フィギュア的秋葉原ガイド フィギュ
アの最前線を体感できる主要スポット
を紹介

 まずは最近のホビー系の状況から。イベント関係などでは特に大きなトピック的なものはないのですが、ちょっと気になったツイートを見かけました。

 RCベルグなどガレージキットの複製・生産を行っている複製業者から、7月のワンダーフェスティバル用の生産予約がもういっぱいになったという告知が出ているのです。まだ4月半ばでワンフェス当日版権の本申請すら行われていない時期に、完成するという見込み、販売できるという見込みで予約をしないと間に合わないという状況ということなのです。予約が満杯になるというのはもちろん以前からあったのですが、最近はその時期がどんどん早くなっている感じ。
 これが単純にガレージキット人気が爆発してディーラーがどんどん増え、生産が追いつかないというならめでたいことなのですが、ワンフェスの参加ディーラー数の上限はそんなに大きく変わっていません。今年2月のワンフェスは約1700でしたが、夏は増えたとしても会場規模的には約2000が上限と考えられます(コロナ前のピークが約2000程度)。
 複製業者側の事情を知るには別途キッチリした取材を行う必要がありますが、このキャパオーバーの原因のひとつは業者に生産のすべてをまかせている人が多くなったことだろうという推測は成り立ちます。ガレージキットはその名の通り、自宅のガレージ(これはアメリカの話で、日本ではガレージをつかうことはないでしょうけど)で生産まで行うというのがそもそもの成り立ちで、自家製の手流しで量産する人も多いものでした。ですが、現在は模型製作の基礎知識なしでもデジタル造形を行うことができるようになり、その結果型取りや複製(ヘタすれば分割も?)をやったことがない人が増え、すべて業者まかせの業者抜きにしている人が多くなっているのではないかと。アナログ原型だとできあがって目の前に物理的に存在する原型を複製できますが、デジタル原型のデータ状態で納品された場合は、3Dプリンタでの出力から手がけないといけないためにかかる手間も多くなります。
 こういう状況だと、3Dプリンタで出力したものをそのまま販売するというディーラーも増えそうですが、それはそれで経時変化による劣化の心配もあるのでなかなか難しいところです。通常のレジンキットであれば生産から数十年たってもまだ組み立て可能な例が多いのですが、3Dプリンタ出力品は比較的早く劣化する例が多いようなのです。とはいえ、3Dプリンタはまだまだ進化し続けている真っ最中。出力方法も素材もまたどんどん変わっていくでしょうから、今後を期待したいところです。
 というところであらためて今回の本題。今回は秋葉原とフィギュアについて少しまとめてみたいと思います。
 秋葉原といえば、池袋、中野と並んで世界有数のオタク街という認識をもたれています。建物ひとつに集中している中野と違って町全体にショップがひろがり、池袋よりも男性ファン向けのジャンルが多めというのが特徴。そんななかで特に秋葉原が得意とするジャンルのひとつと言えるのがフィギュアをはじめとするホビー系。
 秋葉原でホビー系が目立つようになってきたのは1990年代後半。ホビーメーカーの直営店が秋葉原に進出するようになって、一挙に傾向が変わっていったのです(それまでは割と渋谷が多い印象でした)。特に海洋堂がラジオ会館に進出したのは象徴的な出来事でした。
 これは98年のラジオ会館。4階のところから、海洋堂の等身大綾波レイフィギュアが街中を見下ろしていました。
 その後、フィギュアブームもあってホビーショップが続々と登場、現在に至るというわけです。
 現在の秋葉原には、さまざまなタイプのフィギュア関係スポットがあります。
 まず、単純にフィギュアを買える場所ということでは、ホビーメーカーのボークスやコトブキヤがビルまるごとの直営店を展開し、各所の雑居ビルの中にはホビーショップが軒を並べています。フィギュアを含む中古ショップが多いのも秋葉原。
 メーカー直営店では自メーカーの製品だけではなく他社の製品も並び、そのメーカーならではのさまざまなイベント展示が行われるのも魅力。
 雑居ビルでは駅前のラジオ会館は秋葉原を代表する名所ともいえる存在になっています。海洋堂、アゾン、ボークスなどメーカーの直営店が各階に入り、フィギュアやドールなどの専門ショップも数多く入っています。中でも、あみあみの展示コーナーは要注目ポイント。発売前の新作が数多く展示されることで知られており、発表されたばかりの塗装見本品が並ぶこともしばしば。その種類も膨大で、さまざまなメーカーのものが並んでいるのも大きな特徴です。フィギュア全体の最新情報を知るには欠かせない場所です。
 フィギュア展示ということで見逃せないスポットが「TAMASHII NATION STORE TOKYO」。電気街口を出てすぐの線路下にあるこのショップはBAINDAI SPIRITSの「魂ネイション」直営店です。ここでしか買えない限定品ふくめて「魂ネイション」商品の購入ができるのですが、それに加えて展示スペースが魅力的。ここで初出しになる最新作展示もあれば、テーマに沿ったイベント展示も。最新作ということでは「刀剣乱舞」の「PROPLICA 三日月宗近」が4月30日まで展示中ですし、イベントでは今年15周年を迎えた可動フィギュアシリーズS.H.Figuartsの展示イベント「S.H.Figuarts 15th GALLERY ~PART2~」が5月22日まで開催中。S.H.Figuartsの15年の歴史を振り返るパネル&フィギュアや、最新作(PART2ではアニメ・ゲーム中心)の展示が行われています。
 さらに山手線線路下をそのまま北に少し向かうとある「SEEKBASE」内には、同じBANDAI SPIRITSのプライズブランドであるBANPRESTOの展示スペース「BANPRESTO LAB」も。
割と穴場的なスポットですが、今後登場予定のものを含めて最新プライズフィギュアがずらりと並んでいるのです。
 そういったプライズフィギュアを手に入れるのも秋葉原なら便利。プライズ専門のところもふくめ、各所にゲームセンターが展開されていて、新作プライズが絶え間なく並んでいます。
 フィギュア関連のイベントが多いのも秋葉原。新型コロナの流行で一時期はリアルイベントはなくなっていましたが、最近は順調に復活しています。「メガホビEXPO」「ワンホビ」「魂ネイション」などのホビーイベントは定期的に開催されていますし、アニメ・ゲームイベントでも片隅に関連フィギュアが展示されるというのはよくあること。
 なお、秋葉原界隈にはホビーメーカーも数多く所在しています。秋葉原の喫茶店にいると後ろに座った人がメーカーの人と原型師で、新作フィギュアの企画相談がはじまったというのは以前の秋葉原あるあるのひとつでした(笑)。
 とまあこんな具合に他のエリア以上にホビー純度が高いのが秋葉原。現在の秋葉原を歩くと、他のエリア以上に外国人観光客がメチャクチャ多いことに気がつくと思いますが、そういう人たちがホビー系のグッズを手にしているのもよく見かける光景。フィギュアを含む日本のホビーは、それだけの魅力と訴求力があるのです。
 現在、フィギュア購入はオンラインが主流になっていますが、やはりフィギュアは実物を見てこそ本当の魅力が分かります。秋葉原は総合的にそれを実現できる場所として世界の中心地になっているのです。

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