦旗会・伊達唯臣役の鈴木勝吾がインタビューへと駆けつけてくれた。初共演から7年目の板の上での嬉しい再会、「演劇」という絆で結ばれているふたりにとって特別な1作になるであろう本作について、それぞれの思い溢れる“信頼”トーク! を届ける。
ーー鈴木さんは映画からの続投、木津さんは舞台からの参加となる『-令和激闘篇-』。現在お稽古真っ最中ですが、手応えはいかがですか?
木津:いやぁ、僕も映画出たかったぁ〜!
鈴木:(爆笑)。
木津:映画は現代から幕末へ、舞台は幕末から現代へのタイムスリップから始まるお話。僕が演じる尾崎としては現代のメンバーが幕末へ行っている間どうしていたかというところも作っていかなくては……なんですけど、だからこそやはり幕末も体験したかったですね。尾崎は村田組の中では幕末で自害してしまった矢崎 広さん演じる高梨よりも下で、今作ではその後釜的ポジションを狙いつつ、でも本人はそこまで強いわけでもなく。自分自身、今はまだ坂本龍馬役の松田 凌さん、大友一平役の和田琢磨さん始め、幕末からきた人たちの気迫に追いつけず若干、稽古場で萎縮しております(笑)。
鈴木:怯えてる場合じゃないでしょ(笑)。
木津:(笑)。
ーー映画でも彼らが放つ“任侠感”は凄まじかったですから。
木津:セリフでも「幹部連中も死んじまった。組員だって逃げちまった……」とあって、もう自分ひとりじゃどうしようもない状況というか、ただの三下なんだよなぁと痛感している。「仁義」にしても、幕末の人たちの「仁義」と現代のヤクザが考える「仁義」っていうのは捉え方も違うし、そこを互いに戦いながら己の信念のために……というところで見せていくことになるでしょうね。その中で尾崎は一貫して「組を守る為に」、そして村田組へ寄せる忠誠と後悔の気持ちを持っていなければいけない。結構重要な役どころをいただいたな、と思っております。
木津つばさ
ーー鈴木さん演じる伊達も“幕末からきた組”のひとりになるんですかね。舞台版のキャラクターの捉え方としては……。
鈴木:地続きではありますよ。でも見え方は難しいですよね。幕末で死んだと思っていたのに生きて帰ってこれて……とはいえ、台本を読んでいると結局彼は映画と変わってないんだよなぁ。だからむしろそこを自分がどう変えていくのか、そしてクライマックスシーンにどう向かい合っていくのか。あと物語で言うと桂小五郎(岡 宏明)との絡みもあるので、そこを踏まえてどう分厚くしていけるかなっていうのが、僕的には勝負どころなのかなとは思っています。
ーーそもそも伊達は用心棒なのか、腕利きの幹部なのか、それとも……と、彼の忠誠心や組織の中でのポジションも終始謎めいて、だからこそついつい目を惹かれてしまう存在となっている。
鈴木:そうなんですよね。唯一、(柏木)佑介演じる若松総太郎との関係から推しはかるか、もしくはもうスーパーエクストラゾーンのままやるのか。いっそ、ここは一度死んだも同じ、令和から幕末へ行った人間としていわば“亡霊”と化して幕末の記憶を背負い暴れていくのか——。
木津:それだとより見応えがありますよね!
ーー演出の毛利亘宏さんからのオーダーはありましたか?
木津:僕はまだですね。
鈴木:だね。稽古場的にもまだ全体のミザンスと殺陣をつけている段階、やっとパーツが揃ってきたってところかな。毛利さんともまだ各々が「脚本を読んで思っていることがありますけど、どうしましょう?」って、確認し始めているところだったりもするので。
木津:今回本当にアクションがいっぱいあって、その中でのお芝居の呼吸というものがとても大事になるから……そこはやっぱり動きがついたその先、まさにこれからどんどんやっていくんだと思います。
鈴木:俳優陣は、つばさが一番下だっけ?
