L→R 琢磨章悟(Ba)、篠塚将行(Vo&Gu)、只野うと(Dr)、菅澤智史(Gu)

L→R 琢磨章悟(Ba)、篠塚将行(Vo&Gu)、只野うと(Dr)、菅澤智史(Gu)

【それでも世界が続くなら
インタビュー】
生きることが悲しいことなら、
悲しいまま生きていくだけでいい

逆に、“好きだ”と
言ってくれた人たちの声が
僕らのことを死なせないでくれた

自分と同じように悲しく切ない人の心に作品を通して触れられるのは、リスナーにとって大きな意味があると思います。

篠塚
それは自分だと分からないですね。逆に、僕はこのアルバムを好きと言ってくれる人がたくさんいる世の中って、あまり良くない世界だと思うんですよ。このアルバムをいいと思う人が多いなら、世界は不幸というか、世も末というか。それに僕が社会的にマイノリティーであるのと同じように、僕の音楽もマイノリティーであって然るべきだとも思っていますから。だからこそ、僕と同じような人と出会えたとは思うんですけどね。たぶん、僕もメンバーも聴いてくれた人も、誰もが死ぬまで孤独なんですよ。だから、本当の意味では分かり合えないかもしれないけど、似た孤独を持った同士が出会って、“えっ!? おまえもそんな嫌なことあったの?”ってなる、ただそれだけでいいというか。大げさな評価はいらなくて、僕はそれだけでこのアルバムを出す価値があると思っていますから。

人の存在って多数決で決めていいはずがないですからね。マイノリティーもマジョリティーも存在していいという点で同じであるべきですし。

篠塚
そうですよね。どうしても多数決になりがちですけど、そもそもロックミュージックってマイノリティーの“ふざけんな!”っていう所が発祥だったりしますからね。カートとかピストルズとか。そういう中で、たくさんの人に聴かれたマイノリティーなミュージシャンもいるけど、それは、別に僕じゃなくていいというか、なるべくしてなる人がなればいいと思うんです。

あと、マイノリティーって、例えば学校のクラスとか小さなコミュニティーでは少数派ですけど、世界規模でとらえたら同じような人は少なからずいるじゃないですか。

篠塚
ですね。そういう意味で僕の理想は、このアルバムがひとりぼっちの人たちが集まる公園とか、感情を捨てるゴミ捨て場みたいなものになれたら嬉しいですね。僕は夢のない人間だと思っていますから、こんな夢も希望もない僕にメンバーがずっといてくれるのもすごいことだと感じていて。っていうか、何でみんな俺とバンド続けていこうと思えるの?
菅澤
このバンドをやるのが人生にとって当たり前になっちゃっているからね。まず、辞めるという発想がない。選択肢もないし。

バンド、好きな音楽、好きなものって居場所だと思いますし、メンバーのみなさんにとってもそうなのかなと感じるんですけど、どうですか?

篠塚
章悟は、僕が死にそうになった時に、“バンドはファミリーだから”って言ってくれたんですけど。そうなの?
琢磨
そうだね。家族みたいであるべきっていうか、“居場所”ってことだと思うよ。
菅澤
実際、家族以上に一緒にいるからね。
只野
私は…どうなんだろう? 居場所ではあるのかもしれない。私は知り合い以外の人間がライヴに会いに来てくれバンドって、このバンドが初めてだったんです。だから、加入した時は、誰とどう向き合ってライヴをしたらいいのか分からなくて不安だったんだけど、クラウドファンディングのコメントとかライヴで、それせかをこれだけの人が支えようとしてくれているのを実感して。こんな私をみんなが受け入れてくれて…あれ? なんで泣いてるの、私?(泣)
菅澤
いいじゃん(笑)。
只野
あとから入った私を温かく迎え入れてくれて、“それせかの新しい曲を聴けるのは、うとちゃんのおかげです”と言ってくれる人もいて…別に泣きたいわけじゃないんですよ(泣)。私はファンの人たちに力をもらったんです。だから、恩を返したいっていうのがすごく大きくて…以上です!
篠塚
でも、音楽的にも人としても、本当にうとちゃんが加入してくれたおかげですからね。続けられているのは。

このアルバム、演奏もすごくいいです。あらゆる曲に言えることですけど、言葉と感情に寄り添った音を奏でるバンドだというのが表れています。

篠塚
ああ…それはこの3人に話聞いてやってください。せっかくなんで。

音階とか譜面では表せない空気感、響きも大事にしている演奏だという印象です。

菅澤
僕らはそれせかじゃないとバンドができないんですよ。
琢磨
特殊なバンドですからね。
菅澤
それでも世界が続くならのためのプレイを注いでいるので。

それでも世界が続くならを表現することに世界一長けているメンバーということですよね?

