L→R 福士久美子(Key&Cho)、浅井健一(Vo&Gu)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)

L→R 福士久美子(Key&Cho)、浅井健一(Vo&Gu)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)

【SHERBETS インタビュー】
今まで以上にベンジーを感じ取れる
アルバムになっていると思う

俺はライヴをしないと
生きている意味がない人間

「HAMMER HEAD BRUNCH」もロカビリーの匂いを活かしつつ独自のものに仕上げていることが印象的です。

浅井
これは♪ジャンジャカ・ジャガジャガ・ジャンジャン・ジャーンというロカビリーっぽいリズムの不協和音のフレーズができて、そういうのが大好きだからかたちにしようと思ったんだ。歌詞は“この曲につける歌詞は何かな?”というところから始まって、森の中を走っている単車のイメージが浮かんできたけど、単車系の歌はさんざん作ってきたので同じなのはいかんなと。そんなことを思いながら書いていたら、山奥でカレーショップを始めた友達のところへみんなで行くという歌詞になった。

浅井さんが書かれる歌詞は本当に魅力的で、まず、《キツネ固まる 鳥はビビる》という言葉で、うるさいバイクなんだなということが分かりますね。

浅井
そうだね(笑)。

“唸るエンジンの爆音が”などではなく、そういう描き方が秀逸です。それに、《ところでこんな山奥 お客さん来ると思ってるの/だいぶ甘くない》という言葉は、本当に友達のことを思っているから出る言葉ですよね。上辺のつき合いでしたら、“きっとうまくいくよ、大丈夫”というような軽い言葉になると思います。

浅井
そのあとに《一度はやりたかったんだよな》と言っていて、俺の中にはそこを尊重したいという気持ちがあるんだ。実際、俺の周りにもそういう人がいるから。そういう人たちを見ると、純粋に応援したい気持ちになるんだよね。そこまで分かってもらえると嬉しいな。
福士
私も《お客さん来ると思ってるの/だいぶ甘くない》というところが笑えて好きです。心配している気持ちが、そのまま出ているのがいいなと思って。そういう言葉から素顔のベンジーが感じられますよね。それに、友達のことを思いやって厳しいことも言うけど、やっぱりみんなで騒ぐんだよね。そこもベンジーらしいと思う(笑)。

同感です(笑)。9曲目の「こわれた大人」はウォームかつ軽やかなナンバーで、陰りを帯びたアルバムのいいアクセントになっていますね。

浅井
今回は全部で17曲くらいレコーディングして、全部カッコ良いんだけど、全体のバランスを見ながら入れる曲をチョイスしていったんだ。いろんな人の意見も聞きつつ、これを入れることにした。だから、アクセントになるような曲が必要だと思って、あとから作ったわけじゃないんだわ。曲調が偏ると良くないから、作っている時は心をフリーにしていろんな曲を作ろうとは常に思っているんだけど、「こわれた大人」もそういう曲の中のひとつ。

楽曲は明るい雰囲気ですが歌詞は現代社会に向けた警鐘で、そのミスマッチも魅力になっています。

浅井
この曲って明るいのかな?

えっ? …今回の中では明るいです。

浅井
そうか。明るいかどうかも俺は分かっていないから(笑)。だから、ミスマッチということを狙ったわけじゃなくて、これも偶然。俺は《ホラー映画か?》というところが一番気に入っているんだけど(笑)。スマホをいじってニカァ~とか笑っている奴がいて、そういうのって気持ち悪いじゃん。今は一日中スマホとかパソコンとかをやっているような人が多くて、それはちょっとヤバいんじゃないかと思ったからこういう歌詞を書いた。
福士
この歌詞はベンジーが日頃よく言っている内容というかね。今回のアルバムで全体的に思うのは、ベンジーのナチュラルな感じが出ていて、そこがいいと思いますね。人柄や個性が投影されていて、でも独りよがりな意見の押しつけでもなくて、みんなが感じていることや想いがいっぱい語られていると思うんですよ。必要な言葉がすごく自然な感じで入っているし、メロディーの置き方とかも最初は“んっ?”と思っても、それがすごくいいと思うようになる。今回のアルバムは今まで以上にベンジーを感じ取れるものになっている印象がありますね。