木津:女性を除くと僕と、一個下に岡くんがいるって感じですね。
鈴木:そっか。うん、だから若くても下はつばさたちってところで、上はもちろんアグレッシブに行くけど、下も全然アグレッシブに行けちゃう俳優ばかり。だから不確定要素はまだ多いけれど、結果的に勢いのある舞台にはできるぞっていう希望的観測はありますよね。
ーー映画も舞台も作品のカラーとしてはいい意味で想像よりもずっと物騒で、ファンタジー要素もあるけれど、基本は正統派のヤクザものという印象を強く感じています。毛利さんのオリジナル作品の中でもバイオレンス度が高い。
鈴木:確かに「なぜ今そういう作品を?」ってことも気になりますよね。僕はまず毛利さんが映画をどう消化して……映画と同時に脚本を書いていたわけではなく映画を受けて舞台のほうを書き上げたらしいので、まずはそこをご本人にも問いかけたら自分もまたいろいろできそうだな、面白そうだな、とは思っていますけど。作家の内面の流れを知るというか。
木津:(頷く)。
鈴木:ここに集まっている俳優はみんな毛利さんのことが好きで……もちろん初参加の方もいらっしゃいますけど、例えば現場で毛利さんが苦しいって時もみんなで問題を解決していけるだろうし、何も心配はないですよ。
鈴木勝吾
木津:はい。僕自身も『仁義なき幕末』という作品世界に参加して1週間。毛利さんはもちろん、個人的に思い入れのあるキャストさん揃いなのでもう「頑張ろう」って、とにかくそれだけです。毛利さんが自分に求めているものも多分「爆発」だと思うんですよね。役どころもそうですけど、やっぱりなんかこの……儚いというか、若くして特殊な世界に飛び込んでしまった尾崎と自分の共通点というか、“あの頃”に戻ったわけじゃないですけど——。
ーー「あの頃」。木津さんと鈴木さんの最初の共演作、毛利さんが演出されたミュージカル『薄桜鬼』の頃ですね。木津さんはそれが初舞台で、のちに「毛利さんは自分にとって演劇の父だ」ともおっしゃっていました。
木津:7年前。その時の勢いとか爆発力みたいなものを今また求められているんだと理解しています。特に僕の役は泥臭くていいっていうポジションなので、こういう任侠の世界の中で若くして飛び込んだ彼の結末、みんなが作り上げた物語の中の一個のスパイスになれたらいいな、というふうに思っています。
鈴木:でもさ、難しいよね。説明的に物語を表現したくはないけど、こういう任侠の世界をつばさみたいな若い俳優が捉えようとするときに、何を拠り所にしていくかっていうのは。
木津:そうなんですよ。僕のこの年齢でこの役をやるっていうのは……ヤクザ役って、なかなかに……。
ーーかつてヤクザ映画隆盛だった頃は自然と時代の空気の中で感じ取れていたものも、流石に令和の今、触れることは難しくなっていて。
鈴木:アンタッチャブルだもんね、そもそも。『土竜の唄』みたいなエンタメに振った作品は割とあるけど、今回はそういうわけでもなく、結構真面目に任侠をやらないといけない。そこをちゃんとやらないとっていう時に難易度高いんですよ。例えば『孤狼の血』とか……?
木津:それでいうと僕は『孤狼の血』の中村倫也さんみたいなポジションなのかなぁとは思いました。
鈴木:うん、そうだよね。
木津:そんなイメージになるといいなぁと凌くんとも話したりして、本当にあそこまで背負えたらいいなぁっていう……勢いとしては、ね。自分の経験値的にはなかなか自分の身から出てくるものっていうのがないので、やはりそういう作品なんかを見て研究はしています。
鈴木:僕もそう。任侠は本当に手強い。昔の俳優さんって今の僕らと違ってもっとこう……任侠な世界をリアルに漂わせているかのような人たちが集っていたイメージというか……いわゆる匂い立つものをもともと纏っていた人こそ芸能界で活躍されていたのかな、とか思うので。
木津:そうですよね。
鈴木:今回、もっとファンタジーとかエンタメに寄せればやりやすいんだと思いますけど、まずはそうじゃないところを突いていこうという方向性なので……なんかもう逃げ道無くさないとダメだね。いっそ開幕直後にバーン! っと脱いじゃって、早々に一回「今回はこれじゃ〜!」ってやるか(笑)。
木津:(爆笑)。
鈴木:いや、違うなぁ。もしかしたら僕ら、やり過ぎようとしてるのか?? ちゃんとし過ぎなのか!?
