L→R 福士久美子(Key&Cho)、浅井健一(Vo&Gu)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)

L→R 福士久美子(Key&Cho)、浅井健一(Vo&Gu)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)

【SHERBETS インタビュー】
今まで以上にベンジーを感じ取れる
アルバムになっていると思う

1998年に始動し、エモさや尖り、痛みなどが重なり合った独創的な音楽性を備えた存在として多くのリスナーからアツい支持を得続けているSHERBETS。アルバム『Midnight Chocolate』はより表情の幅を広げるとともに、さらに深化した彼らを堪能できる作品に仕上がった。25周年を飾るに相応しい本作について、浅井健一(Vo&Gu)と福士久美子(Key&Cho)に語ってもらった。

歌はすごく深いものだし、
ものすごく簡単なものだと思う

本作の制作を始める前はどんなことを考えていましたか?

浅井
毎回だけど、何も考えずにやるのがSHERBETSの特徴で、“こういうアルバムにしよう”という構想みたいなものはなかったね。

25周年ということも、特に意識されませんでしたか?

浅井
しなかった。
福士
私は25周年は意識していました。ベンジー(浅井健一の愛称)はしていないかもしれないけど、“25年もやってきたんだなぁ”というのが自分の中にはあって。だから、絶対に今までよりも何かが進化していて、“いいな”と思ってもらえるアルバムにしたいと思っていました。“終わっちゃったな”みたいになるのは生きている意味がないから、“ずっと必死にやってきたからこそ、これがある”というものが伝えられるような一枚に、そうしたい気持ちがありました。

その想いを浅井さんに伝えはしなかったのでしょうか?

福士
伝えなくても分かってもらえるから…実際は分からないけど(笑)。でも、外ちゃん(外村公敏の愛称)が “25周年だから…”とミックスの前にすごく言ったりしてたので、やっぱりメンバーのみんなはそれぞれ25周年のことを思っているんだよなって感じていました。

口には出さないけれど、みんなが同じ想いを抱いているというのはいいですね。そういう状態で作られた作品に相応しく、本作もまた良質な楽曲が揃っています。

浅井
ありがとう。自分の中では「知らない道」と「セダンとクーペ」、「HAMMER HEAD BRUNCH」「愚か者」「優雅に行こうぜ」が特に好きかな。「こわれた大人」も面白いけどね。ちなみに「Fantastic」は福士さんの歌かなと思ったけど、ちょっと失礼すぎるかもと思って。よく読んだら、めちゃくちゃ失礼な歌詞だからさ(笑)。
福士
ベンジーがニヤニヤしながら“福士さんの曲ができたわ”と言ってくるから、どうせまた変なことを言っているんだろうと思って歌詞を読んだら、“いらないものは全部捨てろ”という歌でした(笑)。でも、そのとおりなので今となってはこの歌が響きすぎてしまって。最後に《とっとけ!》と言っているじゃないですか。“やっぱり捨てなくていいよ。そのままでいい”と言われると逆に、“ええっ!? なんで捨てろって言ってくれないの?”と思って、捨てなきゃという気持ちになるんですよね(笑)。
浅井
言っても無駄だと思って放っておくと、自分でやり始めるという(笑)。
福士
そう(笑)。「Fantastic」はそういう人間心理を突いていて面白いし、いい曲だと思います。私が『Midnight Chocolate』の中ですごく好きなのは「知らない道」や「Aurora Squash」とか。でも、どの曲も好きだし、最後に「優雅に行こうぜ」がくる感じはすごくいいと思っています。

アルバムの構成も秀逸です。まず、アルバムの幕明けを飾る「知らない道」は躍動感と陰りを併せ持ったナンバーで、歌詞は“昔はドライブが大好きだったけど、今はあまり惹かれない”という気持ちが歌われていますよね。

浅井
これはうまくいったと思う。途中までは誰でも思いつくと思うんだわ。最後がなかなか思いつかなかったんだけど、《OKそっちにするわ》という歌詞の言いっぷりが良くて、そこで救われたと思う。

この曲の《OKそっちにするわ》というところは最高にカッコ良いです。

浅井
なかなかああいうふうには言えないよね。あの言い方は本当な感じがして、自分でも気に入っている。数回歌ったら、ああいう感じで歌えたんだ。
福士
この曲の歌詞は素直な人間の心を描いていると、私は勝手に思っていて、自分にもすごく当てはまるんです。昔は大好きだったけど、今はそうでもない気持ちは本当によく分かるという状態に自分もいたから、まさにハマりました。いろいろ迷ったりしているのかもしれないけど、最後は《サンシャインエナジーは無限》という言葉の連続で、未来に向かっていこうとする前向きな感じで終わるのも好きです。なんかとても胸の奥がキュンとくる歌詞で、主人公は素敵だと思いますね。

浅井さんは人の内面を描くことに長けている方だと改めて感じます。歌詞に留まらず、楽曲も上質ですし、中間に落とすパートを入れ込んでドラマ性を高めているアレンジなどもさすがです。

浅井
この4人でやると自然とそういうものになるんだよね。頭から始まってふた周りめからキーボードがフワンと入ってくるけど、それも言ったわけじゃなくて福士さんが自由にやったことだしさ。そこがSHERBETSのいいところ。

メンバーがいいと感じるものが共通していることが分かります。「知らない道」はアンニュイさとクールさがない交ぜになっているヴォーカルにも耳を惹かれました。

浅井
アンニュイかな? 自分ではよく分からない。

そうですか…。この曲に限らず、浅井さんは常に自然体で歌われているように感じますが、そのあたりはいかがでしょう?

浅井
歌というのは作為的になっちゃダメじゃん。本物じゃないといかんでしょう? “本物になるぜ!”と歌うのも変だから(笑)。だから、フラットな感覚で歌うというかさ。歌はすごく深いものだし、ものすごく簡単なものだと思うんだ。レコーディングをする時は、何も考えずにいく。レコーディングはああだこうだ考えるものじゃないからね。それこそ二十歳くらいの頃はさ、自分も全然そういう考えまで到達していなかったわけ。やっぱり長年やってきて、SHERBETSも25年やってきて、だんだんと分かってくるというか。歌をレコーディングすることに関しては、自分の本当の部分が音になればいいと思っている。

それは正論です。ですが、そこにはなかなかいけないような気が…

浅井
そう、なかなかいけない。でも、「知らない道」はそうなっていると思うから嬉しいんだよね。メンバーも喜んでくれたよ。俺の中では、もうちょっと頑張らないと…“頑張る”というのは違うか(笑)。もっと自然体でいけるんじゃないかなというのはあるけどね。
L→R 福士久美子(Key&Cho)、浅井健一(Vo&Gu)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)
アルバム『Midnight Chocolate』【初回生産限定盤】(CD)
アルバム『Midnight Chocolate』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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