「こわれた大人」も説教めいた口調ではなくて、シニカルなテイストというのがいいですよね。そして、アルバムを締め括るのは温かみにあふれた「優雅に行こうぜ」です。

浅井
これはもう自然にできたとしか言いようがないな。コードができて、メロディーができて、それに合う歌詞を探して。そうしたら福士さんが良いメロディーを作ってきてかたちになった。メロディーでいきなり曲が完成したりするからSHERBETSは面白いんだよね。

“みんなを泣かせるような曲を作ろうぜ!”というような取り組み方ではないんですね。

浅井
いや、思っているよ(笑)。泣かせる曲というか、いつも大ヒットする曲を作ろうと思っている。いくつになってもね。

そういう想いを持たれていながらも安易に商業主義な方向にいったりせずに、自身の美意識を反映させた音楽を作られているのはとても美しいです。

浅井
俺はそういう作り方しかできないから。
福士
ベンジーがそういう人だから、私も信頼しているというのはありますね。「優雅に行こうぜ」は曲もすごく好きだし、ここへ来て“優雅に行こうぜ”と言っている感じがすごくいいと思う。“優雅”といってもいろんな意味があると思うけど、心が優雅に生きていきたいなってこれを聴いていると思います。それにこの曲が最後にくることで次も見たいという気持ちになってもらえる気がしていて、いい終わり方だと思いますね。

いろいろな感情を突かれたあとに「優雅に行こうぜ」がくることで、より深く心に染みます。さて、『Midnight Chocolate』は25周年を飾るに相応しい良質なアルバムに仕上がりました。同作を携えた全国ツアーも楽しみです。

浅井
今度のツアーは未だかつて最高のツアーにするために、めちゃくちゃ頑張ろうとみんなで言っているんだ。“絶対にいいライヴをやるんだ!”と。長年やっているとさ、なんとか無事にツアーを乗り越えられればいい…みたいになったりしがちな気がするんだ。そういうのは本当に良くないと思う。だって、俺はライヴをしないと生きている意味がない人間だから。もちろん、日々は楽しいし、飲みに行ったりしても楽しいけど、ステージに立つことは次元が違う。だから、今度のツアーもとにかく上を目指してライヴをやろうという気持ちになっていて、ぜひそれを体感しに来てほしいね。
福士
私も生きていたら絶対に何かが上に向かっていないとダメだと思っていて、そうじゃなかったらやめたほうがいいと思うんですよ。なので、今度のツアーは“25年も一生懸命やってきたからこそ、こんなに素敵な世界が作れるんだ”と感じてもらえるようなライヴになるといいなと思います。あと、自分の中でちょっと遅すぎるけど見えたことがあって、それを試したいというのがあるんです。魂とかも含めて身体中が自然に気づいたことがあって…今は実験中なんですけど、それができたらいいなと思いますね。“私ってのろいな、気づくのが”と思っていますけど(笑)。

取材:村上孝之

アルバム『Midnight Chocolate』2023年4月26日発売 Ariola Japan
    • 【初回生産限定盤】(CD)
    • BVCL-1287~8
    • ¥4,950(税込)
    • ※60Pスペシャルブックレット
    • 「AUTOMATIC COMEDY」封入
    • ※アルバムジャケット柄ポストカード12枚封入
    • ※スペシャルBOX仕様
    • 【通常盤】(CD)
    • BVCL-1289
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『25th ANNIVERSARY TOUR「Midnight Chocolate」』
5/18(木) 新潟・CLUB RIVERST
5/19(金) 宮城・仙台MACANA
5/21(日) 北海道・札幌cube garden
5/26(金) 福岡・DRUM Be-1
5/27(土) 岡山・IMAGE
6/03(土) 大阪・CLUB QUATTRO
6/04(日) 愛知・名古屋THE BOTTOM LINE
6/08(木) 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
6/17(土) 沖縄・Output

SHERBETS プロフィール

シャーベッツ:シャーベッツ:1998年に結成されたロックバンド。メンバーは浅井健一(Vo&Gu)、福士久美子(Key&Cho)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)の4名。内面的で繊細な部分とアヴァンギャルドで攻撃的な部分が重なり合い、サイケデリックでドラマティックな音楽世界を表現している。これまでにシングル7枚、オリジナルアルバム12枚、ライヴ盤3枚、ベスト盤を2枚発表。2022年10月に23年に迎える結成25周年のファーストアクションとしてシングル「UK」を発売し、全国ツアーを開催した。23年4月にアルバム『Midnight Chocolate』はリリースし、5月から全国ツアーをスタートさせる。SHERBETS Official Website

「知らない道」MV

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着