木津:あ〜。わかります、わかりますっ(笑)。
鈴木:脚本に書いてあることは書いてあることで。やるかやらないかは役者次第、みたいな。うーん……。
(左から)鈴木勝吾、木津つばさ
ーー拝見した脚本自体、説明を削ぎ落とした潔さを感じるスタイルでした。
木津:めちゃくちゃそう感じてます。読み込めば読み込むほど……簡単なことほど理解しようとすると時間がかかるというか、考えすぎると沼にハマって抜け出せなくなりそうな作品ではあるな、と。
鈴木:解釈の自由度が高いですからね。共通認識を見つけるところも含めて、本当にみんないろいろ試行錯誤してますよ。
ーーお二人は7年前が初共演。そして本作はそれ以来2度目の共演だそうですね。その間の交流などは?
鈴木:つばさはね、もうちょこちょこ情報が入ってきてて。
木津:いや、なんですか? なんですか!? 情報、入ってきてるんですかっ?
鈴木:うん(笑)。どうやら何もできずにバタバタと体当たりしていたあの初舞台以来、この7年をかけて……いや、もう早い段階でなんか「芝居バカ」になってるらしいという話も聞いてて。
木津:おお〜っ。
鈴木:僕としては「そうなんだ、いいじゃん」って思っていた7年間で。目に見えて作品の数も増えて、主演作もいくつもやっているっていうのを聞くと嬉しいなって思っています。だってあの頃はこうして二人で取材を受けるなんてこともなかったからね。
木津:そうですよぉ〜。
鈴木:だからいざ本読みをやって面白かった(笑)。やっぱり時は流れる……もちろんつばさはつばさなんですけどね。でも17歳から24歳までの7年間はおっきいよなぁと。
ーー「立派になって」と?
鈴木:ふふっ。「あのつばさが」ってね(笑)。今回は探り探りみんな徐々に火がついていくような感じの本読みだったんです。で、最初につばさが琢磨くんと絡むところで先輩方も「大丈夫かなぁ」なんて思ってるのが伝わってきて(笑)、心の中で「この状況おもろ、おもろ」って思いながら見てました。
木津:いやもう僕、『仁義なき幕末』の世界には初めての参加だし、「やってやりましょうよ!」みたいな気持ちでしかなかったですから。
鈴木:そこは僕もなんか「受けて立っていこう」みたいな気合いが匂い立ってきた気がして、これは楽しいなぁと。つばさの役が上に反抗する役だから、「バカヤロー!」とかも、つばさが言ってるのか役が言っているのかわからないみたいなその感覚がまた僕は楽しかったけど。
鈴木勝吾
木津:(爆笑)。もちろんめっちゃ緊張してましたけど、本当にあの頃一緒にやっていた方々が……(柏木)祐介くんもですし、凌くんも、勝吾くんたちもいる中、もうすっごい端っこでねドキドキしてましたよ。でも久々でした、僕、痺れる方が好きなんで……どこにいても。やっぱり非日常的な空気、普段あまり体験できないようなあの現場の感覚はめちゃめちゃ好きだと思った! でもいざそこに行くと「ああ〜」ってなっちゃって、「……っす」って(笑)。
鈴木:今はまだ一周目なんで、二周目入ったらまたいろいろ見えるかな、と思っています。つばさも、つばさ以外も。
木津:もう自分の全てを勝吾くんには見透かされていたあの時。かけてくださる言葉一つひとつが自分の中に刺さっていました。自分で言うのもアレですけど、純粋な、何もわからない時代を知ってくださっていて、その時にご一緒させていただいていた方ですからね。当時、勝吾くんとガチで対峙するシーンがあった時も……「風間ぁっ!」って名前を叫んだりするシーンでね。これは本当に個人的なことなんですけど、僕は役者をやっていて初めて何も考えずに出てきた言葉だったんですよ。それが。その名前が。
鈴木:うんうん。あったね。そんなことも。
木津:自分にそうさせてくれたのは目の前の勝吾くんだったし、その時ご一緒させていただいたメンバーだったりもするので、その時のカンパニーの皆さんには本当にもうおこがましいですけどこの7年間「絶対見ててください!」って思ってやってきていたので、こうしてご一緒させていただけるのもすごく嬉しいんです。でも! 自分的には「もうきたか」と(笑)。
鈴木:ハハハハッ(笑)。
木津:ちょっと早かった。そこはもっともっと経験を重ねてから……。
鈴木:いや、もう、でも7年だよ!