篠塚
それは間違いないです。端的に言うと、ガースーはギターなんだけど、もはやギターの常識にはいないというか、空気を鳴らしたい人だから、代わりにベースがギターの帯域を鳴らして、僕のギターとベースでツインギターの音像にしているので。で、そうなると必然的にアンプの音量が大きくなるから、うとちゃんみたいに音が大きくて、ベースがいなくても成立するくらい重くて太くて、気持ちが乗っているドラムじゃないと成立しない。全員が非常識というか、一般的なそのパートの役割から逸脱しているので、この人たちじゃないとこの音像は成立しないんですよ。

例えば「流星群」の演奏はすごくいいですね。

篠塚
それは、章悟がイントロのベースを弾いてくれたことからアレンジが広がっていったベースの音像が軸の曲ですね。
只野
あのイントロ?
篠塚
そう。
琢磨
よく覚えてない(笑)。毎日一生懸命に生きているだけなので(笑)。いつも曲のフレーズとかは決まっていなくて、ライヴごとでも違うので、その瞬間に“一番いい”と思ったことをやるだけなんですよね。

音楽はリズム、メロディー、ハーモニーとか、譜面で表せることだけで成り立っているわけではなくて、空気感も大きな構成要素だと、こういう音楽を聴くと改めて思います。特にバンドサウンドにとって、それは大きいですからね。

只野
空気感っていうことだと、一番作っているのはガースーさんなのかな?
菅澤
そうなのかな? 僕は“シューゲイザーギタリスト”みたいに思われたりするんですが、シューゲイザーを目的にはしたくないんです。あくまで自分の手法のひとつであって、歌詞や曲に必要じゃなかったらやりたくない。

曲に対する必然性を考えて演奏しているということですよね。

菅澤
そうですね。そのつもりでやっています。
篠塚
お互いの人生や考え方が生かされていないとつらくなってしまう人間の集まりですからね。“お前が好きにやれないんだったら、俺もやらない”って考えになっちゃう人たちなので。本来なら、簡単に世の中から消えてしまう思考の音楽だと思うんです。“音楽で人を救う”とか言う人もいますけど、僕たちの場合は逆で、僕らを“好きだ”と言ってくれた人たちの声が、僕らの音楽を死なせないでくれたんだなと。このアルバムには、それをすごく感じるんです。

取材:田中 大

アルバム『死にたい彼女と流星群』2023年5月3日発売 YouSpica
    • 【限定盤】(CD+自伝的漫画単行本)
    • YSPC-0002
    • ¥2,750(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • YSPC-0003
    • ¥2,090(税込)

ライヴ情報

『それでも世界が続くなら独立第一弾ALBUM「死にたい彼女と流星群」リリース記念 東名阪ONE-MAN LIVE TOUR「灰と流星群」』
6/11(日) 東京・渋谷Spotify O-Crest
7/01(土) 愛知・K.D JAPON -空き地-
7/02(日) 大阪・寺田町Fireloop
※6/11公演はアルバム『死にたい彼女と流星群』の CD帯を受付で提示すると入場無料(予約必須)。

それでも世界が続くなら プロフィール

ソレデモセカイガツヅクナラ:2011年結成、千葉県出身のロックバンド。対バンを含め、数多くのライヴ活動を行ないながら、12年2月に1stアルバム『彼女の歌はきっと死なない』をタワーレコード限定でリリース(2014年1月に一般流通で再発)。同作はタワーレコードのインディーズ・チャートで1位を獲得し、オリコンのインディーズ・チャートでも6位を記録。メディア露出が皆無に等しい状況下、口コミやネットで話題が広まり、じわじわとセールスを伸ばす。同年9月に2ndアルバム『この世界を僕は許さない』を発表すると、オリコン・ウィークリーチャートで88位にランクインし、全国のCDショップ店員やコアな音楽ユーザーにその名が知れわたる。イジメや虐待、家庭環境や病気などを題材にしたメッセージ性の強い逆説的な歌詞が多く、グランジやシューゲイザー色の強いノイズギターを合わせた変則オルタナティヴサウンドも印象的で、コアなリスナーからの熱烈な支持を得ている。13年9月にメジャー1stアルバム『僕は君に武器を渡したい』をリリースし、14年1月に1stミニアルバム『明日は君に会いに行くから』を発表する頃には、その知名度はいよいよ全国区に。23年より自主レーベル・YouSpicaを設立し、5月にアルバム『死にたい彼女と流星群』をリリースする。それでも世界が続くなら オフィシャルHP

「copy and delete」MV

「永遠」MV

「流星群」MV

「白昼夢から覚めるまで」MV

「変声期 / 8月31日の夜に」Lyric Vid
eo

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着