木津:いや、そうですよね、はい! なので今作に出演が決まって、そして本読みを迎えた時に「今までこうして役者を続けてこれて、みなさんもまた役者を続けていらしていて……」っていう奇跡というか深い縁を感じました。早くもこれは絶対に思い入れのある作品になるだろうなと思っております。
ーー時間を経ての運命の再会。おふたりがこの部屋に入ってきた瞬間から、信頼感に溢れた空気はしっかりと伝わってきました。
木津:はい。あと僕、勝吾くんのインスタグラムの言葉がめっちゃ好きで。
鈴木:なんだよそれ〜(笑)。
木津:勝吾くんの発言には国語力とか道徳とか自分が一番始めに学ばなきゃいけないことがもう全部あって……。
木津つばさ
鈴木:国語力って!
木津:やっぱりインスピレーションというか、だからもうそれは会えない間もずーっと見ていました。自分の思いを言葉にする力っていうんですか? そういうのがもう毎回「うわぁ、これは」って、いつも刺さってくるので。
鈴木:そうなんだ。あの、ちょっと話が逸れてしまうかもですけど、元々ね、毛利さんというか制作陣の中に「ミュージカル『薄桜鬼』で出会った俳優たちをもう一度集めて何か作ろう」っていうのも、今回の裏テーマとしてはあったらしいんですよ。
木津:僕もそれはちょっと聞きました。僕なんて昨日勝吾くんと佑介くんが対峙するシーンを見ながら「おふぁ〜」っていろんな思いが募った声出ちゃって(笑)、個人的にグッときてましたし。
鈴木:つばさは特にそうかもね。なので、舞台『仁義なき幕末』もいろんな楽しみ方があると思いますけど、今回そういうところも、観にくる方も素直に感じてもらっちゃって全然いいんじゃないですかね。
ーーみなさんが重ねてきた時間と同じだけ、お客様も時間を重ねてここでまた再会する。続けてきたからこその人生の交わり、思いの共有を思うとちょっと胸が熱くなりました。
鈴木:そういうイベント要素も確かにあります、今回。そしてもちろんそれとは無関係に、僕らは今、真剣に『仁義なき幕末』という作品作りに集中しています。一方で、ちょっとそういう面での味わい方もあるし……お客様も僕らも。そういうエモさ、胸熱なところも含めて、映画と舞台どちらも楽しんでくださったらなぁ——という話になりますね、やっぱり。この二人でいると。
木津:素敵なキャストの皆さんとスタッフの皆さんと……自分にとって簡単に言葉にできないような関係の方々がいて、そこにまたはじめましての方もいてくださって、舞台ならではの新しい『仁義なき幕末』が生まれる。映画では見せられなかったこと、映画では見せずに舞台に取っておいたことなんかも含めて、一体感を大切にしつつ、いろんな方向から「僕らがやる作品」としての意味がある物語にはなると思っています。作品の大きなテーマでもある「仁義」。自分にとって仁義を通すべきはやっぱりお客様です。劇場にお越しいただいたお客様が、素直に純粋に「楽しかった」っていう感情を持って帰っていただけたらいいなぁ。それが僕の「仁義」です。
鈴木:自分も俳優、スタッフさん、それぞれに縁の深い人が多い現場で、それはきっと観てくださるお客様にとっても同じことだと思うので、なんか……ね、続けてきた人間の汗、刻まれてきた皺、舞台上に積み重なってきた歴史みたいなものが少しでもお客様と共有できる作品になったら素敵だよなぁ。今回僕ら、やるべきことを全部やりきった上で、そういうプラスアルファの“思いの共有”みたいなものも、自然にいい香りとなって漂っていくような作品になれば成功なのかなって思っています。まずは必死にこの先品に向き合って、劇場でみなさんにお会いするその時まで、頑張って稽古していきます。本番も楽しみにしていてください。

(左から)鈴木勝吾、木津つばさ
取材・文=横澤由香    撮影=福岡諒祠

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